すでにターゲット顧客については明確に設定されており、どのような人々を自身のスパに呼び込みたいのかは把握されているかと思います。では、その方々にアプローチする手段として、Instagramを思い浮かべたものの、本当に適切な人たちにリーチできるのか、自分の発信が埋もれてしまわないか……さらには、そもそもInstagramがその目的に合ったツールなのかと疑問を感じていらっしゃるかもしれません。その答えは、「はい」です。Instagramは有効なツールです。そして、それを成功に導くための方法は、ここにあります。ぜひ、このガイドに沿って進めてみてください。
小規模アカウントこそ有利!2025年版Instagram運用の最新トレンド
はじめに:2025年にゼロからInstagramを始めても、チャンスは十分にあります
「今さらInstagramをゼロから始めても意味がないのでは」と思われる方もいるかもしれません。しかし、実際はまったく逆です。新規アカウントには、Instagram上での可視性を高める多くの利点があるのです。
新規アカウント=Instagram上での視認性が高まる
スパ専用のInstagramアカウントを新たに開設することで、明確な戦略のもと、ターゲットとする顧客層に向けた発信が可能になります。Instagramのアルゴリズムは、明確に定義されたアクティブなフォロワー層とエンゲージしているアカウントを好みます。そのため、「すでにフォロワーがいるから」といった理由で個人アカウントをスパ用に名前変更して再利用するのは、必ずしも得策ではありません。
ただし、その個人アカウントがすでに「ウェルネス分野への情熱」「自身の施術スタイル」「マッサージに関する知見」などに特化して発信されていた場合には、例外として活用可能な場合もあります。しかし、筆者の経験上、それは稀なケースです。
新規アカウント=強いブランドアイデンティティを築ける
スパ専用に新しいアカウントを開設することで、はじめから明確な編集方針やコンテンツの柱を設けることが可能になります。これにより、ブランドとしての一貫したアイデンティティが形成され、オーディエンスからの認知度や記憶にも残りやすくなります。これに対して、これまで多様なテーマや私的な内容を混在させてきたアカウントでは、その方向性を変更しようとしても、統一感を持たせることが難しくなってしまいます。
新規アカウント=エンゲージメント率が高くなる
さらに注目すべき点は、Instagramのアルゴリズムが新規アカウントを積極的に支援し、初期の成長を後押しする傾向にあることです。つまり、新しいアカウントは、内容に関心を持つフォロワーを獲得しやすく、結果としてエンゲージメント率(いいねやコメントなどの反応率)が高くなる可能性があるのです。
一方で、古いアカウントには、すでに興味を失っていたり、そもそもテーマに関心がないフォロワーが含まれていることも少なくありません。そのようなフォロワーは投稿に反応しないため、アルゴリズムから「このアカウントは面白くない」と見なされてしまいます。結果として、フォロワー数のわりにリアクションが少ない投稿は、表示優先度を下げられてしまうのです。
Instagramは今「小規模アカウント」を優遇している
さらに朗報です。ソーシャルメディア専門企業Metricoolが2024年9月に発表した調査結果によると、Instagramの最新アルゴリズムでは、「tinyアカウント(フォロワー数0~500)」や「smallアカウント(フォロワー数500~2,000)」が、もっとも高く評価されているというのです。
これは、可視性(表示されやすさ)、エンゲージメント(フォロワーとのやり取りの多さ)、リーチ(投稿が届くアカウント数)などの全項目において、これら小規模アカウントが高い成果を出していることを意味します。
だからこそ、「2025年に新しいInstagramアカウントを作っても意味がない」という考えは捨てましょう
Instagram上に新しいアカウントの余地がないからといって、2025年にゼロから始める意味がない、という発想は過去のものです。むしろ、今こそ効果的にアカウントを立ち上げ、何を投稿すべきかを考えるタイミングです。
アルゴリズムに評価されるInstagramプロフィールの作り方
アカウント作成は、Instagramにアクセスしてオンラインフォームに記入し、名前を決めるところから始まるわけではありません。その準備はもっと前から始まっているのです。
コンテンツの柱を明確にして、スパのポジショニングを確立する
今後、あなたのアカウントが顧客に見つけられるかどうかを大きく左右する最初の作業は、「どのようなコンテンツを投稿していくか」を事前に考えることです。これは「コンテンツの柱」と呼ばれるもので、私が『Spa de Beauté』誌でも繰り返し取り上げているテーマです。つまり、あなたのアカウントで一貫して取り上げる2~3の主軸テーマを指します。その柱は、販売している製品や提供している施術内容はもちろん、ウェルネスに関係するあなたの情熱や経験、個人的なストーリーに基づいて設定すると良いでしょう。
Instagramのスパアカウントは、個人アカウントでも広告アカウントでもありません。投稿すべきなのは、美容やウェルネスに関するアドバイスや、季節に応じた体調管理のヒント、スタッフごとの睡眠習慣に関する豆知識などです。それこそが、未来の顧客が求めている情報なのです。また、顧客の声や製品・施術に関する紹介、ご自身のウェルネス観などをシェアすることも有効です。
そして何より重要なのは、「あなたが他のスパと何が違うのか」を明確に伝えることです。特定の顧客層、独自の立地、独自のメニュー構成など、自分ならではの強みにフォーカスしましょう。
「なぜ、あなたのスパに来るべきなのか?」という答えをすべての投稿で伝える
なぜ顧客は、競合他店ではなく、あなたのスパを選ぶべきなのでしょうか? その答えが、あなたのすべての投稿から自然と読み取れる必要があります。
Instagramのアルゴリズムは、明確にテーマを絞ったアカウントを高く評価します。投稿内容に一貫性があれば、アルゴリズムもそのテーマを正確に認識し、適切なユーザーに投稿を届けてくれるようになります。
「アルゴリズムに好かれる」プロフィール文を作成する
アカウントに訪れた人が最初に目にするプロフィール(バイオ)も、アルゴリズムにとって重要な指標です。バイオには、専門分野に関連した明確なキーワードを含めましょう。
これは、あなたのアカウントのジャンルや投稿の性質をアルゴリズムが理解し、最適な相手に届けるための第一ステップです。以下のポイントを意識すると効果的です:
- ハッシュタグや明確なキーワード(例:#wellness、#spaexpertなど)を活用し、アルゴリズムにインデックスされやすくする
- あなたのUSP(独自の強み)や主要サービスを簡潔に表現する
- 「ご予約はこちら」「母の日キャンペーンを見る」といった行動喚起(CTA)を含めて、閲覧者の行動を誘導する
- スパの所在地や提供する施術(例:マッサージ、フェイシャル、サウナなど)、そして自分たちの特性(例:「親子で通えるスパ」「50代からのセルフケア専門」など)を明記する
※言葉遊びや洒落た表現は避け、端的に本質を伝えることが重要です。
フィードの美しさは「ほどほどに」意識を
フィード(投稿グリッド)が美しく調和していることは、以前は重視されていました。フォントやカラー、写真の雰囲気などに統一感を持たせることは、今でも「見やすさ」「読みやすさ」の点で大切です。しかし、現在ではそれ以上に、「何を」「どのフォーマットで」投稿するかが重要になっています。
見込み客を惹きつける投稿フォーマットと実践事例
Instagramを定期的に更新しているのに成果が出ない、と感じている同業者の声を耳にすることは少なくありません。毎週決まった曜日・時間に投稿していても、効果が感じられない……という声は、確かに気持ちをくじかれるものです。
けれども、アルゴリズムの仕組みとコンテンツ形式を理解し、適切なエンゲージメントルーティン(※後述)を実践すれば、こうした課題は回避できます。
キーとなるのは「獲得型コンテンツ」
すでにコンテンツの柱を定め、インスピレーションを与える投稿や教育的、エンタメ要素のある投稿を取り入れてきた方も多いでしょう。あるいは、ストーリーテリングや顧客事例、引用文、意外な意見(Unpopular opinion)も試されたかもしれません。<それらを組み合わせた投稿を続けてきたのに、いまひとつ結果が出ない……。新しいフォロワーが増えず、反応も乏しい……。
なぜでしょうか?それは、これらの手法が間違っているわけではありませんが、「獲得型コンテンツ」を作成していないことが原因です。
「獲得型コンテンツ」とは何か?
Instagramにおける「獲得型コンテンツ」とは、新しいフォロワーや見込み顧客、潜在的な顧客を惹きつけるために特化して作られたコンテンツのことです。このタイプの投稿は、ブランドの可視性を高め、まだあなたを知らない人たちがアカウントに興味を持ち、フォローしたり、予約をしたりといった行動を起こすよう促します。
つまり、「発見」「エンゲージメント」「新規ユーザー獲得」を目的とした、明確な設計意図を持つ投稿です。
獲得型コンテンツの特徴とは?
- 即時的な引きつけ力
目を引くビジュアル、魅力的なテーマ、心をつかむタイトル。目的は、「一瞬で目を留めてもらうこと」です。 - ターゲットへの明確な価値提供
投稿内容が、顧客の実際の悩みを解決する、またはその糸口となるような情報・ベネフィットを含んでいる必要があります。読者が「この投稿を読んで、自分の問題に向き合い始められそう」と感じることが鍵です。 - インタラクティブな設計
「いいね」「保存」「コメント」「シェア」などの反応を引き出すために、質問や投票、エンゲージメント系スタンプなどの要素を活用しましょう。 - 正確なターゲティング
ハッシュタグや位置情報を適切に設定し、可能であれば、地域のインフルエンサーや他アカウントとの連携によって、投稿がより広く拡散される仕組みを作りましょう。
秘訣は「ターゲットの理解」
獲得型コンテンツの本質とは、Instagram上で見かけた顧客が「これ、私のための投稿だ!今すぐ見ておきたい、役に立ちそう!」と感じるようなものです。言葉にすると簡単ですが、実行するには「顧客ターゲットの深い理解」が欠かせません。ターゲットが抱える課題をしっかり把握し、既に設定したコンテンツの柱と組み合わせることで、強い引力を持った投稿が可能になります。
具体例のご紹介
たとえば、あなたのスパがアンチエイジングに特化しているとします。その場合、まずはターゲットの典型的な悩みを想定しましょう。
例:「日差しが強くなると、シミが目立つようになってしまう」
この悩みに対して、「シミを目立たなくする3つの検証済みテクニックをご紹介します」といった投稿が有効です。自身の専門性を恐れずに打ち出し、情報だけが羅列された「ウィキペディア型」の長文投稿は避けましょう。たとえ科学的であっても、読者との共感を得ることは難しく、「まさにこれ、自分のことだ!」という反応を引き出すには至りません。
もう一例として、あなたが最近導入したシグネチャー施術が「睡眠改善を目的としたマッサージ」だとします。これは、半貴石と麻オイルを使用した、独自性の高い内容です。<この施術について伝えたい場合、「健康と睡眠の関係性」を切り口として、眠りに関する課題の一つの解決策として紹介するとよいでしょう。
「知識の提供」ではなく「共感の喚起」を
この場合、投稿内容を「睡眠のメカニズムとは?」などの医療的な説明にしてしまうのは避けるべきです(それはいわゆる「ウィキペディア型」の投稿です)。
むしろ、リール動画や1日1投稿のストーリーズシリーズなどで、実際のスタッフが「自分の睡眠のコツ」や「使用している石の効能」などをシェアする形式にすると、共感と親近感を生み出します。
Instagramで顧客を獲得・開拓するにはどの投稿フォーマットを使うべきか?
すべての投稿形式が、新規顧客の獲得につながるわけではありません。よくある誤りは、「毎日ストーリーズだけを投稿している」というケースです。
これは、すでにあなたをフォローしているユーザーには届きやすい一方で、新たな見込み顧客に発見されることはほとんどありません。というのも、ストーリーズがInstagramの「発見タブ」に表示される可能性は非常に低いためです。
発見タブとは?
発見タブ(アカウント画面下部の虫眼鏡アイコン)とは、Instagramがユーザーに新しいコンテンツやアカウントを提案するために設計した機能です。Instagramのアルゴリズムは、ユーザーが普段どのような投稿に反応しているか(たとえば、いいね・保存・コメントなど)を分析し、その人の関心に合った投稿を個別に表示します。つまり、あなたのスパをまだ知らない人たちに見つけてもらう唯一の手段が、今やこの「発見タブ」なのです。
ただし、ここに表示されるのは、写真・動画・リール(Reels)のみです。一部の公開ストーリーズや推薦ストーリーズは例外的に表示される場合もありますが、基本的にあなたのストーリーズが掲載されることはなく、有名インフルエンサーや「公的人物」でなければ難しいでしょう。したがって、ストーリーズにすべてを依存するのは避けるべきです。
獲得型の王道フォーマット:リール(Reels)
もちろん、ストーリーズは既存のフォロワーと関係を深める手段として非常に有効です。
しかし、新しいフォロワー(=将来的な顧客候補)を獲得したいのであれば、リールの活用が不可欠です。
たとえば、次のようなテーマを扱ったリールを撮影してみましょう。
「初めて来店する場合、どんな施術メニューを選べば良いですか?」
このように、顧客の具体的な疑問や課題に答える内容を、顔出しのセルフ動画(facecam)で撮影し、字幕をつけ、必要に応じてカバー画像やトレンド音源を挿入して公開します。
アカウントを成長させている途中であれば、週に1~2本のリール投稿を習慣づけてください。結果は、すぐに表れ始めるはずです。
見落とされがちだが効果絶大なポイント:エンゲージメント・ルーティンの習慣化
適切なフォーマットで、適切なコンテンツを投稿することで、あなたのアカウントはアルゴリズムによって評価され、「発見タブ」に表示されやすくなります。これにより、ターゲットとなる見込み顧客層にリーチすることができます。
加えて、日々のルーティンとして「エンゲージメント活動」を実践することで、フォロワー拡大をさらに加速させることが可能です。
以下はその実践方法です。
- ターゲット顧客が通っていそうな競合スパのアカウントを特定する。
まずは4〜5件を目安に、現実的な数で始めましょう。 - そのアカウントの投稿をチェックし、誰がコメントしているかを確認する。
- コメントしているユーザーのアカウントを訪問する。
すべてを確認するのではなく、アクティブなユーザーに絞りましょう。 - そのユーザーが見込み顧客と思われる場合、自然な形で交流を始める。
競合の投稿下でコメントに返信したり、相手の投稿にコメントするなどして接点を作ります。
※この段階では、自分のサービスの宣伝は絶対に避けてください。目的は会話のきっかけづくりです。
このルーティンを継続することが大切です。
地道な活動ではありますが、信頼関係を築き、結果的にあなたのアカウントに訪問してもらう流れを生み出します。
DMでの交流も有効。ただし、丁寧に、売り込みは避けて
対象ユーザーに直接メッセージ(DM)を送るのも、ひとつの方法です。ただし、強引な売り込みではなく、あくまで自然なやり取りから始めるよう心がけてください。
これは、いわば「競合の顧客が集まる場所に自分も行く」という従来の営業活動をInstagram上で実践するようなものです。目的は、相手とのやり取りを通じて、あなた自身とあなたのアカウントに関心を持ってもらうことです。
相手があなたのアカウントを見に来て、興味を抱き、フォローしてくれるようになる──それが理想的な流れです。
こうして得られたフォロワーは、アルゴリズム上も非常に高く評価されます。というのも、「他アカウントでの交流を経てフォローに至ったユーザー」は、その後の投稿にも積極的に反応してくれる可能性が高く、Instagramはそのようなフォロワーの動向を参考に、似た関心を持つ他のユーザーに向けて、あなたの投稿を「発見タブ」に表示しやすくするからです。
つまり、そのフォロワーがあなたの理想顧客像に当てはまるのであれば、Instagram上でより多くの見込み客にリーチできるようになるのです。
毎日のルーティンが鍵!継続で成果を出すInstagram運用体制
エンゲージメント・ルーティンは毎日行うのが理想ですが、最初は少し時間がかかると感じるかもしれません。それでも、Instagram上で健全で本当に意味のあるフォロワー層を築くうえで、非常に効果的な方法です。
また、このルーティンを継続することで、Instagramは単なるSNSではなく、本格的なマーケティングツールとして活用できるようになります。予約受付や売上向上に直結するプラットフォームへと変わっていくのです。
もちろん、スパのマネージャーとしてすべてを自分で行うのは容易ではありません。そこで、スタッフ全員が交代でアカウントを運用していくという方法も考えられます。あるいは、受付担当者に一部の時間を確保してもらい、運用を任せるのも一案です。
いずれにせよ、大切なのは「継続性」です。週に4~5回の投稿(うち少なくとも1回はリールを含む)を維持できれば、アカウントは確実に認知されるようになります。
Instagramを本格的にスパの集客手段として活用したいとお考えなら、今すぐ始めましょう。
ホテル全体アカウントでは不十分?スパ専用Instagramの必要性
前述の理由から、もしあなたの施設がスパ併設型のホテルであるならば、スパ専用のInstagramページを設けることを強くおすすめします。
なぜなら、ホテル全体のアカウントでは、投稿の内容やコンセプトがスパ専用のものとはならず、内容が一般的かつ包括的になってしまいがちです。その結果、コンテンツの柱が曖昧になり、前述のような戦略を実行しづらくなってしまいます。
実際に、スパのための専用アカウントを開設し、独立した情報発信を行うことで、スポット的なキャンペーンや直前予約の促進に活用しているホテルも増えてきました。こうした柔軟性は、スパにとって大きな武器になります。
ですから、マーケティング責任者と相談する際には、これらの利点をしっかりと伝えてみてください。
Instagramをビジネスに活かすために押さえるべき基本戦略
2025年であっても、ゼロからInstagramアカウントを育てるのは不可能ではありません。そのために必要なのは、以下の2点です。
- アルゴリズムを味方につけるために、適切な内容・形式でコンテンツを作成すること
- 毎日続けられる、構造化されたエンゲージメント・ルーティンを確立すること
これらを理解していれば、たとえスタート地点が「ゼロ」であっても問題ありません。ルールを知った今、あとは実行するだけです!