執筆:Florence Delmas
男性は、施設の売上にとって大きな割合を占める可能性があります。重要なのは、この顧客層が持つ特有のニーズと明確な期待を的確に捉え、効果的に取り込むことです。ここ数年、男性の来訪が着実に増加し、男性向けに設計されたケアやトリートメントに対する需要も高まっています。この層は大きな潜在的収益源といえます。そのため、もし現在、男性の利用が少ないと感じるのであれば、まず状況を見直し、適切な問いを立てることが欠かせません。 彼らのニーズや期待に耳を傾け、どのような要素が来訪につながり、興味を喚起し、継続利用へ導くのかを見極める必要があります。
男性が心地よく過ごせる中立的な空間設計
第一印象はしばしば決定的なものです。施設の雰囲気や内装があまりにも女性的に感じられる場合、男性は場違いな印象を受け、落ち着かないと感じることがあります。その結果、そのまま引き返してしまうことも珍しくありません。美容施設は、心地よさやリラクゼーションを感じられる空間であるべきですが、同時にモダンで温かみがあり、男女がともに過ごしやすい中立的なイメージを備えている必要があります。
細部への配慮を忘れないことが大切です。更衣室を出た瞬間から、過度に女性的な要素が目につかないようにしたいところです。リラクゼーションルーム、ティーコーナー、スチームエリア、ジャグジーや多機能シャワーなども含めて、あらゆる空間が男女ともに過ごしやすい雰囲気であるべきです。施術ルームについても同様です。
もちろん、施術用ベッドに花びらを散らしたり、香りのよいキャンドルを灯したりすることを禁止する必要はありません。ただし、こうした演出は全体のインテリアと調和し、中立的であることが重要です。男性が居心地よく感じ、心身ともにしっかりとリラックスできる環境であることが求められます。
男性ニーズに応える施術メニューの構築ポイント

男性が施設で快適に過ごせる空間づくりだけでは、利用者としての期待を満たすことはできません。メニューに、男性に響く内容がしっかりと含まれていることが不可欠です。
Hôtel Byblos(サントロペ)のSpa Manager、Audrey Courvoisierは次のように述べています。
「施術メニューには、提供しているトリートメントが男女どちらにも向けて開発されていることを明記することが重要です。また、たとえば『メンズハンドケア』のような記載をすることで男性の興味を引くことができます。さらに、男性特有の悩みに応えるために設計されたケアを提供することで、安心感を与え、ここで体験する価値があると感じてもらえます。」
一般的なボディケアは男女共通で提供できますが、同時に男性特有のニーズに応える施術を用意することも重要です。強めの圧を用いるディープティシューやスポーツ向けのボディケアは、特に男性から人気があります。
Chamonix の Hôtel Héliopic のSpa Manager、Océane Baconnierはこう説明します。
「男性は、オーダーメイド型で、担当者が必要に応じてケア内容を調整してくれると知ると、より興味を持ちやすくなります。また、女性が細かい説明を求めることが多いのに対し、男性にはシンプルで明確、かつ要点を押さえた言葉で伝えることが大切です。」
SNS発信で男性層の関心を高めるビジュアル戦略

男性顧客を引きつけるためには、適切なコミュニケーションが欠かせません。多くの場合、男性は特別な後押しがないと美容施設の扉を開きにくい傾向があります。
Audrey Courvoisierは、男性にアプローチするひとつの施策として、ポップアップイベントの設置を挙げています。
「Spa Byblosでポップアップを設置したところ、バーバーケアの訴求に大いに役立ちました。週に一度、Traditional Barber(サントロペ)の著名なバーバーであるVirginieを招き、バーバーケアとSisleyのフェイシャルリチュアルを組み合わせた体験を提供しました。非常に感覚的で包み込まれるような施術で、品質や技術への期待にしっかり応える内容でした。この体験の好評を受け、現在はメニューにも組み込んでいます。」
SNSでも男性を意識した発信を
SNSでの発信にも、男性の存在を積極的に取り入れる必要があります。
「多くの施設は、特にInstagramで女性のシルエットを使いがちです。しかし、男性を写したビジュアルを定期的に投稿し、特定の施術とともに登場させることが非常に重要です」とAudrey Courvoisierは語ります。
Océane Baconnierも同じ意見で、次のように述べています。
「私たちは、著名なスキーヤー兼アルピニストであるBaptiste Ellmenreichとパートナーシップを組み、SNSに登場してもらっています。彼の存在は、特にスポーツ愛好者などの男性に強い訴求力があり、筋肉のリラックスや運動後の回復を目的とした施術への関心を高めるのに役立っています。」
初来店の男性を導くカップル施術の活用ポイント
メニューが充実していても、カップル向けの施術の魅力を見過ごすべきではありません。施設にカップル用の施術ルームがある場合、パートナーと一緒に過ごす特別な体験として提案することで、男性の興味を引きやすくなります。
男性が、パートナーが施術を受ける間に施設内で過ごすこともありますが、そのタイミングでカップル施術を提案すると、興味を示すことがあります。実際にルームを案内し、施術の流れを丁寧に説明することで関心を高めることができます。
Océane Baconnierは次のように説明します。
「カップルで特別な時間を共有できることをお伝えしています。プライベートな空間で、パートナーとともに穏やかな時間を過ごす体験は、施術そのものの効果をより印象深いものにします。」
Audrey Courvoisierも同様に、次の点を強調します。
「女性が夫とのカップル施術を予約することはよくあります。その際に、男性特有の悩みに応えるケアを併せて提案します。例えば、SeeMyCosmeticsのExo Scalpは、エクソソームを使用した頭皮ケアで、頭皮環境を整え、髪の成長をサポートします。こうした施術は男性の興味を引き、再来店のきっかけになります。」
カップル施術は、施設に慣れていない男性にとっても、美容体験への入口となり、その後、他の施術を試す動機づけにもつながります。
自宅ケアにつなげる男性向けメニューの組み立て
男性を惹きつけるだけでなく、継続的に利用してもらうためには、年間のタイミングに合わせたパッケージ構成が効果的です。
Océane Baconnierはこう述べています。
「父の日の時期などは、男性向けメニューを強化しやすいタイミングです。複数のケアを組み合わせた特別パッケージを提案し、フェイシャルには男性向けに開発されたNuxe Menの製品を使用することを明確に伝えます。施術後、自宅用に商品を購入し、効果を持続させたいと感じる方も多いです。」
体験後の聞き取りが男性顧客の信頼形成に与える影響
男性顧客を継続的に迎えるためには、施術後のフィードバックを丁寧に聞き取ることが欠かせません。どの部分が特に良かったのか、物足りなく感じた点はどこか、次回はどのような体験を求めているかをしっかり確認しましょう。
こうした姿勢は、男性が自身の意見を大切に扱われていると感じる要因になり、再来店の動機づけにもつながります。さらに、このフィードバックはサービス内容の改善にも役立ち、男性顧客を惹きつけ、満足度を高め、継続利用へ導く大きな要素となります。
