【連載】大手化粧品会社の研究⑨ナリス化粧品の会社研究 ~技術開発型企業として特許取得、シワ改善、美白等の研究開発に力~(下)

2018.03.7

特集

編集部

ナリス化粧品は創業者が技術者であったことから「ものづくり」にこだわった研究開発や特許取得など技術開発型企業としての研究開発成果を発揮している。
研究開発については、基礎研究及び具体的製品化のための開発を研究開発部、デザイン室及び各開発関連部門が共同して行っている。さらに製品管理課において化粧品の量産化のための研究及び製造機械の開発を行っている。2017年3月期における研究開発費は、6億64百万円にのぼる。

化粧品事業に関わる研究開発は、基礎的な皮膚科学の研究から化粧品原料素材の開発、製品の開発、美容法、美容機器に至るまでの研究開発を推進している。
2017年3月期のスキンケア分野においては、肌老化に対応するマルチ効果を130%アップさせるメシマコブ菌床培養エキスと、神戸大学医学部と共同研究を行った酸性キシロオリゴ糖とを配合し、肌にハリを生み出すスキンケアシリーズなどを開発・市場投入した。

こうした皮膚科学の研究から化粧品原料素材の開発は、シワ改善剤や皮膚化粧料などの特許化された技術開発力に負うところが大きい。特に、シワ改善剤や皮膚化粧料などの取得件数が累計で18件に上っていることからも高い技術力を保持していることが伺える。

同社が特許取得したシワ改善剤や皮膚化粧料は、オクラの種子から抽出した1つの可用性たんぱく質と細胞賦活成分を併用することで、シワ改善作用が相乗的に増大することを発見。シワ改善剤として提供することを実現した。また、皮膚化粧料は、皮膚のシワを改善する効果に優れると共に、皮膚に対して弊害なく安全に使用することができる。

同社は、皮膚研究においても高い成果を生みだしている。これまで加齢による皮膚の変化の研究を行う中で、加齢した肌ではコラーゲン線維の修復が不十分であること突き止めた。コラーゲン線維形成の低下は、肌のハリが失われることに繋がると考証している。これらの研究成果については、2017年12月に開催された日本研究皮膚科学会等で発表し評価を得ている。

研究開発の成果の中でダイソーと共同開発した「新美白素材リノール酸メントールの開発」も注目される。
同開発は、新たな美白メカニズムで、シミ・ソバカスの原因となるメラニン色素生産を抑制する新素材の開発と同成分の量産化技術を開発したもの。
同研究は、大阪市立工業研究所が保有していた「不安定な不飽和脂肪酸の酵素合成テーマ」の技術シーズを入手。これを基に化粧品技術への応用のため、リノール酸とメントールの合成化による美白効果の検証とその作用メカニズムについて研究を進めてきた。
美白効果の検証(データ図参照)では、リノール酸メントールは
①リノール酸のメラニン産生抑制効果よりも高く、何も添加しない状態から約4割抑制
②高い美白効果で知られているアルブチンと比較したところ、リノール酸メントールが1/10の濃度でも、同等の効果を確認。
その作用メカニズムの解明については、神戸大学(皮膚科)との共同研究で解明を進めてきた。その結果、酵素チロシナーゼの成熟化を抑制することで、チロシナーゼの分解が促進され、メラニン色素の産生量が低下することが判明。新たな作用メカニズムを持つ美白素材であることが判明した。また、クリームにリノール酸メントールを配合し、40℃、湿度75%の条件下で経時的に安定性を確認したところ、6ヶ月後でも変臭、変色もなく安定的に配合できることが確認している。
同社は、引き続きベンチャーの精神に立脚して美を創出する研究開発に力を入れて取り組む考え。

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