【特別企画】大手各社の化粧品事業戦略に迫る[6] 大塚製薬、男性化粧品販売ドラッグストア2万店に拡大へ
2013.07.16
編集部
大塚製薬、男性化粧品販売ドラッグストア2万店に拡大へ
韓国進出を足掛かりに世界市場狙う
大塚製薬は、医科向けの医薬品事業とニュートラシュ―ティカルズ事業(NC事業、Nutrition(栄養)とpharmaceuticals(医薬品)を組み合わせた造語)の両輪で事業を展開する大塚HD傘下の中核会社。NC事業で扱う主な商品だけでもオロナミンCを始めイオン電解質飲料ポカリスエット、大豆炭酸飲料、大豆スナック、OTC医薬品オロナイン、化粧品など幅広い品目を生産・販売している。
いずれも事業部に直結した製品技術第1、第2研究所、栄養製品研究所など7研究所で開発したもの。この中で化粧品は、大津スキンケア研究所(1990年設立)が研究開発している。皮膚の健康を目指す健粧品の開発を進める中で、加齢による肌の変化や肌トラブル、肌細胞のエネルギー代謝を活性化させる薬用成分「AMP」(アデノシン・リン酸)というシグナル物質に着目。細胞を活性化させて表皮のターンオーバーを促進し、シミやソバカスを薄くする作用を持つことを10年の歳月をかけて実証、化粧品開発に繋げた。
現在、化粧品の研究開発、国内製造・販売、海外事業展開は、コスメディクス事業部が担当している。コスメディクスとは、コスメティック(化粧品)とメディシン(医薬品)を合わせた健粧品を意味する。
化粧品の販売は、2005年1月に「エナジーシグナルAMP」(厚労省から医薬部外品認可)を配合した女性用化粧品「インナーシグナル」(商品名)を52の百貨店で販売。2008年には、ミドルエイジ層向け男性用化粧品「ウル・オス」(同)を市場に投入し、男性化粧品市場に一石を投じた。しかし、「インナーシグナル」について販売戦略の見直しを行い、2010年に百貨店販売から通販専門に切り替えた。また、2011年9月には、頭皮と毛髪をケアするノンシリコンのシャンプーを販売するなど男性用化粧品のフルアイテム化を図った。
現在、男性用化粧品は、1万6千店のドラッグストア中心に販売。最近では、スーパーやコンビニでも販売を始めている。国内、男性用化粧市場を独占しているライバルを視野に今後、数年間でドラッグストアでの販売を2万店にまで拡大して追撃する。
同社は、化粧品事業で初の海外進出を果たし2012年3月に「ウル・オス」7品目を韓国男性化粧品市場に投入した。医薬品の製造・販売、輸出事業を行う現地法人韓国大塚製薬(6ヵ所の販売拠点と1ヵ所の生産工場保有)が韓国内の大規模スーパーマーケット(GMS)を中心に化粧品販売を行っている。
同社では「韓国人男性の美容意識が高く、日本に比べて化粧水や乳液を重ねづけしている人が多い。ウル・オスは、1本で全身に使える利便性が特徴。仕事などで忙しい30代以降の男性をターゲットに日本と同じ価格帯で販売している」という。
同社は、2009年に韓国大塚製薬と韓国保健福祉家族部との間で医薬品研究協力で合意し、2013年度までに1000億ウォン(約75億3500万円)を投資する。この余勢を足掛かりに化粧品事業の世界戦略に繋げる考え。今後、韓国大塚製薬と緊密な連携を図ったコスメディクス事業部の海外戦略が注目される。
化粧品事業2015年度までに現行の2倍目標
常務執行役員 大塚製薬ニュートラシュ―ティカルズ事業部
コスメディクス事業部門担当リーダー・櫻井千秋氏
―同社は女性の登用が活発ですね
「当社は、世界から尊敬され、存続を望まれる会社になりたいと考えダ国籍、性別、年齢問わずに人材を登用するダイバーシティを経営戦略の重要な柱に位置付けて推進しています。現在、女性の役員は、常務職3名、執行役員2名の計5名がそれぞれのポジションで活躍しています。研究所出身の私は、2010年9月に執行役員、2012年6月に常務に昇格し現在、化粧品事業を含むニュートラシュ―ティカルズ事業部を統括しています。」
―女性用化粧品を百貨店販売から通販に全面切り替えるなど英断を下しましたね
「インナーシグナルを市場に投入してから今年5月で10年近くになります。私が執行役員に就いた時点で52の百貨店で販売していましたが販売戦略の見直しを行い、通販専門に特化することを決めました。以来、通販は、年率2ケタの勢いで伸びています。」
―男性化粧品の国内での売れ行きはいかがですか
「男性も肌のケアが必要で、健康に寄与するとの方針から2008年にニッチ市場でミドル層の男性をターゲットとした男性化粧品「うる・おす」を市場投入しました。現在、1万6千店のドラッグストア中心に販売しています。できるだけ早い時期にドラッグストアでの販売を2万店に引き上げて拡販を図る計画です。また現在、男性が集まるゴルフ場などでサンプリング販売やテスト販売を行い、肌に触れて使ってもらうことを狙いに販促に力を入れています。」
―韓国の男性化粧品市場に進出しましたがさらにグローバル化に拍車をかける計画ですか
「韓国大塚製薬は、GMSを中心に日本と同様な価格帯でサンプリング、テスト販売に力を入れています。一度、手に触れてトライしてもらうことが原点と考え需要の掘り起こしに努めているところです。また、化粧品事業を2015年度までに現行の2倍に引き上げる目標を掲げています。そのためにもグローバル化は避けて通れません。現在、世界展開を進める方向でマーケット、市場調査を綿密に行っています。」
―化粧品の安心・安全が問われています。基本的な考えは
「化粧品の品質・安全性の信頼性保証体制については、医療用医薬品で培った品質・信頼性保証をベースにしています。今後もお客様の声に耳を傾けながら、製薬会社としての強みを活かし、お客様に安心してお使い頂だける製品をお届けできるよう、努めてまいります。」