【連載】化粧品各社のイノベーション研究【23】第一三共ヘルスケア③~アイムを買収し通販化粧品を強化~
2016.05.13
編集部
第一三共ヘルスケアは、三共と第一製薬のヘルスケア事業を統合して設立(2005年12月)した第一三共100%の子会社。2006年4月に風邪薬、頭痛薬などのOTC医薬品(一般用医薬品)を中心に化粧品や毛髪剤などを含めて事業を開始した。
同社が通販化粧品事業の拡大を狙いに大きく変貌(イノベーション)を遂げる契機になったのは、会社設立満10年を目前に実行した通販化粧品会社「アイム」の買収(2015年10月)といえる。
同社は、スキンケアを主体に通販事業を展開するアイムの全株式をみずほキャピタルパートナーズが運用する「エムシーピースリー投資事業有限責任組合」(MCP3)から株式を譲受して傘下に収め子会社とした。
アイムは当初、イマージュホールディングス傘下の化粧品会社として事業を展開。2011年にイマージュホールディングスが実施した経営陣による買収「マネジメントバイアウト」(MBO)により上場を廃止。みずほキャピタルパートナーズの投資ファンドが株式公開買い付け(TOB)を実施し、MCP3傘下での再建が進められていた。
そうした中、通販事業のマーケティングノウハウ、物流、コールセンターなどの拡大や顧客へのサポート体制確立などについて化粧品通販事業の強化を虎視眈々と狙っていた同社が、アイムの株式を保有するMCP3との間でアイムの全株式を譲受することで合意し、傘下に収めたもの。買収当時のアイムの業績は、2015年2月期で売上高が58億1100万円にのぼる。
同社は、アイム買収(2015年10月)を機会に化粧品通販の強化策として、アイムが販売していた米由来の美容成分を配合したスキンケアブランド「ライスフォース」などを投入するとともに、アイムが持つ通販のマーケティングに関わるノウハウや物流体制、コールセンターなどを有効活用して、化粧品通販の再構築と強化に打って出た。
同社は、アイムの買収時点において「初年度1億6000万円の売り上げを目指す。3~4年をめどに通販事業の黒字転換を目指す計画」としていた。
アイムを買収して6ヵ月を経過したが、通販専用スキンケアの領域を徐々に拡充する状況にある。また、アイムの買収時点で化粧品、毛髪剤、補正下着などのオンラインショップ販売を行っていた通販会社イマージュを「Jコンテンツ」に社名変更(2014年1月)してアイムの子会社とした。
第一三共ヘルスケアの3年間の売上高推移は、2013年3月期471億円、2014年3月期481億円、2015年3月期478億円と見られている。しかし、総売上高に占める化粧品の売り上げ比率は明らかでない。
今後、スキンケア、毛髪化粧品を含む新商品開発と販売面での拡販策、海外事業の拡大などについて、どんな橋頭保を構築して化粧品事業の成長を図って行くのか、具体的な戦略、戦術が待たれる。