【連載】大手化粧品会社の研究(51)聖マリアンナ医科大発ベンチャー、ナノエッグの会社研究 ~有効成分をナノカプセル化し薬物搬送システムで高浸透~(上)

2018.09.25

特集

編集部

株式会社ナノエッグ(東京都港区、未公開)は、聖マリアンナ医科大学発のベンチャー企業。聖マリアンナ医科大学の皮膚科学に基づく医薬品、化粧品の薬物搬送システム(ドラッグデリバリーシステム=DDS)技術を使って体に負担がなく効果に繋がる夢のような薬を作りたいという強い思いから、2003年9月に科学技術振興機構(JST)のプレベンチャー事業(補助事業)に応募した「皮膚再生のためのレチノイン酸ナノ粒子」の研究テーマが採択された。これを踏まえて研究成果を事業として推進する組織として2006年4月にナノエッグを設立した。

レチノイン酸ナノ粒子は、チノイン酸のミセルを無機質でコーティングするカプセル化技術。同技術により製造されるレチノイン酸粒子は、無機質コーティングの存在によりレチノイン酸の薬効を徐放的に発揮することができ、ナノオーダー(10億分の1)のサイズであるため、経皮透過性を高めることができる。特に、有効成分をナノカプセ ル化し皮膚や毛髪から効率的に浸透させる技術であるDDS技術に強みを持つ。
同技術は「多価金属無機塩被覆レチノイン酸ナノ粒子の製造方法および当該製造方法により得られたナノ粒子」として2009年12月に特許化した。
一般的に、薬剤を体内に入れる方法には「注射」「経口投与」そして「皮膚からの浸透」の3つがある。このうち「皮膚からの浸透」は、異物の体内侵入を防御するバリア機能が働くため最も難しく、必要とする患部にうまく到達させることができない。
同社のDDS技術は、薬用成分の包接濃度が99%以上と高いうえ、皮膚への親和性にも優れる。この特性により、薬剤を素早く皮膚角質内に浸透させることができ、いったん皮膚に入ると自ら深部まで拡散していく。

同社のカプセルのサイズは、大きいもので十数ナノメートル(ナノは10億分の1)、小さいものでは数ナノメートルある。他社が一般的に使うナノカプセルは100~200ナノメートルなので同社のカプセルがいかに微細であるかが、伺い知れる(模式図参照)。
通常、カプセル製剤を設計する場合、カプセルを作製した後に薬を中に入れる。一方、同社は、薬自身を鋳型のようにしてその周りを何かで包めば、カプセルの外形に左右されずに100%薬を内包したカプセルが作成できると考えた。
そのために細菌の細胞構造などを参考にし、直径15nmのコア(薬剤)とそれを包み込むシェル(外皮)によるナノカプセルを作り出すことに成功した。

このナノカプセルは、薬剤がカプセル内に内包されているため、薬剤が狙った箇所に到達するまでに減少する量を抑制できる。また、粒子の平均直径が約数nm~数十nmと極めて小さく粒子表面が皮膚細胞間脂質に似た性状であるなどの特色から、皮膚に塗布した際に浸透しやすく薬理効果の向上が期待できる。こうして誕生したのが、同社の基盤技術である「ナノエッグ」であった。

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