【連載】化粧品各社のイノベーション研究【7】アジュバンコスメジャパン① ~業績に影響の非正規流通問題解決へ~

2016.01.5

特集

編集部

アジュバンコスメジャパン本社ビル (1)自社開発のスキンケアとヘアケアなどの化粧品を理美容・エステサロン等へ専門に販売する株式会社アジュバンコスメジャパン(兵庫県神戸市 東証1部上場、写真=本社ビル)は、同社と連結子会社の株式会社アジュバンコスメティック(2010年2月完全子会社化)、イノベーション・アカデミー株式会社(2013年7月設立)、それに中国・香港現地法人「ADJUVANT HONG KONG COMPANY LIMITED」(2013年7月設立)の4社でグループを形成。また、化粧品の生産は、外部に委託するファブレス形態を採る。

現在、主力商品のスキンケアとヘアケアの販売形態は、アジュバンコスメジャパンの営業部隊(営業本部)が直接、サロン等へ販売する直接販売と、53社(2015年3月期)の代理店を介してサロン等に販売する代理店販売の2形態を採用。
同時に、初回に10万円以上の仕入れを行い、商品の案内方法等を定めたA・C・S加盟規約を尊守することを確約した契約サロン「A・C・S登録店」、(2015年3月期末6758軒)に対して商品の説明及び販売知識、施術の提供などを行い、それを踏まえてサロンの美容師がビジネスモデルカウンセリングを行いながら消費者に対面販売している。A・C・Sとは「アジュバン チェイン サロン システム」の英文表記の頭文字。
最終消費者への販売拠点として約7000 店にのぼるA・C・S 登録サロンのうち、約1000 店を同社の営業担当者が直接カバーする直販サロンで占める。残り6000 店は、営業担当者等が代理店を介してカバーする代理店サロンという体制(図:ビジネスモデル参照)

このような営業展開の中で、一部の代理店やサロンからスキンケアやヘアケア商品がネット上で販売されて第三者に流れるなど、登録サロンが対面販売の機会損失を被る非正規流通問題が発生した。
同社は流通元の特定を進め、非正規流通を起こした2代理店が関与していることが判明、2015年6月末までに契約を打ち切った。同時に、流失の根絶を図るため、商品のトレーサビリティ(流通経路の追跡) に関わるシステム構築とそのためのインフラ整備(工場の生産ライン手直し、倉庫の確保など) を実施。2015年秋からは、全商品に2次元バーコード(QR コード)を付与して出荷するなどの対策を講じた。
同社にとって非正規流通問題は、負のスパイラルとして業績に大きく影響していただけに現在、問題解決による取り巻く環境も明るさを取り戻している。

連結子会社のアジュバンコスメティックは、親会社アジュバンコスメジャパンの営業本部や商品開発コンサルタント会社、それに製造委託会社と連携を図りながら商品の企画・開発を担当。また、イノベーション・アカデミーは、サロンの経営支援強化を目的としてA・C・Sサロンスタッフ向け技術研修の実施、インストラクターの育成と各種セミナーへの講師派遣、商品開発とマーケティングなどを主業務としている。
中国・上海の子会社「ADJUVANT HONG KONG COMPANY LIMITED」は、香港1号店として2014年1月にショッピングモール「ISQUARE」にオープンし、日本国内とは異なり一般消費者に直接販売する事業モデルを展開。2017年3月期の中期経営計画完了の期間までに5~10店舗の出店を目指す。

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