連載・異業種から化粧品分野に新規参入した上場各社の化粧品事業に迫る【14】片倉工業、原料蜂蜜の有効活用と化粧品との相乗効果が狙い(下)
2015.02.24
編集部
片倉工業が新規事業として乗り出した化粧品事業は、スキンケア化粧品「絹蜜」にシルク成分の「セリシン」と「アカシア蜂蜜」を配合し保湿性を高めた点がミソ。
セリシンは、ひとつの繭(生糸)から微量にしか採取できない希少なアミノ酸。肌がもともと備えている保湿成分「天然保湿因子」(NMF)に極めて似たアミノ酸組成をもっていることが知られており、自然由来成分としての高い保湿性、有用性に注目して化粧品の原料として採用した。また、アカシア蜂蜜を絹蜜に配合したのは、同社が事業展開する養蜂事業と化粧品事業との相乗効果を発揮するのが狙い。
同社は現在、長野県塩尻市に敷地1万平方メートルの養蜂場を開設し、生物科学研究所がミツバチの受粉・飼育、蜂蜜の採取(写真上)、受粉箱の宅配などの養蜂ビジネスを行っている。
絹蜜に配合している天然のうるおい成分「アカシア蜂蜜」(写真左)は、この自社養蜂場で採蜜したもので、蜂蜜を非加熱で加水などによりうすめることなくそのまま原料として使用した。
養蜂ビジネスの中で、ユニ-クなのが授粉に使うミツバチを専用の段ボール製巣箱に入れて宅配便で農家に販売する「ミツバチ宅配ビジネス」。
巣箱は、短期交配専用のミニ段ボール巣箱「ぶんぶん」や巣箱の中を観察できる長期交配専用巣箱の「どれどれ」(写真右)などの商品を取り揃えている。いずれも保温性と耐水性に優れ、農家の園芸ハウスにそのまま置ける。
これまでは、主に県内や近隣県に数百箱(年間)を出荷していたが、ここ数年、北海道から沖縄まで万単位の注文が舞い込んでいる。
こうした蜂蜜を化粧品に使用することで、量的拡大に繋げ化粧品事業との相乗効果を発揮して行く考え。
ともあれ、同社の新規事業「化粧品事業」は、シルク、養蜂技術をベースに健康食品、美容分野への進出を経営方針として強化することを位置付けている。
しかし、現時点において新規事業はスタートしたばかりで、化粧品事業を成長軌道に乗せるかは未知数だ。
化粧品事業を新規事業として創出していくためには、戦略に基づく収益計画を実行・実現することが求められる。その意味で、今後の事業展開が極めて注目される。