口唇ヘルペスで皮膚がん退治
2015.06.9
国際部
単純ヘルペス1型というウイルスによって引き起こされる口唇ヘルペスは、唇のまわりに水ぶくれができる疾患。風邪や発熱などが引き金となることが多いため、熱の華や風邪の華などと呼ばれてきた。この単純ヘルペス1型から作られた薬が皮膚がんの一種メラノーマに効果があったという研究が5月26日、「Journal of Clinical Oncology」オンライン版に掲載された。
開発されたのは、腫瘍溶解性免疫療法薬の「T-VEC」。転移の見られ、外科的手術が不可能なメラノーマ患者436人を対象に、薬剤の効果期間を評価する持続的反応率を主要評価項目として試験した。
その結果、免疫を強める顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子を投与した対照グループの持続的反応率2.1%に比べ、T-VECグループでは16.3%だった。生存期間も対照グループ18.9か月に比べて、T-VECグループでは31.5%と差が見られた。副作用は疲労感、悪寒、発熱、蜂巣炎だったが、致命的な有害事象はなかった。
現在、がん細胞だけを殺す「ウイルス療法」の開発が盛んだ。今回の試験は、実際の治療に近い形で実施される第3相試験で、今後の新しいがん治療への道が開けた結果となった。