Forstyle Hotelsのビジョンとグループ概要
取材:Laure JEANDEMANGE
海辺のリゾート地からパリの中心に位置する都市型ホテルに至るまで、Forstyle Hotels Collectionグループが展開するすべての施設には、「豊かなライフスタイル」と「ウェルビーイング」を核とした揺るぎないアイデンティティが息づいています。Forstyle Hotels Collectionの副社長であるHervé Duperret氏が、グループの最新ウェルネスに対するビジョンを語ってくださいました。
Christian Roulleau氏の発案により設立された家族経営のグループであるForstyle Hotels Collectionは、温かみとインスピレーションに満ちた施設を通じて、高品質な体験を提供するという理念を体現しています。フランス国内の最も美しい観光地に展開する施設のコレクションとして、以下のようなホテルがあります。
- Alliance Pornic Hotel Thalasso & Spa
- Emeria Dinard HotelThalasso & Spa
- Parister Hotel & Spa Paris(5つ星ホテル)
- Bloom House Hotel & Spa Paris(4つ星ホテル)
細部にこだわる体験設計とホテルビジネスの価値
私たちはまだ若いグループですが、4つの施設を展開しており、共通の軸として「ライフスタイル」を大切にしています。現在、当グループの理念は「伝統」「イノベーション」「職人技」の三要素に基づいており、それらが三位一体となって私たちのDNAを形成しています。家族的な温かみとプロフェッショナルな姿勢の両立により、お客様に喜びをご提供することが私たちの願いです。それぞれのホテルには、その土地に根ざした独自の個性があり、パリのホテルでは都市の精神を、タラソセンターでは海の精神を体現しています。
お客様からの新たな期待
20年前、リヨンやマルセイユ、さらにはニューヨークでも同じサービスを受けられることに安心感と価値が見出されていました。チェーンホテルに宿泊することで安心感が得られた時代です。しかし現在では、お客様の意識は大きく変化しています。画一的なサービスは求められなくなり、代わって、より個別性の高いオーダーメイドな体験が期待されるようになっています。 このような変化を受け、現在私たちの仕事は、Forstyleの各ホテルごとに異なる体験を提供しながらも、それぞれの施設が持つDNAや土地柄をしっかりと守り続けることにあります。
体験を形づくる、目に見えないディテール
ランチとマッサージを組み合わせた体験を提案することは、誰にでもできることです。重要なのは、それをどのように演出するかという点です。そのために私たちは、装飾やスタッフの制服に至るまで、360度すべての要素にこだわり、トータルな体験設計に取り組んでいます。各施設における世界観の一貫性を保つために、芸術的観点からの本格的なリサーチも行っています。その結果として、各ホテルにはそれぞれ異なる音楽プレイリストが用意されています。というのも、それぞれのホテルには異なる顧客層が存在するからです。また、各施設にはそれぞれ独自の香りのシグネチャーがあり、これも記憶に残る体験をつくり上げる要素の一つとなっています。目には見えないディテールがポジティブな体験を生み出すことに、私は強いこだわりを持っています。
ホテル業とは情熱の仕事
私は以前、Lidoのゼネラルディレクターとして11年間勤めました。そこで初めて、アーティスティック・ディレクションの領域に触れることになったのです。Lidoでは450人のスタッフが働いており、まさに“ショーの工場”とも言える場所でした。照明、制服、そして笑顔に至るまで、すべてに細心の注意が払われており、そうした細やかな演出がグラマラスな空間を生み出していました。それら一つひとつの要素が、訪れるお客様に素晴らしい時間を提供するために、欠かせないピースなのです。
Forstyle Hotelsグループのディレクションに就任してから、私は初めてタラソテラピーという分野に出会いました。そこで実感したのは、ホテルでの滞在と同じく、一つひとつの体験の積み重ねが大切にされているということです。スパにおいても、トリートメントの前・最中・そして後に至るすべての過程が、レストランでのサービスやホテルのフロント対応と同じように、一つの儀式のように丁寧に構成されています。こうした細部に目を向け、体験全体を丁寧に設計していくことは、私にとって非常に情熱を注げることであり、大きなやりがいを感じる仕事です。
ホテルブランドを強化するスパの多様な展開モデル
Forstyle Hotelsグループにとって、スパの提供は決して付加的なものではありません。当グループのタラソ施設では、スパはサービスの中核として組み込まれています。タラソテラピーを目的とした滞在型プログラムにスパトリートメントを組み合わせたプランを展開していますが、それぞれ独立したサービスというよりも、ひとつの体験としてシームレスに組み合わされています。
Thalasso Alliance Pornicは1990年に設立されました。今年、Pornicは創立35周年を迎えますが、タラソにおいて、そしてスパにおいても常に先駆的な存在であり続けてきました。初めてスパを併設したタラソ施設を開設したのは、Alliance Pornicであり、それは2006年のことでした。18室のスパキャビンとアーユルヴェーダのトリートメントを導入しています。Pornicがスパを導入して以降、すべてのタラソ施設がスパキャビンを展開するようになりました。現在では、スパの提供はレストランと同様に、ホテルの基本的なサービスの一部となっています。
スパはひとつの専門職
タラソ施設を併設したホテルにおいて、スパはコンセプトそのものに組み込まれており、サービスの中核を担っています。一方、パリのホテルではスパは補完的なサービスと位置づけられていますが、スタッフが関与する以上、差別化されたサービス内容であり、かつ収益性のある事業であることが求められます。 実際、スパやプールの存在によって、これまで取り込むことができなかった新たな顧客層を確実に惹きつけることができています。
すべてのホテルがスパを導入できるわけではありません。なぜなら、スパは一つの投資であり、取り組むからには本格的でなければ意味がないからです。ただ施術用ベッドを置いたキャビンを設け、時折トリートメントを行う程度で、単に「スパあり」とサービス一覧に記載したいだけであれば、それは成果につながらないでしょう。スパはひとつの専門職であり、その成功にはプロフェッショナルな運営が欠かせません。開設にあたっては、適切な空間設計、内装、そして心地良い雰囲気づくりが求められます。例えば、古びたランドリールームにトリートメント用キャビンを設けただけでは、十分とは言えません。スパは、開業時にしっかりと投資を行い、専門的な視点で運営されていれば、高い収益性を持つ事業となり得ます。
ホテルごとに異なるスパのあり方
私たちの施設は、宿泊客だけでなく、外来利用者のニーズにも幅広く対応しています。例えば、パリのBloom House Hotelでは、スパ利用者のうち50%がホテルの宿泊客ではなく外来客であり、同ホテルは開業からまだ1年という新しい施設です。
このホテルのスパには「Bloomy Spa」という独自の名称と明確なアイデンティティがあり、ホテル公式サイト内にはスパ専用のページも設けています。単に宿泊客向けの付帯サービスとしてスパを提供するのではなく、スパ単体のブランドとして認識される仕組みが確立されており、サービス内容や各種プランもスパ専用ページで確認できるようになっています。
伝統とテクノロジーが融合する最新スパトレンド
スパを成功させるには、まず初期段階で十分なリソースを投入することが不可欠です。その上で、提供するトリートメントに常に新しさを加え、同じメニューにとどまらない姿勢が求められます。近年は、伝統的な手技をベースにしながらも、テクノロジーを取り入れた施術へのニーズが高まっています。伝統とイノベーションの両立を期待されており、こうしたサービスへの関心は一層強まっている状況です。
私たちは、定番のマッサージだけに頼ることにならないよう、常に新しい施術を取り入れることを意識してきました。今、求められているのは、お客様からの真のニーズに応えるサービス設計です。昨今では、伝統的なケアを重視しながらも、「ウェルエイジング」への意識を高めると同時に、より短期間で確かな効果を実感できることが求められています。
トレンドを具体的に取り入れる
ポルニック、ディナール、そしてパリのBloom Houseを含むすべてのスパにおいて、私たちは技術的な専門性を積極的に取り入れています。 例えば、Luno社の「Easy 21」は、聴覚に働きかける振動周波数と身体に直接作用する物理的な振動周波数を組み合わせた機器です。この二重のアプローチによって、エネルギーバランスの調整だけでなく、生理的な不調や肌の悩みに対しても非常に良好な結果をもたらします。このようなテクノロジーを活用することで、感覚的なリラクゼーションと高度な技術を融合させたスパ体験を提供しています。どの施設でも共通して見られるのは、お客様が「癒し」と「効果の実感」の両方を求めているという傾向です。こうしたニーズに応えることこそが、信頼とリピートにつながり、ブランドとしての可視性や魅力を高めるための重要な成功要因であると確信しています。
トレンドをどう先取りするか
常に最新のトレンドを把握するためには、チーム全体での取り組みが欠かせません。私はその指揮をとる立場にありますが、ホテルやタラソ施設のディレクター、そしてスパマネージャーたちは、最前線でお客様の期待に直接触れながら、新たなサービスのアイデアを生み出しています。
各施設にはそれぞれの個性があるため、私たちはトリートメントの内容を画一化するつもりはありません。それぞれのケアは、その土地と深く結びついたものとして提供されています。例えば、ポルニックのスパでは「Éclat de Jade」という施術を提供しており、地元産の牡蠣の殻を粉末状にした素材を使用しています。私たちが提供するケアは、セラピー効果があるだけでなく、その土地の特色と結びついた唯一無二の体験となることを大切にしています。
スパを常に進化させるという姿勢
たとえスパが順調に運営されていたとしても、常にトレンドに敏感であり続け、お客様の声に耳を傾ける姿勢は欠かせません。今年、ディナールのタラソ施設では「Maison Emeria」を新たにオープンしました。この新スペースは450㎡の広さを誇り、トリートメントによる美の追求に完全に特化しています。メニューには、ボディおよびフェイシャルの伝統的なマッサージだけでなく、Jet PeelやHydrafacial、ピーリングなどのテクノロジーを活用したケアも含まれています。また、ジャグジーとプライベートサウナを備えた2名用のスイートルームも設けられています。
独自性とアイデンティティが導くスパ成功の条件
私たちは、タラソ施設やスパの責任者たちの声に、常に丁寧に耳を傾けるよう心がけています。スパは技術的に高度な分野であり、設備面でも大きな投資が求められるため、軽視することはできません。ありがたいことに、私たちはそのための十分な投資体制を整えることができており、その点については非常に恵まれていると感じています。
高額な機器への投資に不安を感じるホテル経営者の気持ちは、私自身もよく理解しています。それでも、すべての取り組みを丁寧に、確実に進めたいという強い意志を持っています。大きな投資を行っているからこそ、それに見合った成果をしっかりと形にしていきたいと考えているのです。私たちは、長期的な視点と信頼を重視した経営スタンスのもとで、着実に事業を築き上げていくことを大切にしてきましたが、その根底には、現状にとどまらず常に前進し、より良い未来を切り拓いていきたいという強い想いがあります。
スパ成功のためのアドバイス
スパを成功させるには、明確なアイデンティティを築くことが不可欠だと私は考えています。他のスパと同じような内容を並べて、「とりあえず安心だから」という理由で開業しても、大きな意味はありません。スパを独自の存在として確立するためには、次のような視点が重要です。
物語を語れるようなニッチなプロダクトを選ぶこと。
>たとえ小規模であっても、明確なコンセプトを持たせること。
スパが「ホテルの地下1階、リネン室と厨房の間に設置されたマッサージベッド」に過ぎない存在になってしまわないようにするためです。
開業するなら、妥協せず本気で取り組むこと。
高品質な施術、厳選された製品、そして非日常を感じさせる雰囲気を備えたトータルな体験設計を意識する必要があります。なぜなら、お客様は1時間の施術に、単なるリラックス以上の「完全な没入体験」を求めているからです。
現在のスパ成功の鍵は、テクノロジーと手技の融合にあります。その多くはホリスティックかつメディカルなアプローチであり、例えばAlliance Pornicでは、Oligoscanという機器を導入しています。これは、体内の微量元素や重金属の濃度を測定するものです。
また、定番メニューにとどまらず、一人ひとりの声に応える施術を提供することも重要です。私たちが実際に提供しているトリートメントの多くはメニュー表に載っておらず、お客様の状態や希望に応じてその場でカスタマイズされています。「型にはまったサービス」ではなく、自分のためだけに設計されたケア、真のパーソナライズを求められているのです。だからこそ、柔軟に対応し、お客様の声にしっかり耳を傾ける姿勢が必要です。