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美容ビジネスで信頼と売上を築くストーリーテリング術


美容の分野において、人とのつながりは欠かせないものです。そんな中、ストーリーテリングは、顧客を惹きつけ、長くつながるための強力な手段となります。自分自身の物語を語ることで、温かく歓迎されていると感じられる世界観を創出し、お客様にとって特別な価値を提供できます。この記事では、ストーリーテリングの技術をどのように習得し、それを事業の成長に活かし、効果的にコミュニケーションに組み込むかをご紹介します。

執筆:Isabelle Benmansour(訪問美容分野専門のビジネスコーチ)

顧客の心を動かすストーリーテリングの重要性

感情を呼び起こす物語を通して相手の心をつかむことで、ストーリーテリングは貴社のコミュニケーションに強いインパクトと記憶への残りやすさを与えます。これにより、顧客はメッセージに対してより敏感に反応しやすくなり、サロンのフォロー、商品の購入、周囲への紹介といった行動に結びつきやすくなります。その結果として、リピーターの獲得や売上の向上につながるのです。

感情で選ばれる美容サービス―ストーリーテリングが信頼を生む理由

感情が意思決定を支配している

私たちの購買決定の95%が感情に基づいていることをご存じでしょうか? 論理的な説明は、実はその決定を後から正当化するために用いられているにすぎません。魅力的なストーリーは感情に働きかけます。それは注意を引きつけ、関与を促し、記憶に残るのです。たとえば、ある顧客が地域の複数の美容専門家の中で迷っているとします。その際、貴方の歩んできた道や価値観に個人的な共感を抱いたならば、その顧客は迷わず貴方を選ぶことでしょう。

本物らしさが信頼を生む時代へ

デジタル化が進む現代において、人々はますます「本物のつながり」を求めるようになっています。日々の出来事や自身のストーリーの一端を共有することで、顧客はサービス提供者としてだけでなく、「親しみやすく誠実な存在」としてあなたを受け止めるようになります。

Instagramで「ライフスタイル」アカウントが支持される理由

現在、Instagramにおいて「ライフスタイル」アカウントが非常に人気を集めているのも、まさにこの点にあります。投稿者が自分の生活を演出しているとはいえ、フォロワーが惹かれるのは、まさにその「生活」そのものが彼女たちの魅力となっているからです。そして、その影響力の源は、フォロワーとの深い共感と信頼関係にあります。

なぜ多くの人が惹かれるのか?

それは、彼女たちの投稿がインスピレーションを与えたり、面白さを感じさせたり、時には完璧でない一面も見せつつ「リアル」であるからです。まるで映画スターのように、夢のような日常、挑戦、失敗、成功などを発信しているのです。だからこそ、彼女たちが「○○ブランドの最新クリームを試してみた」と言えば、「私もそのクリームが欲しい!」と思わせるのです。それは、憧れの存在に近づきたいという気持ちであったり、あるいは投稿者が築いた信頼に基づく共感であったりします。

「私らしさ」で信頼を築く―共感される美容ストーリーの伝え方

誤解しないでいただきたいのは、同じような発信をすべきというわけではありません。もちろん、あなたの人生はあなた自身のものであり、Instagramのスターのようになる必要はまったくないのです。ストーリーテリングの手法は多様であり、必ずしも表に出る必要はありません。むしろ、自分らしい形で、顧客とのつながりや感情を生み出すために「ほんの少しの本物らしさ」を見せることが重要なのです。

それが、あなたの選んだ方向性、提供する商品やサービス、アドバイスに表れていれば、顧客は「まさにこれ、自分にぴったり」と共感してくれるはずです。ごく小さなエピソードでも、そのひとつが大きな違いを生むこともあるのです。

話しすぎず、ちょうど良い「ひと切れ」を

ここで言う「あなたの物語のひと切れ」とは、人生の全てを語ることではありません。たとえば、サロン開業の背景にあるストーリーを紹介するのも一案です。例えば、幼い頃におばあさまから「人の世話をすることの喜び」を教わり、それが原点となって今の活動につながっている。あるいは、自分の心を強く動かした出来事や、大切にしている社会的なテーマがあり、それがサロンのコンセプトの源となっているなど。

必要以上にプライベートな話をする必要はありません。ただ、共感を生むに十分なエピソードを共有することで、顧客との距離を自然に縮めることができるのです。

視覚と感情が記憶に残る理由

顧客にとって、単なるサービスの一覧よりも、物語の方がずっと記憶に残りやすいものです。感情は強力な働きを持ちますが、それがイメージと結びついたとき、その効果はさらに高まります。このため、「視覚的・感情的な記憶」が重要だとされているのです。

トリートメントの表現にストーリーを加える

まずは簡単なことから始めてみましょう。サービスの効果を単に箇条書きにするのではなく、感情に訴えるようなイメージで表現してみてください。例えば、「輝きケア」と聞いて、どのようなイメージが浮かびますか?施術の動作やマスクの使用などが思い浮かぶかもしれませんね。

では、「朝日のように肌を明るく照らすフェイシャルケア」と言ったらどうでしょうか?一瞬で、明るくつややかな肌のイメージが目に浮かびませんか?顧客も同じように、その光景を思い描くのです。

美容マーケティングにおけるストーリーテリングの活用場面とは

ストーリーテリングは、顧客があなたの世界を初めて知る瞬間から有効です。たとえば、ウェブサイトやSNS、チラシなどを通して、顧客があなたをまだ知らない段階でも、目にした内容が心に響けば、それは「印象に残る第一印象」となります。その後の関係構築においても、ストーリーテリングは力を発揮します。それはまるで新たな友情が芽生えるような過程であり、顧客はあなたのことをもっと知りたくなるのです。

「今週は何があったの?」「最近見つけたものは?」「どんな印象を受けた?」——こうした自然な好奇心こそ、物語を語る絶好のチャンスです。

具体的に何を語ればいいのか?

日々の発信において、以下のような要素がストーリーとして機能します:

  • あなた自身の経験:サロンの舞台裏や最近のインスピレーション
  • 新たな発見:取り扱いを始めた新商品や新しいケアメニュー
  • 率直な印象:顧客にぴったりだと感じた商品やサービスについての感想
  • 顧客の声:サービスの質を証明するような顧客の体験談や感想

こうした一つひとつの情報が、物語となって顧客をあなたの世界へと引き込んでいきます。そしてそれは、まるで次の展開を楽しみに待つNetflixのシリーズのように、顧客にとって楽しみな存在となるのです。

どのような物語を語ることができるか?

ここで確認しておきたいのは、「物語を語る」というのは、事実を脚色したり、誇張したりすることではないという点です。大切なのは、なぜあなたが今この場所にいるのか、どのような想いでその選択をしたのか、そうした背景を共有することです。そして顧客を、あなた独自の世界観に誘うのです。

こうした物語は、あなたの活動に意味と厚みをもたらし、顧客があなたにサービスを依頼するという選択に、安心と納得を与えるのです。

あなたの想いが共感を呼ぶ―美容サービスに必要なストーリー設計

無個性な自己紹介ページは今すぐ見直しましょう

残念ながら、多くの紹介ページが印象に乏しく、個性や背景が見えてこない内容となっています。そこでは、顧客はあなたがどんな人物なのかを知ることができず、他のサービス提供者と何ら変わらない存在として受け止められてしまうのです。

悪い例の紹介

よくある例として、次のような紹介文があります。

「美容資格を有し、複数年の経験を活かして、[地域名]にて訪問施術を行っております。お客様一人ひとりのニーズに寄り添い、心地よい時間をお届けすることを目指しています。完全予約制で承っております。」

さらに悪いケースでは、履歴書のように学歴・経験年数・受講講座のリストが並ぶだけの内容になっていることもあります。これでは面接に臨んでいるのか、それとも顧客獲得を目指しているのか、区別がつきません。そこに感情的なつながりはあるでしょうか?本物らしさは伝わるでしょうか?「この人にお願いしたい」と思わせるような物語はどこにも見当たりません。

もうひとつの典型的な例をご紹介します。

「熱意とプロ意識を大切にするチームが、皆さまにサービスを提供しています!(とはいえ、他も同じことを言っています)。市内中心部に位置する当施設は、温かく落ち着いた雰囲気の中で、皆さまのウェルネスをサポートいたします(当然ですが、ここはカードゲームをする場所ではありません)。 美容ケア、マッサージ、ハマム、オーガニックコスメなどをご用意し、リフレッシュと癒しのひとときをお届けします(まさか、疲れてストレスを抱えて帰ることはありませんよね?)」

このような文面を読んだ顧客はどう感じるでしょうか?依然としてその印象は「無個性」のままです。ありきたりな言葉を並べたり、スキルの羅列をするだけでは、顧客にとって意味のある結果を提示しているとは言えません。その場所がなぜ特別なのか、なぜ他ではなくあなたを選ぶべきなのか——それが伝わらなければ、数多ある他のサロンや訪問施術者と何ら変わらないのです。

「自分らしさ」を説明しましょう―選んだ理由が、選ばれる理由になる

  • なぜこの職業を?
    この仕事、この分野、この研修を選んだのには、必ず理由があるはずです。なぜオーガニック製品を選んだのか?なぜアンチエイジングや痩身ケアに取り組んでいるのか?なぜママ向け、ネイル施術を手がけるようになったのか?
    あなたの選択に込められた想いを、ぜひ説明してください。
  • なぜその研修を?
    トレンドに乗って受講した研修もあるかもしれません。でもなぜ、そのトレンドに乗ることを選んだのでしょうか?
    学ぶことが好きで、それを人に伝えることに喜びを感じる——そんなあなたらしさがあったからではないでしょうか。
  • なぜそのコンセプトを?
    もしウェルネスをテーマにしたサロンを立ち上げたのなら、それには理由があるはずです。
    なぜ、最新の痩身・アンチエイジング機器を売りにした施設ではなかったのか?あなたが「癒し」や「安心感」を重視した背景を語ってください。
  • なぜそのチームメンバーを?
    事業の背後には「人」がいます。あなた自身、そしてあなたのチームにも、それぞれのストーリーがあります。
    一人ひとりが持つ技術以上に、性格や人柄がチームに加わる決め手となったはずです。それが、あなたが他の候補者ではなくその人を選んだ理由であり、顧客があなたを選ぶ理由になるのです。
    だからこそ、その物語を語るべきなのです。

「Aboutページ」を見直しましょう

  • あなた自身の物語:なぜこの道を選んだのか?どのようなビジョンを抱いているのか?
  • あなたの価値観:他と差別化するものは何か?思いやり、本物らしさ、情熱でしょうか?
  • あなたの使命:単に施術を提供するだけでなく、顧客にどんな価値を届けたいのか?

こうした要素を丁寧に伝えることで、顧客はあなたの人間性に触れ、共感し、信頼を寄せるようになるのです。

あなたの世界観を伝えましょう

  • あなたの世界観:あなたの施術を特別なものにしている細部とは何でしょうか?ある場所から着想を得た空間の雰囲気、こだわりの儀式的プロセス、厳選された使用製品などが挙げられます。
  • ちょっとしたエピソード:たとえ施術と直接関係がない内容でも構いません。例えば私の場合、「チョコレート」が大の好物で、それをニュースレターの軸にしています。毎週日曜、読者はテーマに関連したチョコレートを手にしながら私のニュースを読むのです。たとえば、コーヒー味のチョコレートは「ビジネス加速」、ホワイトチョコレートは「マインドセット」に対応させるなど、遊び心も加えています。

心を動かすストーリーテリングの作り方

1. 顧客を本当に理解する

これまで、ストーリーテリングを通して顧客とつながる方法をご紹介してきましたが、そもそも「顧客像」を本当に理解しているでしょうか?年齢や職業、住んでいるエリアといった属性の話ではありません。彼女の本質的なニーズ、悩み、望み、挑戦、心を動かすもの、忘れたい過去、あるいは記憶に刻みたい大切な想い——そうした深層を理解することで、真の共感と反応を得ることができるのです。

2. 明確なメッセージを持つ

効果的なストーリーテリングは、顧客の心に響く明確なメッセージから始まります。あるエピソードをご紹介します。結婚指輪を探していたときの話です。私と夫は、個性的なデザインを扱う宝飾店に出会いました。目を引かれたのは、三つのゴールド(ホワイト・イエロー・ピンク)で編まれた、二つのリングを第三のリングでつなぐデザイン。内側には「しーっ、愛してる」という刻印がありました。

私はホワイトゴールドのみの安価なバージョンを希望し、夫は三色の高価なものを気に入っていました。購入を諦めかけたそのとき、店主がこう言ったのです。
「結婚式が終わったあとに残るのは、愛情と指輪だけです」

このひと言が、私たちの心に響き、最終的に高価な方を選ぶ決断につながりました。売られたという感覚はなく、「共感」を得られたことが決め手でした。このような言葉は、そのままブランドのスローガンとしても使えます。有名な「Because you’re worth it.(あなたにはその価値がある)」というコピーも、そうして生まれたのです。

3. 物語の目的を明確にする

ストーリーには必ず「目的」が必要です。たとえば「自己紹介ページ」の場合は、自分を知ってもらい、信頼を築くことが目的です。結婚指輪の話では、購入が目的でした。L’Oréalならブランド強化が目的です。では、あなたのストーリーによって、顧客にどのような行動を促したいですか?

  • 商品を購入してもらうこと?
  • ニュースレターの購読登録?
  • SNSのフォロー?
  • サロンの予約?
  • 周囲にあなたのことを話題にしてもらう?
  • リピーターになってもらう?

目的を明確にすれば、伝えるべきストーリーも見えてきます。

顧客の行動を引き出す!美容ブランディングのための物語設計術

「物語を語りたい」と思っても、その形式はさまざまです。自分の性格や得意分野に合わせて選びましょう。

  • 動画が得意な方:YouTube、リール、ストーリーズなどが向いています。日常のちょっとした困難や笑いを交えた動画が多くの共感を集めています。「あなたの悩み、私にもわかります。だからお手伝いできます」と伝えるのに最適です。
  • 文章が得意な方:ブログやカルーセル投稿、SNSポストも効果的です。大切なのは、自分が「話の内容」と「形式」の両方に納得していることです。
  • ニュースレター:基本は文章ですが、動画へのリンクも可能です。実際、多くの読者が動画付きニュースレターを楽しんでいます。
  • ビフォー・アフター写真+文章:
    「写真は千の言葉に値する」と言われますが、「物語は千の販売トークに勝る」とも言えるでしょう。例えば、施術前後の写真に次のようなストーリーを添えてみてください。
    「この女性は、就職面接を前にとても緊張していました。一時間のケアを終える頃には、肌は輝きを増し、笑顔も自信に満ちていました。さて、面接の結果はどうだったと思いますか?」
    単に結果を見せるだけでなく、顧客が抱える現実的な悩みをどうサポートしたかを伝えることができるのです。

ストーリーテリングは信頼構築の最強ツールである理由

ストーリーテリングは単なる小道具ではなく、顧客との本質的なつながりを築く強力なツールです。あなたの価値観、経験、インスピレーションを分かち合うことで、顧客にとってあなたは「施術者」以上の存在となります。信頼できる存在、励ましをくれる存在、そして記憶に残るプロフェッショナルとして、選ばれる理由を築くのです。

さて、あなたが最初に語るストーリーは、どんなものになりますか?


ヌーヴェル日本版(LNE)公式サイトwith美容経済新聞 2025年6月正式リリース!

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編集部(フランス)

Les Nouvelles Esthétiques編集部(パリ)…1952年にフランスで創刊されたLes Nouvelles Esthétiques社が発行する美容技術者や経営者向けの専門誌。本誌は、美容、健康、ウェルビーイングに関する情報を提供しており、世界20数か国にライセンスを供給するなど、国際的に展開する美容専門メディアとして広く認知されています。

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