皮膚への浸透性に優れたナノカプセル 防腐剤フリーでの開発に成功
2021.10.6
編集部
株式会社ファンケル(神奈川県横浜市/代表取締役社長CEO:島田和幸)は9月28日、キリンのグループ会社である協和ファーマケミカル株式会社(富山県高岡市/代表取締役社長:櫻井 隆)と共同で、皮膚への浸透性に優れたナノカプセルを防腐剤フリーで開発することに成功したと発表した。
ファンケルは、これまでスキンケア製品の効果実感を高めることを目的に、美容成分を肌に届けるナノカプセルの研究を行ってきた。
今回、ファンケルと協和ファーマケミカルは協業により、防腐剤フリーを守ったまま、ナノカプセルの皮膚浸透性を向上させることを解決する技術を見いだし、共同で特許出願を行った。
同研究ではまず、ナノカプセルの皮膚浸透性評価として、視認性を持った2種類のナノカプセルを三次元皮膚モデルに添加し、30分後に皮膚モデルの断面を顕微鏡で比較観察した(図1)。
上図の顕微鏡写真は、緑色が強い部位ほどナノカプセルが多く存在することを示している。
硬いナノカプセルを用いた場合は表皮付近に弱い緑色が観察されたが、柔らかいナノカプセルを用いた場合は表皮に加え真皮においても緑色が強く確認された。
この結果は、柔らかいナノカプセルが硬いナノカプセルよりも皮膚への浸透に優れることを示している。つまり、柔らかいナノカプセルを用いることで、内部に保持した美容成分を肌のより深くに送達できることが期待された。
一方、柔らかいナノカプセルは不安定化が起こりやすく、防腐剤フリーとするためには技術的なハードルがあった。
そこで、特定の美容成分がナノカプセルを安定化するという仮説のもと、柔らかいナノカプセルの安定化を試みた。
具体的には、ファンケルが選定した美容成分であるエクトイン2)及びコラーゲン・トリペプチドF3)を配合したナノカプセルを、協和ファーマケミカルにて技術検討の上で作製し、それらについて、安定化の指標となるナノカプセルのサイズ変化を観察した(図2)。
その結果、美容成分を配合していないナノカプセルは3ヶ月後にサイズが減少し、不安定化することが確認された。
これは、抗菌性を高めるために配合した保湿剤が柔らかいナノカプセルに相互作用し、膜構造を歪めたためであると推察された。
また、エクトインのみを配合したナノカプセルも同様の結果であり、エクトイン自体にナノカプセルを安定化する機能はないことが分かった。
一方、エクトインに加えてコラーゲン・トリペプチドFを配合したナノカプセルでは、3ヶ月後においてもサイズはほぼ変化ししなかった。
この結果は、美容成分としてエクトインとコラーゲン・トリペプチドFを配合することで、特異的にナノカプセルが安定化されることを示していることがわかった。
そして、この発見を生かし、防腐剤フリーで柔らかいナノカプセルを開発することに成功した。
ファンケルでは今後、「これらの美容成分の性質が、ナノカプセルの安定化にどのように寄与しているのかを明らかにすることで、ナノカプセルのさらなる機能化を進められると考えています」としている。