【連載】化粧品・美容関連ベンチャー企業の成長軌跡【52】マリンナノファイバー② ~ナノファイバーの保湿効果を生かし1品3役の化粧品共同開発~
2017.02.21
編集部
鳥取大学の特許技術によりカニ殻などの甲殻類の外皮から製造された極細(10~20nm)のキチンナノファイバーは、従来のキチン粉末では出来なかった水中での均一な分散性を実現し、他の材料との配合・成形が容易になった。さらには、ナノファイバーにすることで、生体に対しても有効な機能があることが実証されている。
マウスを使った実験では、ゼリー状のキチンナノファイバーを皮膚に塗布したところ、コラーゲンが増えることがわかった。また、3次元皮膚モデルを利用して、マリンナノファイバーの表皮組織への効果を検討した。その結果、マリンナノファイバーを添加した水では、長時間、皮膚のバリア機能が向上し、外部からの刺激を防いで、保湿性を高めることが明らかになった。さらに、ヘアレスマウスの背中にマリンナノファイバーを塗布した皮膚を8時間後に採取して染色を施し、皮膚組織の変化を観察した。その結果、マリンナノファイバーを塗布すると、顕著に上皮の厚みを増大させ、その下の膠原繊維(コラーゲン繊維)の密度を向上させることがわかった。
同社は、こうした実証試験で明らかになった特性を生かして、キチンナノファイバー配合の化粧品をアサヒフードアンドヘルスケアと共同で開発に取り組み、「素肌しずく・うるおいミルク」(商品名=写真)の商品化に繋げた。
同ミルクは、ナノファイバーの保湿効果を活かし、乾燥や外部刺激から肌を守る1品3役(化粧水+乳液+美容液)の多機能オールインワンミルク。2015年9月からアサヒフードアンドヘルスケアが全国で販売を始めている。
ところで、山陰地方を地盤とする山陰合同銀行は、鳥取大学発ベンチャービジネスを資金と経営の両面でサポーするために設立した「とっとり大学発・産学連携ファンド」(ファンド総額約10億円)を通じて、マリンナノファイバーに対して1億7800万円の出資を行った。
同社の「キチンナノファイバー」は、多様な機能性を持つ「夢の新素材」として多様な活用が期待されている。
同社は、調達した資金を使って現在、食品・化粧品・農業・医薬品など様々な分野で幅広い応用開発を進めている。法人化して日が浅いとはいえ、化粧品開発と販売面で実績を出すなど一定の事業評価を受けている。それがファンドの評価となって出資を勝ち取った。
今後、第2弾、第3弾の新商品を開発して市場投入していくのか、引き続き事業の成長発展に関心が高まる。