【連載】遺伝子検査ビジネス(2)遺伝子検査ビジネス

2013.04.18

特集

編集部

医薬、病院、クリニック、化粧品など500社参入

国内で約7割のシェアを占める先駆者ジェネシスヘルスケア(東京都渋谷区、1994年設立)は、肥満の疾患者を対象に採取キットを使って口腔から採取した粘膜を肥満関連遺伝子「ベーター2AR」「ベーター3AR」「UCP1」の3種の遺伝子多型を測定して肥満を解析。
同社は、顧客拡大を狙ってヤフージャパンと提携(2012年12月)しネットビジネスでの受託検査サービスに乗り出している。

特に、ヒトゲノムが世界で解読された2年後の2005年から国内の医薬、病院、クリニックなどが一斉に 遺伝子検査ビジネスになだれ込んだ。

代表的な企業としてディーエイチシ―(DHC)やドクターシ―ラボもこの時期に遺伝子検査ビジネスに参入した。2社の遺伝子受託検査は、先駆者ジェネシスヘルスケアとほぼ同じで「ベーター2、ベーター3アドレナリン受容体、UCP1遺伝子の3種の遺伝子多型を測定して肥満を判定している。ドクターシ―ラボの場合、受託検査料は、検体送料、検査費用、結果通知費用を含めてセット価格3万円。DHCは、肥満遺伝子検査費用5250円。また、発毛に係る遺伝子を特定して発毛剤を開発した大正製薬は、通販中心に検査キットを販売し顧客獲得に繋げている。

いずれも検査依頼者に検査結果を踏まえて自前の化粧品やサプリメント、飲料、菓子・デザートなどを販売するケースが見られる。

ここへきて外食チェーン「なか卯」「ココス」を展開するゼンショ―は、ヘルスケアアンドビューティーパートナ―(H&BP)などと共同で、新たに株式会社ゲノフ(東京都港区)を設立し、遺伝情報をベースとした食スタイルのアドバイザリーサービスに乗り出した。

スポーツ分野に特化して遺伝子検査ビジネスに参入した企業もある。スポーツ障害のリハビリ機器を販売する株式会社スポーツスタイル(千葉県船橋市)は、ヒトの骨格筋の連筋繊維に発現する遺伝子分析で特許を保有する豪ジェネティック・テクノロジーと日本国内での総代理店契約を結び遺伝子特性診断サービスを始めている。大阪大医学部発のベンチャー株式会社サインポストは、体質遺伝子と問診デ―ターを組み合わせた健康管理システムを開発、約130の病院に提供を始めている。

政府が健康・医療分野を成長産業に位置付けたこともあって個人の粘膜を採取して肥満や肌の抗齢化、発毛に関する遺伝子検査ビジネスに参入した企業は、経産省の実態調査で約5百社にのぼる。これに伴い、遺伝子検査市場は、現在の約5百億円から2015年度に8百億円市場を形成する見通し。しかし、遺伝子と肥満などの医学的根拠は、未だ確率されていない。それにも関わらず、遺伝子情報を活用した肥満診断、美食・美容サービスを錦の御旗にしながら遺伝子検査ビジネスに参入する企業意欲は強い。

科学的根拠とサービスの整合性をいかに均衡して行くか、ビジネス面での課題は大きい。

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