【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【44】ドリコス② ~ドリコスに資生堂が出資、美の領域に投資、社内からベンチャー輩出~
2017.01.6
編集部
生体情報に基づいて最適なサプリメントを調合・抽出する「ヘルスサーバー」事業を展開するドリコスに対して、三菱UFJ銀行系列のベンチャーキャピタル(VC)「三菱UFJキャピタル」や資生堂、ダイドードリンコなどが相次いで出資した。
ドリコスは、製品開発と販売戦略の拡大を目的に資金調達に力を入れ、第1弾として2016年1月に三菱UFJキャピタルから資金調達を実施。2016年12月には、ドリコスの第3者割当増資に伴いダイドードリンコと資生堂が相次いで出資を受け入れた。特に、資生堂が化粧品以外のベンチャーに対して出資するのは、初めてのケース。
資生堂がドリコスに出資した背景には、化粧品以外の美容・ヘルスケア領域等のビジネスを強化・拡充すること。同時に、新規事業を社内から募集して事業化を図り、短期間に収益に繋げるベンチャーを数多く輩出するのが狙い。
ドリコスの第3者割当増資を資生堂が引き受けて出資した理由は、ユーザーの健康状態に合わせてオーダーメイドに栄養素を提供するドリコスの「ヘルスサーバー」事業について、「年々高まりつつある健康意識への貢献や近年あらゆる分野に見られるパーソナライズの性質を持ち今後、事業の成長が見込まれる」と評価したことによる。
ドリコスの第3者割当増資を資生堂が引き受けて出資を行ったのは、資生堂が2016年12月に社内のビジネスデベロップメント部内にコーポレートベンチャーキャピタル(VC)の機能を持つ専門部隊「資生堂ベンチャーパートナーズ」を設置し、第1号の投資案件としてドリコスに出資することを決定した。
ドリコスの事業の成長性を踏まえながら、ドリコスの「飲むという彩りが生活や人生にプラスになる」という想いと資生堂の「美しい生活文化の創造」を実現していくとの両社の基本的な思想が一致したことが、出資の決め手になった。
ドリコスは「製品を売るだけで終わりたくない。利用者から得られたデータから人の生活はどうなったかを分析し、次の事業展開につなげる」と出資を契機に新たな開発に意欲を燃やす。
ところで、資生堂が社内にベンチャーへの投資・出資を行う専門組織「ベンチャーパートナーズ」を設置したのは、自社以外の技術やアイデアを組み合わせることによって「美しい生活文化の創造」を実現し「美」に関する革新的な商品・サービスを生み出すことで、グローバルな競争での優位性を保っていくこと。そのため、有望なベンチャー企業の選定と投資を積極的に進め、適切な投資金額の検証を行いながら、投資先ベンチャーの有する経営資源や技術・アイデア等を事業化するプロセス、スピード化を社員に体験させるなどして、収益の向上と中長期戦略「VISION 2020」の加速化に繋げる。
資生堂ベンチャーパートナーズの投資枠は総額30億円で、「美」を生み出す技術や「美」を伝え、創りだすアイデア、技術及び「美」を届ける新たなビジネスの仕組み等に対して引き続き投資・出資していく。また、資生堂は、ベンチャーパートナーズの設立によるベンチャーへの出資と合わせて社内ベンチャー制度「スプーン」を導入した。
社内から健康や美容、スポーツ、育児といった様々な分野のビジネスプランを提出してもらい、提案者自らが事業者となって新規事業に取り組む。ビジネスプラン提案者は事業の全責任を負うが、資金や人材は会社が支援する。ただし、3年以内に新事業の黒字化が必要条件。同社が社内ベンチャー制度「スプーン」を導入したのは、ベンチャーを数多く輩出することで、大企業病を打破し合わせて美の領域で新たな柱になるビジネスの橋頭保を確立するのが狙い。同社では、スプーンによるビジネス案件を年に1~2件程度、事業化して新規ビジネスに取り組む方針。