【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【40】自然免疫応用技研② ~糖皮質の普及を狙って特許運営会社・協組など設立~
2016.12.20
編集部
自然免疫応用技研(香川県高松市)は、自社開発の植物発酵糖脂質素材「ライビー」(RIB)を配合した化粧品を開発し市場投入している。
最初に商品化したのは、財団法人中小企業ベンチャー振興基金の「2008年度、試作品の研究開発助成金」を得て、「小麦発酵抽出物」の糖脂質素材を配合した保湿クリームを開発・販売(2010年12月)したのが初めて。2010年3月には、化粧品の製造販売業の許可を取得している。その後、保湿乳液、美容液を開発して市場投入。最近では一番新しい商品として化粧水をネット通販市場に投入(2016年3月)し販売している。
新開発の化粧水は、同社の発酵技術を生かして品質の安定化に成功した糖脂質「パントエア菌LPS」を配合。新陳代謝だけでなく肌の柔軟性や潤いを高める成分も加えた。天然由来素材のため、アトピー性皮膚炎や敏感肌の人でも使える。
現在の化粧品販売は、ネット通販業者への卸しと化粧原料の販売先からの紹介などを通じて販売している。
今後、同社は「新規の販売チャネルとして百貨店ルート、ドラッグストア等での販売を検討しており、すでに一部のチャネルで販売を始めた」とみられるなど、販売網の拡大に一段と力を入れる方針。
こうした糖皮質の多様な用途や波及効果を狙って同社は、特許の運営管理会社「バイオメディカルリサーチグループ」を設立(2009年11月)し、権利化された糖皮質の特許を研究機関や団体、企業等に実施権(特許使用許諾)を供与する活動を展開している。
同社が権利化された糖皮質関連の特許は、発酵及び培養方法、植物発酵エキスなど主要特許だけで6件に上る。
この糖皮質関連の特許について国内外の企業等に通常実施権を供与し、合わせて技術指導を行って糖皮質の普及に繋げる。
特許の運営管理会社設立の翌年(2010年3月)には、同社が主導して自然免疫を制御する糖皮質解析・合成・利用技術の開発に関する試験研究と実用化を図る目的で「自然免疫制御技術研究組合」(2016年4月組合員数10社、4団体、3個人)を設立した。
2016年度の受託研究開発事業として国の戦略的イノベーション創造プログラムに基づく「ホメオスタンス機能を持つ農林水産物、食品の機能性成分評価手法の開発と作用機序の解明」に関する試験を受託した。
今のところ食品の糖皮質原料の販売と食品の機能性評価・分析業務が事業としての中心を成しており、化粧品用糖皮質の素材販売や化粧品の開発・販売を行っているとはいえ、事業としての比重は極端に少ない。
同社の研究開発は今後、グラム陰性細菌から得られる糖脂質(LPS)の健康産業への応用、免疫細胞(マクロファージ)の機能を利用した医療技術の開発などに力を入れることから、ヘルスケアの事業形態を一段と色濃くしそうだ。