エイジングケアの漢方薬を紹介

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2016.11.2

編集部

IMG_0349 (2)東京都品川区との共催による星薬科大学(東京都品川区)公開講座「秋の薬草見学会」が10月29日、同大学構内で開催され、講師に招かれた医療法人社団 金匱会診療所 理事・薬局長兼事務長の針ケ谷哲也氏が、エイジングケアとして関節の痛みや肌の健康・美容に有効な漢方処方などを紹介した。

同見学会は、針ケ谷氏の講演「漢方で元気に~薬と食・エイジングケアなど~」とキャンパスツアー・薬草見学の2部構成となっている。第1部の講演では、歴史を振り返りながら、漢方および漢方薬の基本について紹介した。

IMG_0364 (2)針ヶ谷氏によると、漢方を求めてくる患者は「西洋医学的治療法がない」「西洋薬の副作用が気になる」「現在の治療に満足していない」「根本治癒を求めている」などの理由があり、比較的現代の西洋医学に対する不満などが多く挙げられた。

日本で最も有名な漢方薬として、カゼの初期に用いる代表処方「葛根湯」を例に挙げ、この構成生薬の麻黄と甘草には副作用があることに注意を促した。麻黄は動悸、血圧上昇、興奮など、甘草は浮腫や低カリウム血症(偽アルドステロン症)などを引き起こす可能性に言及。特に甘草については、こむら返りに使う「芍薬甘草湯」を例に挙げ「甘草の含有量が多いので、朝昼晩3回飲むと血圧が上昇する恐れがある。就寝前だけで十分」(針ケ谷氏)との認識を示した。

煎じ薬の服用に際しては、温かくすることが基本で、「冷たいと効果が落ちる。ただし、つわりの時はむしろ冷たくしたほうが良い」(針ケ谷氏)と状況に合わせた飲み方を紹介。エキス剤もお湯に溶かして飲むが、煎じ薬と同様に香りも作用するので香りを楽しんで服用することを勧めた。

漢方医学は、「四診」(望診、聞診、問診、切診)と呼ばれる伝統的な診察法を行う。西洋医学的に診て病名、病因のはっきりしない病気や、病名や病因がわかっていても治療法がない難治性の疾患に対しても治療を施すことが可能であるという特徴がある。また、病気になる前の状態(未病)に対しても処方することができ、病気の予防や健康維持に役立つことを強調した。

看板エイジングケアに関しては、まず関節痛、腰痛などを例に取り上げた。痛みは、人間の行動を消極的にしてしまうため、筋力の低下などを招いてしまう。このため、痛みに対して適切な対処を施すことは大切だと強調。これを漢方薬で対処する際には、陰陽や虚実を判断して処方を選択しなければ効果は得られないとした。

陽証(熱証)の実証に対しては越婢加朮湯、中間証には防已黄蓍湯を紹介。一方、陰証(寒証)の虚証に対しては、桂枝加朮附湯や桂枝加苓朮附湯を挙げた。

さらに、針ケ谷氏の長い臨床経験から考えた、肌の健康・美容に有効な漢方処方も紹介。肌の乾燥には当帰飲子、温経湯、桂枝加黄蓍湯、十全大補湯など、髪や肌のはりとつやには四物湯、十全大補湯、当帰芍薬散など、肝斑(しみ)の改善には桂枝茯苓丸、加味逍遥散、当帰芍薬散など、イボの改善には薏苡仁や薏苡仁の含有処方、五苓散など、ニキビや吹き出物の改善には清上防風湯、十味敗毒湯、当帰芍薬散などを挙げた。

薬草園併せて、肌の健康・美容に有効な生薬も紹介。肌のきめには黄蓍や桂皮など、肌の潤いには阿膠、麦門冬、地黄、薏苡仁、枸杞子、人参など、血流には当帰、川芎、桂皮、紅花、牡丹皮、芍薬、枸杞子など、むくみには茯苓、蒼朮、白朮、沢瀉、猪苓など、イボには薏苡仁、不眠には酸棗仁を例に挙げた。

午前の講演終了後、午後から参加者らは同大学内にある薬用植物園をスタンプラリー形式で見学。このほか、生協学生委員による施設案内なども行われた。

参考リンク
星薬科大学
医療法人社団 金匱会診療所

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