酒造メーカー大関、日本盛に見る化粧品事業 大関R20が外国人観光客に人気、化粧品の情報公開に期待
2017.12.8
編集部
現在、国内の酒造事業者数(清酒製造免許取得者数)は、1655社にのぼり、この内の約9割が中小企業で占める。しかし、消費の減少で転廃業が相次ぎ、現在、実働社数は、800社程度に半減。また、国内の酒類販売(消費)数量は、ピーク時の平成8年度に記録した966万キロリットルから平成27年度の818万キロリットルに大幅減少している。そうした中で、大手酒造メーカーを中心に化粧品分野へ新規参入するなど生き残りを図る動きにある。そこで、大関株式会社(兵庫県西宮市)と日本盛株式会社(兵庫県西宮市)両社の化粧品事業の実態に迫った。
大関は、1711年に兵庫県西宮市で創業。1980年に「大関総合研究所」竣工し、醸造関係の分野を中心とする各種研究開発に着手。1985年には、食品や化粧品等の製造・販売を専門に行う関連会社の株式会社オフコ(現 オーゼキ・エフ・アンド・シー株式会社、兵庫県西宮市)を設立。1987年に米糠を原料とする洗顔料「ぶらんぱる」を開発・販売したのを契機に化粧品分野に本格参入した。
現在の主要化粧品は、原材料が米と米こうじのみを使用し、純米酒を配合して潤いにこだわった化粧品「蔵元発灘」や独自の発酵技術により開発した玄米発酵エキス(精米していない玄米から醸造し、アルコール分をとりのぞいた美容成分)を配合した玄米生まれの自然派化粧品「アールツ―オー」(R20=写真)がある。
「アールツ―オー」の商品ラインナップは、クレンジング、洗顔フォーム、化粧水、乳液、保湿クリームの5商品、合計10アイテムを市場に投入している。
販売方法と主要チャンネルについて同社は「ドラッグストアやバラエティーショップ等の店頭販売や通信販売を中心に行っている。最近では、外国人観光客にも人気があり、ディスカウントストアでの販売が増えてきた」という。また、今後の、化粧品事業の展開については「日本酒や発酵というキーワードは、引き続き注目されて行く。当社が長年培ってきた技と最新のバイオテクノロジーを融合させた「美」に関する商品を顧客視点で造り育てていきたい」と成長の軌跡をさらに促進する考え。
一方、日本盛は、1987年4月に入社2年目の女性社員が酒作りに従事する杜氏の手がすべすべしている点に着目して、化粧水「米ぬか美人」を開発したことを契機に化粧品分野に参入した。以降、現在までに開発した主要化粧品は「米ぬか美人シリーズ」「米ぬか美人NS-Kうるおいシリーズ」「米ぬか美人NS-Kシリーズ」「米ぬか美人NS-Kスペシャルシリーズ」などがある。
4商品合わせたアイテム数は、約52品目にのぼる。米ぬか美人は、流通向け商品。その他は、通販専用商品となっている。
この4商品に加えて2017年11月に「米ぬか美人プレミアムナイトクリーム」を商品化し、通販限定で販売を始めた。日本酒酵母エキスに金箔やツバメの巣などを配合、保湿効果を高めた。化粧品事業30年を記念して開発した。
同社は、2009年に創立120周年を迎えたのを機会に「日本盛120年目の誓い」として、「もっと、美味しく、美しく」というスローガンを掲げた。このスローガンを基本に「酒や化粧品などの製品やサービスを通して「もっと」を追求し「もっと」への挑戦に継続して取り組んでいる。
同社においては、化粧品事業に対する基本的な考えや事業強化等について必ずしも明確ではない。今後、情報公開をより積極化し化粧品事業に賭ける意気込みが期待される。