自覚症状を改善すれば免疫力が高まる

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2015.06.30

編集部

IMG_5802公益社団法人東京生薬協会(東京都小平市)主催の第3回薬草教室「漢方とアンチエイジング」が26日、東京都薬用植物園内で開催され、講師の東海大学 医学部 専門診療学系 漢方医学 准教授の新井信氏は、「(健康の維持には)自覚症状を改善して免疫力を高めること」が重要だと強調した。

長野県旧長谷村の調査によると、自分では健康だと感じていても、加齢とともに病気を有する人の割合が大きくなることがわかっており、「健康であること」と「病気がないこと」とはまったく別物であることが示された。一般的に、漢方外来は中高年齢層の受診が多く、65歳以上の高齢者に多い症状として物忘れが挙げられた。ただし、「生理的健忘もあるのであまり心配しなくてもよい」(新井氏)。

「腰痛」「足腰のだるさ」「尿の出が悪い」「腰や足の冷え」など、男女とも年を重ねるにつれ優位に出現するこれらの症状は、東洋医学では“腎虚”と呼ばれる。腎虚は下半身に現れるのが特徴。「老化は足から始まる。だから足を動かせば物忘れを防ぐことができる。散歩は良いことだ」(新井氏)とした。

IMG_5771東洋医学が考えるアンチエイジングについては、中国最古の医学書『黄帝内経』に人生100歳まで生きることができたことを示す記述を紹介。さらに、中国古代の自然科学的な論説などを集めた『呂氏春秋』に記載されている長寿に関する記述を引き合いに、「長寿を全うするには、それを妨害する不摂生と不養生をやめること。人間には自然治癒力があるので、常日頃の日常生活の中のちょっとした不調を漢方で取り除くようにするとよい」(新井氏)という。

西洋医学は、人間の身体を襲うゲスト側の攻撃力(Attack力)を低めることを得意とするが、漢方では身体のホスト側の防御力(Defense力)を高めることを得意とする。そのため“身体の自覚症状をどう改善するかが大切”として、漢方を使って自覚症状を改善して免疫力を高めることの重要性を強調した。併せて、「データとしては出しにくいが、楽しいことをするとDefense力が増し免疫力が上がる」(新井氏)という例も紹介した。

特に高齢者の疾患の多くは根本的治療が困難なので、症状の除去が治療の主目標となる。ここで漢方には、自覚症状の改善に優れた効果があるとした。

具体的な処方も紹介した。抗老化薬でファーストチョイスに挙げられる「八味地黄丸」は、腎虚の代表的処方で、腰痛などに対して用いられる。膝関節痛などには「防已黄耆湯」で、水太りタイプなどに良い。だるい・疲れやすいといった場合は「補中益気湯」、だるさや疲れとともに抑うつ気分が伴う際には「加味帰脾湯」が良いとした。

胃腸障害などには「六君子湯」を紹介。『黄帝内経』にある“脾(胃腸)は肉を生ず”という言葉を引用しつつ、「胃腸の悪い人は、胃腸を良くすると他の色々な症状も良くなる」(新井氏)とした。

参考リンク
公益社団法人東京生薬協会

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