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赤ら顔・毛細血管拡張症の正体と対策|美容皮膚科が語る診断と治療


鏡に映る自分の顔を見ることがつらいと感じる人も少なくありません。この慢性的な血管性炎症疾患は、頬や鼻に広がる拡張した血管が特徴であり、見た目にも大きな影響を及ぼします。
しかしながら、適切な戦略を採用すれば、レーザー治療によってこの病態は効果的にコントロールすることが可能です。

執筆:Dr. Muriel Creusot(ミュリエル・クルゾ医師)
美容皮膚科学およびレーザー治療専門皮膚科医、
SFLD(フランス皮膚科学レーザー学会)会員

※本記事は、美容および医療に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療・処方を推奨するものではありません。掲載された内容は、信頼性の高い情報に基づいて執筆されていますが、すべての症状や体質に当てはまるとは限りません。治療や処置をご検討の際は、必ず医師の診察・指導を受けたうえでご判断ください。また、医薬品や医療機器の使用に関する詳細については、厚生労働省のガイドラインや各製品の添付文書をご確認のうえ、専門家の指導に従ってください。
掲載内容に基づいて生じた不利益・損害等について、編集部および筆者は一切の責任を負いかねますことを、あらかじめご了承ください。

赤ら顔・ロザセアの悩みと増えるレーザー治療需要

フランス国内でロザセア(赤ら顔・毛細血管拡張症)の影響を受けている人はおよそ400万人にのぼり、その大多数は35〜50歳の女性です。この病気は、見た目の印象からくる心理的な負担が非常に大きく、たとえばアルコール依存症や大人のニキビ肌といった誤解を招きやすいために、突発的に顔が赤らむことへの恐怖(赤面恐怖症)を引き起こし、さらに進行すると対人不安や社会恐怖症、孤立を招くことさえあります。

そのため、皮膚科クリニックではこのような赤ら顔に関する相談がますます増加しており、多くの患者がレーザー治療を「魔法の杖」のように考え、即時の解決を期待して来院します。確かに、レーザーは効果的な手段となり得ますが、すべてのケースに当てはまるわけではありません。

ロザセアの進行症状と原因|赤ら顔・血管拡張の特徴とは

初期段階では、皮膚が一時的に赤くなりやすくなる現象が見られます。例えば、激しいランニングの最中や香辛料の効いた料理を食べた後などに、顔が急に熱を帯びて血管が過剰に拡張し、頬や鼻が赤く染まり、不快なほてりを感じることがあります。

このような数分で消える「フラッシュ」は、紅斑性の初期症状であるエリトローズと呼ばれます。しばらくすると、赤みが定着し始め、小さな血管が恒常的に拡張した状態になります。これが「毛細血管拡張(テランジェクタジー)」と呼ばれる段階で、頬や小鼻の周辺、時には顎や額にも網目状に現れます。ここが、いわゆる毛細血管拡張症、あるいは紅斑性・毛細血管拡張型のロザセアの段階です。

さらに進行すると、小さな丘疹や膿疱が現れ、これは丘疹性・膿疱性型のロザセアとされます。このため、長年にわたりニキビと混同されることが多くありました。

重症化すると、鼻が腫れて隆起するようになります。これは肥厚型のロザセアで、主に男性に多く見られるタイプです。症状としては、患部の皮膚が肥厚し、皮脂腺が増殖・肥大化することで、鼻が分厚く広がり、結節(しこり)が現れます。この「リノフィマ」は、機能面や精神面に深刻な影響を及ぼすことがあります。

ロザセアはどのように現れるのか?

現在でも、この慢性疾患が発症する正確なメカニズムは明らかになっていません。しかしながら、主に肌の色が明るいフォトタイプに多く見られることが分かっており、環境要因も大きく関与していると考えられています。

例えば、ロザセアは高温や日光、また逆に寒冷な気候によっても誘発されやすくなります。そのほか、激しい運動、熱い入浴、強い感情の変化、香辛料の効いた食事や熱い飲み物なども誘因となる場合があります。

さらに忘れてはならないのが、Demodex follicularum(デモデックス・フォリキュラルム)という微小なダニの存在です。このダニは炎症を引き起こす要因となり、エリトローズ(紅斑)の悪化に関与します。

デモデックスは皮膚の毛穴や毛包、特に鼻、あご、額、頬などに生息し、上皮細胞や皮脂を栄養源としています。昼光を嫌うため、主に夜間に活動するのが特徴です。

ロザセアの患者では、皮膚1cm²あたり約10匹(膿疱性ロザセアでは12匹)ものデモデックスが確認されることがあります。これに対し、一般人口における平均数はわずか0.7匹/cm²に過ぎません。

詳細な問診が鍵に

この疾患の発症経緯を詳しくたどることは非常に重要です。とりわけ、各個人に特有の誘因を特定し、それを可能な限り回避することが求められます。

スキンケアルーティンや、服用中の薬剤・サプリメント、過去に行った治療法など、あらゆる要素を丁寧に確認する必要があります。

皮膚の臨床的評価

診察では、疾患の段階を評価する必要があります。紅斑(エリトローズ)、毛細血管拡張(クーペローズ)、それらの混合型(エリトロ=クーペローズ)、ロザセア全般、さらにはDemodex follicularumの増殖状況(その内部にBacillus oleroniusという細菌を含む)なども調べます。

この検査は、クーペローズの背後に隠れている可能性のある他の疾患を見逃さないためにも不可欠です。そうした場合、まず医療的治療を行ったうえで、レーザー治療に進む必要があります。

具体的には、日光角化症(アクチニックケラトーシス)や基底細胞癌(基底細胞腫)が該当します。

最後に、鑑別診断を行い、他の疾患――たとえば、紅斑性狼瘡、脂漏性皮膚炎、ニキビ、薬剤誘発性の症状(ステロイドなど)――を除外することも重要です。

ダーモスコピーによる皮膚診察

ダーモスコピーとは、皮膚の構造を生体のまま非侵襲的に観察するための技術です。皮膚の全層にわたる形態学的構造を可視化することができ、適切な治療方針の決定に寄与します。

診断上の意義としては、血管の大きさや位置を評価し、炎症を引き起こすDemodex follicularum(デモデックス・フォリキュラルム)の増殖を確認することが挙げられます。

ロザセア肌の正しいスキンケアルーティンとは

顔に使用しているすべての製品について、洗顔料からメイクアップ用品、日焼け止めまでを含めて検討する必要があります。ロザセアの傾向がある肌は非常に敏感で、特定の成分に対して不耐性を示すことがあるためです。

したがって、スキンケアの手順は可能な限りシンプルにし、敏感な表皮に適合する処方の製品を使用することが重要です。

具体的には、スクラブやピーリング、油分の多いファンデーションは避けることが推奨されます。特に、医師の管理下でない限り、局所用ステロイドの使用は控えるべきです。

ロザセアに効果的なレーザー治療法と選択肢

ロザセア治療におけるレーザーの目的は2つあります。
ひとつは、エリトローズ(紅斑)、エリトロ=クーペローズ(紅斑と毛細血管拡張の混合型)、およびテランジェクタジー(毛細血管拡張)といった基礎的な症状の治療です。
もうひとつは、53℃以上の温度に耐えられないDemodexの除去です。

症状や適応に応じて、以下のようなさまざまな技術が選択されます。

  • IPL(インテンシブ・パルス・ライト)
  • パルス色素レーザー
  • Nd:YAGレーザー
  • イエローレーザー
  • マイクロニードルを用いた分画式高周波(フラクショナルRF)
  • LED照射機器
  • 光線力学療法(フォトダイナミックセラピー)

このように、レーザーや光・熱エネルギーを活用した複数の技術が、症状の種類や程度に応じて使い分けられています。

IPL(インテンシブ・パルス・ライト)の活用

IPL(インテンシブ・パルス・ライト)は、特定の波長に調整された光を照射することで、ロザセアによって生じる炎症、赤み、発疹、不均一な肌色を軽減します。この光は熱を発生させ、拡張した血管に凝固作用をもたらし、それによって赤みの原因となる血管を除去するのです。

パルス色素レーザー(LCP)の2つの作用

LCP(パルス色素レーザー)には2つの照射モードがあります。
ひとつは、照射時間が短い光熱溶解(フォトサーモリシス)モードで、微細な血管を破壊します。もうひとつは、照射時間をやや長く設定する光凝固(フォトコアギュレーション)モードで、皮下出血(紫斑)を生じさせずに赤みを和らげることが可能です。

このような血管系レーザーは、毛細血管拡張症(クーペローズ)や皮膚病変といった、より進行したロザセア症状の治療にも用いられます。

Nd:YAGレーザーの選択的アプローチ

Nd:YAGレーザーは、1064nmの波長を発し、これは血管の主要成分であるヘモグロビンに吸収されやすい特性を持ちます。これにより、ロザセアによって影響を受けた部位だけを選択的にターゲットにし、周囲の健常な組織を傷つけることなく治療が可能となります。

このレーザーは侵襲性が低く、選択性にも優れているため、ロザセア治療における有効な選択肢とされています。

肥厚型ロザセアにはCO₂アブレイティブレーザー

最後に、肥厚型のロザセアについては、CO₂アブレイティブレーザーによる治療が行われます。このタイプのレーザーは皮膚の表層を削りながら照射することで、肥厚した組織の除去に効果を発揮します。

丘疹・膿疱型ロザセア
薬物療法の導入

このタイプのロザセアには、Demodex(デモデックス)の増殖を抑えることを目的とした治療が必要です。
たとえば、メトロニダゾールは、抗菌作用および抗寄生虫作用を有する外用薬として使用されます。重症例においては、Demodexに対する効果とともに抗炎症作用を持つテトラサイクリン系抗生物質の内服が処方されることもあります。

使用される主な治療薬

  • ブロミジン
  • イベルメクチン:夜間に塗布(商品名:Soolantra)。Demodexの駆除を目的とする
  • メトロニダゾール(商品名:Rozacrème, Rozagel, Rosex など)
  • 経口抗生物質:ドキシサイクリン、リメサイクリン
  • その他:イソトレチノイン、アゼライン酸、タクロリムス、ピメクロリムス、あるいはボツリヌストキシンなどが、紅斑や血管運動性のほてりに対して使用される場合があります

注意点

メトロニダゾールの外用やテトラサイクリン系抗生物質の内服は、紫外線に対する感受性を高めるため、日光やUV照射を避けることが望ましいです。

情報提供の徹底

SFLD(フランス皮膚科学レーザー学会)の理事メンバーによって作成された説明用資料の配布は、各種治療法に関する包括的な情報提供として有効です。
この資料は、以下のウェブサイトでも入手可能です: www.laser-et-peau.com

また、レーザー治療を行う前には、事前説明書およびインフォームド・コンセント(同意書)の提示と取得が必須とされており、これは適切な医療実践の一環として重要なステップです。

ロザセア治療における皮膚科診察の重要性

ロザセアは、非常に頻度の高い一方で、多因子的かつ複雑な疾患です。そのため、何よりもまず専門的な皮膚科による丁寧な診察が求められます。

とりわけ、レーザー治療を受ける前の診察は時間がかかるように感じられるかもしれませんが、効果的な治療結果を得るためには欠かせないプロセスです。

その目的は以下のとおりです。

  • 患者が自身の疾患を理解し、医療およびスキンケア治療に積極的に取り組み、維持療法の継続が必要であることを認識すること
  • 適切な治療を導入し、スキンケアルーティンの見直しを図ることで、レーザー治療によって得られた効果を長期的に維持すること


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編集部(フランス)

Les Nouvelles Esthétiques編集部(パリ)…1952年にフランスで創刊されたLes Nouvelles Esthétiques社が発行する美容技術者や経営者向けの専門誌。本誌は、美容、健康、ウェルビーイングに関する情報を提供しており、世界20数か国にライセンスを供給するなど、国際的に展開する美容専門メディアとして広く認知されています。

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