今日、エステティックサロンの顧客は、単なる施術以上のものを求めています。彼女たちは、身体的にも感情的にも心地よくなれる体験を追い求めているのです。そのため、ますます多くのウェルネススペースが、マインドフルネス(Pleine Conscience)を施術プロトコルやケアのプロセスに取り入れるようになっています。
しかし、恩恵を受けているのは顧客だけではありません。マインドフルネスは、エステティシャンにとっても多くのメリットをもたらします。
Sarah-Line Attlanが提案するマインドフルネスと融合したウェルネスコンセプト「Lymfea」
Sarah-Line Attlan氏
Sarah-Line Attlan氏は理学療法士の資格を持ち、ウェルネスセンター「Lymfea(リムフェア)」の創設者でもあります。彼女は、マインドフルネスを重視する新たなウェルネスセンターのコンセプトを築き上げました。
Lymfeaは2020年に創設されました。Sarah-Line Attlan氏の願いは、人々が自分自身を大切にし、日々の忙しさから離れてひと息つける「バブル(泡)」のような空間を作ることでした。「私は、心身を解放するための空間をつくるというアイデアを、マッサージと結びつけました。マッサージは、人々が最も好んで選ぶセラピーの一つですが、ヨーロッパではまだ習慣化が難しい一面もあります。ですから、マッサージを通じて身体と精神の両方をケアすることが目的です。さらにLymfeaでは、それだけではなく、マッサージの際に瞑想も取り入れています。それにより、お客様が施術中によりマインドフルになり、自身の感覚により深くつながることができるのです」と、ウェルネス空間の創設者である彼女は説明します。
Lymfeaは、パリ16区に自社スペースを構えています。さらに、パリ2区のHôtel Hana(ホテル・ハナ)、9区のSoho House(ソーホー・ハウス)、8区のHôtel Monsieur George(ホテル・ムッシュ・ジョルジュ)内にも展開しています。施術者は約40名おり、大半がフリーランスで、各施設を移動しながら勤務しています。
使用するオイルは主にAroma Zone(アロマゾーン)から仕入れており、フェイシャル製品については、Hôtel Hanaでは東京発のブランドDam Dam(ダムダム)を選定しています。また、Hôtel Monsieur GeorgeではWeleda(ヴェレダ)やOdacite(オダシテ)なども使用されています。
オラクルカードによる気づきの時間
Lymfeaでは、受付スペースにオラクルカードが用意されています。「お客様は、施術の前後にカードを1枚引きます。そこにはメッセージが書かれており、意図を立てたり、自分自身に向き合うきっかけになります。このメッセージは、日常生活とリンクすることもあります。例えば、ある日『中庸の道』というカードを引いたお客様がいました。その方は、自身が極端に走りやすい傾向があると話してくれました。このカードは、彼女にとってもっとバランスの取れた在り方が必要だと伝えていたのです。こうしてカードを引き、そのメッセージが自分に響くと感じたとき、それは今の自分の状態を意識化する助けになるのです」と、代表は語ります。
施術中にマインドフルネスを取り入れる方法
Lymfeaでは、マインドフルネスを2種類の施術に組み込んでいます。そのうちの一つ「Drainage Holistique(ドレナージュ・オリスティック)」では、Sarah-Line Attlan氏の意向により、音響療法(ソノセラピー)を用いた特別な瞑想が施術に取り入れられています。ソノセラピーには、チベットボウル、クリスタルボウル、音叉などが用いられます。この音響療法は、お客様がマインドフルな状態へと入りやすくなるよう導く目的で行われています。施術の最後には、刺激された体内の体液に意識を向ける瞑想が提供されます。
音の振動と感情の連鎖に着目した施術
「感情が広がる様子や音の振動について、多く語られています」と、Lymfea(リムフェア)の創設者は語ります。この施術は90分間で、料金は170ユーロです。
もう一つ、マインドフルネスを取り入れた施術は「Soin Crânien(ソワン・クラニアン)」です。この施術は、鏡の前に座った状態で始まります。これはとてもユニークな始まり方です。施術者は、まずお客様の髪をとかします。
「ここでは、アメリカ先住民や日本、中国の叡智に着目しています。髪をとかすという行為は、家族の中で共有することが多いものです」と、Sarah-Line Attlan氏は説明します。ここでもマインドフルネスが重視されています。
「この施術では、頭部に重点を置いています。私たちは常に思考を巡らせており、この部分には多くの緊張がたまっています。施術中には、お客様にご自身の髪についてどう感じているかを尋ねます。好きかどうか、ボリュームが足りないと感じているのか、ウェーブが強すぎると感じているのか、などです。髪や爪の状態は健康のバロメーターと言われていますし、髪は感情を記憶するとも言われます」と、彼女は語ります。この施術は60分で、料金は120ユーロです。
体験そのものが価値になる施術
Lymfeaでは、単なるマッサージではなく、心身で体感する特別な「体験」をお客様に提供しているとSarah-Line Attlan氏は強調します。「お客様は、施術を終えたあとには“マッサージ”という言葉ではなく、“体験”だったと言ってくださいます。身体を通じて感情面にも深く作用し、終わったあとはリフレッシュし、新たな自分になったと感じるのです」と語ります。
「マインドフルネスは、身体のどこに緊張があるのか気づくための手段です」
マインドフルネスは、施術の冒頭または終わりに取り入れることができます。目的は、単なるリラクゼーションではなく、その瞬間の痛みや感覚に気づくことにあります。
「私たちは、お客様にとって簡単で気軽なものとなるように工夫しています。施術の中で自然にマインドフルネスへ導けるように考えています。お客様がマッサージを受けながら、自分の身体を感じることができるようにしたいのです。マインドフルネスは、どこに痛みがあるか、どこが詰まっているかに気づかせてくれます。身体の中に緊張がある場所を認識できるようになるのです」と彼女は語ります。
プロフェッショナルの育成と選抜
Lymfeaと共に働く施術者は、全員がレイキのトレーニングを受けています。研修はパートナーである「École Internationale du Spa(エコール・アンテルナショナル・デュ・スパ)」にて実施されています。
しかしながら、こうしたトレーニングに加えて、マインドフルネスの価値観が施術者の中に根づいているかどうかが重要だとSarah-Line Attlan氏は説明します。「採用時には、Lymfeaの施術方針にマッチするかどうかを重視しています。実際、当社の施術スタイルが響かない施術者もいます。人間味があり、感受性が高く、共感力があり、お客様との時間を大切にしたいと心から思える人材である必要があります」と述べています。
誰にでもマインドフルネスを届けるために
マッサージにはコストがかかります。誰もがその費用を負担できるわけではありません。そのため、Lymfeaのチームは、より短時間かつ手頃な価格でマインドフルネスを届ける手段を模索しています。それがアプリケーションの開発です。
「日常生活の中でマインドフルになり、心を解放するサポートを行うことが目的です。コンテンツは、主にビデオ形式になる予定です」とSarah-Line Attlan氏は語ります。
ALINE FRAMBOURT──マインドフルネスの体現
Aline Frambourt氏
Aline Frambourt氏は、オルレアンにある自身のエステティックサロン「Rayon de Soleil(レイヨン・ド・ソレイユ)」の経営者です。彼女は2011年にこのサロンを買収して以来、コンセプトだけでなく規模も拡大し続けてきました。2019年以降、サロンは40㎡から140㎡へと拡張され、5つのキャビンを備えるまでになったため、新たな物件への移転を余儀なくされたと語ります。
Aline Frambourt氏は現在、4名のエステティシャンを雇用しています。彼女はエステティシャンにとって研修・教育がいかに重要かを熟知しており、その考えのもと2015年には自然療法(ナチュロパシー)の研修を受けました。「私は個人的に、日常生活の中でオーガニックに強く関心を持っていました」と彼女は話します。「すでに固定の顧客がいたこともあり、最初は一部に懐疑的な反応もありましたが、多くの方が私を信頼して受け入れてくれました」。
彼女が学んだ自然療法の講座には、ストレスや感情のマネジメントに関する内容が含まれており、足裏反射療法(リフレクソロジー)のモジュールもあったことが、美容を超えた施術メニューの提供へと導くきっかけとなりました。
サロンにおけるマインドフルネスの実践
「サロンを移転したことで、自分の好きな施術だけを提供するようになれました」と彼女は語ります。現在のサロンでは、以下のようなブランドの製品を取り扱っています:Aimée de Mars(エメ・ド・マルス)、Clémence et Vivien(クレマンス・エ・ヴィヴィアン)、Dr. Hauschka(ドクター・ハウシュカ)、Manucurist(マニキュリスト)、LPG、Umaï(ウマイ)。
Aline Frambourt氏のサロンでは、ボディケア、ネイル・アイビューティー、フェイシャル、マッサージ、脱毛、頭皮ケアなど多岐にわたる施術を提供しています。「数々の研修を受けてきたおかげで、身体面だけでなく感情面にもアプローチできます」と彼女は語ります。「施術の中には、マッサージを含めた瞑想も取り入れています」。
また、専門家による自然療法のカウンセリングも顧客に提供されています。
サロン「Rayon de Soleil」では、受付時の儀式的な導入(セレモニアル)により、顧客が自然とマインドフルな状態になれるよう工夫されています。「私たちは必ず、顧客が来店された際にドアを開けてお迎えします。そして、靴を脱いでスリッパに履き替えてもらい、着席してもらいます。声のトーンも落ち着かせ、『これからしっかりとケアさせていただきます』とお伝えします」と彼女は説明します。
このようにして、マインドフルネスがキャビン内の施術にも自然と組み込まれているのです。
感情と香りを融合した「Aimée de Mars」体験
たとえば「Expérience Aimée de Mars」では、施術の最初に顧客がアンケートに回答します。そこでは、色彩やエネルギーストーン、香りなどについて質問され、その回答から感情状態に適したフレグランスが選ばれます。
選ばれた香りは、感情を司る大脳辺縁系に働きかける目的で使用されます。施術は足の角質ケアから始まり、その間に顧客には深く呼吸をするよう促され、「今この瞬間」への意識を高めます。
続いて、フェイシャルケアが行われ、マスクの間にはガイド付き瞑想が取り入れられます。「この瞑想は、顧客のニーズに応じて調整されます。愛や自己愛、感謝といったテーマに基づくこともあります」とAline Frambourt氏は説明します。
施術の終盤では、最初に選ばれた香りの意味が説明され、その香りの持つ“ノート”が持つ意味が伝えられます。これは、顧客に活力や自信を与えることを目的としています。施術は、背中のマッサージで締めくくられます。
呼吸に寄り添うDr. Hauschkaのリズミックマッサージ
Dr. Hauschkaの提供するリズミックマッサージは、サロンでの人気メニューのひとつです。「このマッサージは、身体に“呼吸”を取り戻すものです。音楽は使わず、施術者の手が呼吸のリズムに合わせて身体に触れます。これが、身体に新たな息吹を与えるのです。私たちエステティシャンも、顧客と同様に、日常の中で無意識に呼吸を止めてしまうことが多いため、これはとても重要なのです」と彼女は締めくくります。
チームとの連携──マインドフルネスを共有するために
Aline Frambourt氏と共に働くエステティシャンたちは、彼女自身ほど多くの研修をキャリアの中で受けてきたわけではありません。それでもなお、彼女はスタッフにマインドフルネスへの意識を高めてもらえるよう努めています。それによって、施術の中に自然と取り入れてもらえるようになるのです。
「マインドフルネスは、彼女たち自身の一部となる必要があります。それは私たちが体現するべき価値観です。スタッフもこの考えに共感してくれています。可能な限り、チームビルディングの一環としてヨガセラピーのセッションなどを組み込むようにしています」と、専門家であるAline Frambourt氏は語ります。
「私たちは、言語的な情報だけでなく非言語的な情報も観察するよう努めています。なぜなら、キャビンの中では5分以内にお客様のニーズを見極める力が求められるからです。もし、昔のようにお客様と握手ができるのであれば(今でもそうしているセラピストもいますが)、その瞬間に相手の状態が分かることもあります」と彼女は付け加えます。
キャビンにおける呼吸の重要性
「施術者であるエステティシャン自身がキャビンの中で“無呼吸”の状態にあるならば、どうやって施術が成功するでしょうか?」という問いかけを、Aline Frambourt氏は私たちに投げかけます。これは決して軽んじられない疑問です。
「自分自身が呼吸を整えていなければ、お客様に“呼吸”を取り戻していただくことなどできません。エステティシャンは、施術プロトコルをただなぞるだけの存在であってはなりません。そこに付加価値を加え、お客様に何かをもたらす存在であるべきなのです」と、彼女は強調します。
顧客のニーズを見極めることの重要性
お客様に対して最適なケアを提供するには、信頼関係を築くことが非常に重要であると、Aline Frambourt氏は語ります。特に、来店時から安心感を与えることが欠かせないと考えています。
「キャビンの中では、“お元気ですか?”といった定型的な質問ではなく、その奥にある状態について尋ねます。身体的にどう感じているか、触れてほしくない部位があるか、痛みがあるかなどを具体的に聞き出します。こうした情報から、実は感情的な傷がその背後に隠れていることが分かる場合もあるのです」と説明します。
彼女は自身の13年間にわたるエステティックの経験から、美容の分野でも深層的なケアが可能であると確信するようになりました。
「手をそっと相手の身体に置くことは、とても癒しになる行為です。しかも、それによってその人が抱えている不調を感じ取ることができるのです」と彼女は締めくくります。