連載・異業種から化粧品分野に新規参入した上場各社の化粧品事業に迫る【17】バスクリン、生薬の力を活用して育毛剤開発(上)
2015.04.12
編集部
アース製薬の子会社バスクリンは、育毛剤事業を入浴剤に次ぐ主力事業に育てる。育毛剤事業を経営の中軸に位置付けてドラッグストアや総合ホームセンター、スーパー向けなどの業務用領域でさらに攻勢をかけ収益の向上に繋げる。
バスクリンは2010年9月に前身のツムラライフサイエンスから現社名に変更。2012年にアース製薬の子会社となって現在に至っている。
同社が現在、手掛ける育毛剤事業は、通販チャネルの一般消費者向けと代理店を経由した卸販売の業務用向けの2チャネルを主体に展開。
一般消費者向け育毛剤として「髪姫」(女性用・医薬部外品、2010年9月販売)と「髪殿」(男性用・医薬部外品、2014年10月販売)の2商品を通販チャネルに投入。また、業務用育毛剤として男性用の「インセント」(2003年販売)と女性用の「モルティ」(2004年販売)、それに高級育毛剤の「モウガシリーズ」(2004年販売)の3ブランド合わせて14品目を市場に投入している。
新生バスクリンになってスカルプクレンジングやヘアケアオイルなどを開発して業務市場に投入しているが現在、市場に投入している育毛剤の大部分が前身のツムラライフサイエンス時代に開発したものが主体。特に、開発した多くの育毛剤は、いずれも生薬有効成分のショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンジンエキスやホコウエイ根エキス(植物性保湿成)などを配合して育毛・発毛促進を高めるなど生薬の活力、生薬の組合せなどを生かして開発・商品化した点に最大の特徴が見られる。
モウガシリーズの最新タイプ「モウガ漲(ミナギ)」(男性用・医薬部外品=写真)にもホコウエイ根(モウコタンポポの根)など生薬の配合が見られる。
ホコウエイ根エキスは、従来から漢方薬として用いられ「母乳の出」を良くする生薬として使われていたがホコウエイ根エキスに発毛・育毛作用があることを見出し、育毛剤の有効成分として配合した。
女性用育毛剤「モウガL」にもショウキョウチンキ、センブリ抽出液、ニンジン抽出液などの生薬有効成分と植物性保湿成分のボタンピエキスを配合するなどして生薬のシナジー効果による商品化を実現している。
こうした生薬の力を生かして開発した育毛剤事業の社内態勢は、生薬の応用研究や基盤技術の開発をつくば研究所育毛剤グループ中心に推進。生産は、アウトソーシングしている。また、通販チャネルでの販売は、ダイレクトマーケティング部が担当。業務向け販売は、東京、大阪、名古屋の支店と傘下の営業拠点が行う布陣となっている。
ここへきて全国の業務用営業部隊(卸販売)は「育毛剤を入浴剤に次ぐ主力商品に育てることを至上命題」としてドラッグストアや総合ホームセンター、スーパーなどをターゲットに一段と販売攻勢をかけている。しかし、育毛剤市場における同社のポジションは極めて厳しい現実にある。「高級品、低級品ともガリバー企業が牙城となって立塞がるなど市場でのシェア向上は容易でない」と苦しい胸の内を説く。今後、新商品の継続投入と合わせてドラッグストアなどの店頭で商品の訴求力に力を入れ、収益の向上に繋げていく考え。