連載(下)ジンコーポ、私的整理で会社再建へ~規模追求のロードレース型エステ事業終焉に~

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2015.09.4

編集部

株式会社ジンコーポレーション(東京都渋谷区)は、純資産を吹き飛ばすほどの巨額な債務や取引先への未払金で経営悪化に追い込まれた。倒産を回避するため、再建型私的整理を選択し、常陽、足利、三菱東京、東邦、七十七の5銀行団(シンジケート)の支援を仰いで、経営を立て直すことにした。
私的整理は、法的手続きによらず債務者と再建者との合意で、自主的に負債を整理していく倒産処理手続き。

同社が選択した再建型私的整理は、銀行などの債権者と直接、交渉して再建計画を合意するもの。仕入先などの商取引債権者は交渉の対象としない。但し、財産の分配を含めた具体的な整理方法は、原則、債権者の全員が同意することが必要。

このため、債権者間で、債務返済の繰り延べや債務カットの調整などができるかどうかがポイントになる。また、私的整理で、債権者と債務者が直接協議をする場合と企業再生支援機構や整理回収機構、中小企業再生支援協議会などを交えて利害調整を進めることもある。

しかし、再建型の私的整理を目指す中で、債務が想像以上に巨額で債権者との交渉がうまく行かない場合、民事再生法の申請や再建可能性がないと判断されて破産手続きに移行するケースも今後、考えられる。

同社の簿外債務や未払い残高などの資金繰りを精査し、財務状況、主力事業の見通しなどを評価した上で、再建型私的整理から清算型私的整理などに転換することもあり得る。
同社は、9月中に私的整理での再建策を銀行団に提出し、財務の状況を報告する計画だが財務内容を銀行団がどのように評価するか、注目される。

同社の私的整理に見られるように、これまで規模の拡大を図り、成長一辺倒で伸びてきたエステ業界は、この2~3年間、かつてのような需要伸長はみられない。

今年8月には、スカイゲイト株式会社(神奈川県横浜市)が横浜地裁に民事再生法の適用を申請。負債総額は22億円。

ミュゼプラチナム店舗エステの大型倒産は、2000年に「エステ de ミロード」を展開していた株式会社アール・ビ―・エムが負債総額200億円で倒産。大型倒産として業界に戦慄が走った。ジンコーポレーションが抱える不良債権はこれを上回る規模だ。同社の高橋社長は、かつての取材で「規模を追求したエステ事業を継続して展開し、他社を凌駕していく」と豪語したが、エステサロン「ミュゼプラチナム」(写真)の多店舗による事業モデルがここへきて完全に裏目に出てしまった。

ともあれ、エステ業界各社の財務体質は、極めて脆弱だ。需要が堅調にある中で、多店舗展開に軸足を置いたスケールメリット追求に終始するなど旺盛な資金需要が追い付かず破たんするケースが多い。すでに規模を追求したロードレース競争の時代は終わった。これからは、質的強化を図る構造転換へと移行することが待ったなしの状態にある。

参考リンク
株式会社ジンコーポレーション
連載(上)ジンコーポ、私的整理で会社再建へ~新規契約が激減、解約件数も激増~
連載(中)ジンコーポ、私的整理で会社再建へ~銀行団債務超過など調査、ジンが銀行団に再建計画提出へ~

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