【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【51】ナノキャリア① ~ミセル化ナノ粒子で医薬・高機能化粧品開発~

2017.02.14

特集

編集部

創薬ベンチャーが新薬開発の基盤技術を使って高機能化粧品を開発した1つのモデルとして称賛されているのが、ナノキャリア株式会社(千葉県柏市、社長 中富一郎氏)による化粧品開発だ。

 同社は、東京大学や東京女子医科大学の教授らが研究していたナノテクノロジーを利用したミセル化ナノ粒子(写真)を医薬品開発に応用・実用化することを目的として設立(1996年6月)した創薬ベンチャー。現在、同社の筆頭株主は、信越化学となっている。

2012年 10月にナノキャリアが実施した第三者割当増資を信越化学が引き受け(取得株式数1万2000株、調達資金約6億8967万円)た。と同時に、ウィズ・パートナーズが無限責任組合員として組成する2つの投資事業有限責任組合が保有する新株予約権の一部を行使して取得した株式1万2000株も信越化学が取得した。

新株予約権の行使において3億6000万円が払い込まれたと見られ、ナノキャリアの調達額は、総額10億4900万円にのぼる見込み。

この第三者割当増資と新株予約権の行使で信越化学は、総数2万4000株の株式を取得し、ナノキャリア株の9.22%を保有する筆頭株主となっている。ナノキャリアは、調達した資金をすべて研究開発費用に充当した。

ところで 同社のコア技術「ミセル化ナノ粒子」は、生体適合性のポリエチレングリコール(親水性)とポリアミノ酸(疎水性)を分子レベルで結合させたブロックコポリマーが水中で拡散することによって、外側が親水性ポリマー、内側が疎水性ポリマーという二層構造を有する直径数十ナノメートルの高分子ミセル(以下、ミセル化ナノ粒子)を形成する。

このミセル化ナノ粒子を医薬品に応用して静脈内投与した場合、血中に薬物が長時間滞留し、徐々にがん組織等の病変部へ集積する(EPR効果)ことで、治療効果が持続することを東京大学、東京女子医科大学の研究グループが証明した。

ミセル化ナノ粒子技術を応用した医薬品には
①薬物を血中に長時間滞留させ、効果を持続させることによる治療効果の増大
②より多くの薬剤をがん細胞に直接届けるため、正常組織へのダメージが少なく副作用を軽減できる
③利便性の改善や患者さんのQOL(生活の質)の向上
④医療費の削減 等が期待されている。

一方で、世界中の医療現場で使用されている抗がん剤の中には、薬物自体及び製剤化のために添加されている溶解剤による副作用が問題となっているものが多数ある。また、体内ですばやく分解されてしまう抗がん剤もある。

そうした現状を踏まえて同社は、ミセル化ナノ粒子技術を応用することで、特に治療効果を高めることができると期待される抗がん剤の開発に特化して開発に取り組んでいる。

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