【連載】幹細胞化粧品開発元年【5】資生堂、ヒアルロン酸を生み出す表皮幹細胞技術にメド(中)
2015.09.25
編集部
資生堂は、表皮幹細胞とヒアルロン酸に関する研究で、肌の新陳代謝の源となる表皮幹細胞が加齢により減少すること。また、表皮幹細胞がヒアルロン酸を生み出す能力が高いことや基底膜(表皮と真皮が接している部位)の分解を抑えると表皮のヒアルロン酸量が増加することなどを発見した。
肌のうるおい成分「ヒアルロン酸」は、これまでの研究で、ハリ・弾力の土台となるコラーゲンを良好な状態に維持することが知られている。また、ヒアルロン酸は、表皮細胞が産生し、加齢によってヒアルロン酸量が顕著に減少することが定説となってきた。
そこで同社は、表皮をヒアルロン酸で満たすために、ヒアルロン酸を生み出す技術の確立が必要と判断。表皮細胞を生み出し、肌の新陳代謝の源となる「表皮幹細胞」に着目して研究したところ、表皮幹細胞が加齢により減少することを実証。さらに、表皮幹細胞とヒアルロン酸に関する研究を進めた結果 ①表皮幹細胞はヒアルロン酸を生み出す能力が高い(図1参照) ②表皮幹細胞はヒアルロン酸を表皮に留めさせる能力が高い(図2参照) ③通常、紫外線や加齢などにより基底膜が分解されていくが、基底膜の分解を抑えると表皮幹細胞の減少を抑制できる ④基底膜の分解を抑えると表皮のヒアルロン酸量が増加することなどを発見した。
以上の結果から、基底膜の分解を抑制することで、表皮幹細胞の減少を抑制(維持)できることを明らかにした。さらに、表皮幹細胞を維持させることで、表皮中のヒアルロン酸を増加させることを世界で初めて実証した。
同社では、一連の研究成果について今年6月にスウェーデンのストックホルムで開催された国際幹細胞学会で発表。また、一連の成果を踏まえた今後の開発について表皮幹細胞の減少を抑制するために、基底膜の分解を抑制する2つの成分で対応することにした。
同社のこれまでの研究知見を活かし、基底膜を分解する酵素のヘパラナーゼとゼラチナーゼの働きを抑える効果が高い「ムクロジエキス」、「ウコンエキス」を採用することを決定。
同社では、2014年に発見したボリューム型コラーゲンを生み出す「真皮幹細胞への対応技術」と今回のヒアルロン酸を生み出す「表皮幹細胞への対応技術」を合わせた「W幹細胞対応技術」を確立して今年の秋に発売予定のスキンケア化粧品に応用するための開発に取り組んでいる。