【連載】医薬・創薬企業の化粧品事業④大塚製薬(上)~スキンケア研、化粧品の基盤技術を開発し参入~
2017.06.7
編集部
大塚製薬株式会社(東京都千代田区)が化粧品分野に参入した契機となったのは、「肌の健康に貢献したい」として1990年に大津スキンケア研究所(滋賀県大津市=写真)を設立して健やかに粧(よそおう)ことをサポートする意味の「健粧品」(コスメディクス)開発に着手したことに始まる。
同研究所は、2年近くかけて植物の発芽や成長に寄与するエネルギー代謝関連成分として「エナジーシグナルAMP」を見出すなど、化粧品の基盤技術を開発した。
AMPは、Adenosine monophosphateの略で、アデノシン1リン酸のこと。通称「アデニル酸」と呼ばれる。若竹の節や種子及び母乳などに含まれ、エネルギー代謝のキーといえる物質。
同研究所では、このAMPに着目して研究開発を促進。シミやそばかすは、皮膚のエネルギー代謝が低下することが原因だと考え、表皮の生まれ変わりを促進するものとしてエナジーシグナルAMPを開発した。
エナジーシグナルAMPは、肌の母細胞のエネルギー代謝を高めてターンオーバーを促し、それによってメラニンの排出を促進してメラニンが肌に蓄積しないようにしていること。また、エナジーシグナルAMPの働きとして母細胞のエネルギー代謝促進作用やターンオーバー正常化作用、メラニンの蓄積抑制作用があるなどを解明した。
2008年には、厚生労働省から「美白成分」として認可を受けるとともに、エナジーシグナルAMPは、同社の商標登録となっている。
同社では「美白の分野において、新規の効能・効果をもった医薬部外品が承認されるのは前例がなかった。メラニンを作ることは、本来の生体機能なので、それを阻害するよりも役割を終えて肌にとって不必要になったメラニンを速やかに排出したい、というコンセプトで、エナジーシグナルAMPを開発した」としている。
この新しい薬用有効成分は、女性用化粧品「インナーシグナルシリーズ」の主な製品に配合して商品化が成され、2005年に独自の効能効果を取得して市場に投入している。また、2008年には、保湿成分AMPを配合した男性化粧品を市場に投入した。