【連載】化粧品・美容各社の業績と企業買収⑪化粧品・美容各社の業績と企業買収 ~ポ―ラオルビス、 H20とジュリーク買収、前期大幅減益~

2019.11.6

特集

編集部

株式会社ポーラオルビスホールディングス(東京都中央区)は、化粧品・美容関連のビューティケア事業について国内・海外事業を子会社通じて事業展開している。また、研究開発は、子会社のポーラ化成工業株式会社(神奈川県横浜市)が担当する布陣となっている。特に、海外市場は、2011年に相次いで企業買収して子会社化した「エイチツーオープラスホールディングス」(H20プラス)と「ジュリーク」の2社が担当している。

H20プラスは、巨大な北米市場と成長著しいアジア市場で高いプレゼンスを誇り、海洋由来成分のスキンケア製品を中心に世界22カ国で2000以上の販売拠点を展開。2011年5 月に「両社のシナジー効果が発揮できる」として譲渡契約を締結。同年7月に持分の取得手続きが完了し、ポ―ラオルビスグループに入った。買収額は9100万ドル・約81億円に上る。買収以降、POLA、ORBIS、THREE 等の既存ブランドについて海外展開を加速している。

ポーラオルビスは、H20プラスの買収に続いて2011年11月に豪州の「ジュリーク」を約228億円で買収した。
ジュリークは、豪州をはじめとしてアジア・米国・欧州等においてナチュラルオーガニック原料由来のスキンケア及びボディケア製品ブランドを直営店や百貨店、小売店、スパ、免税店、オンラインショップ等に幅広く販売。
同社グループが強みとする「研究開発力・マーケティングノウハウ」とジュリークが強みとする「ナチュラルオーガニック」といったプレミアム性の高いコンセプトや有機原料由来の製品ラインアップを融合することで、相乗効果が期待できるとして買収に踏み切った。

2社を買収して2019年1月で約8年が経過した。果たして買収による収益効果、事業の相乗効果が現れているのか。考察すると、同社は、2018年12月期決算で連結純利益が前期比69%減の83億円に下方修正した。従来予想していた連結純利益を128億円下回る大幅減益となった。豪州ジュリーク社の商標権やのれんなどの固定資産約113億円の減損を実施したのが響いた。

ジュリークブランドは、豪州とアジア、H20プラスブランドは、米国での事業成長を目指した取り組みを行ってきた。特に、ジュリークブランドは、長期的な成長を支えるためのブランドビジネスに根差した販売モデルへの転換を目指していたが中国市場や豪州市場での売り上げが伸び悩み、前年同期を下回る売上高、営業損失になった。

H20ブランドについても販売チャネルの適正化を目的とし、主要リテーラーから撤退した影響に加え、主要取引先への出荷減により前年同期を下回る売上、営業損失となった。
このように海外事業は、企業買収で収益が安定するとみられていたが直近の業績を見る限り不安感が漂う状況にある。

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