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技術を武器に美容業で飛躍─サロン経営者が語る成長と挑戦のストーリー


Institut Le Loft Beautéの経営者であるAnaïs Destrehem氏にとって、道のりは決して平坦なものではありませんでした。しかしながら、彼女は学びを重ね、多くのコンテストに参加することで、自らを立て直し、常に新たな挑戦を続けてきました。現在、彼女が情熱を注ぐこの仕事は、安定した生活をもたらしています。本記事では、Anaïs Destrehem氏がこれまでの軌跡を『Les Nouvelles Esthétiques』誌に語ってくれました。

マイクロブレーディング導入で飛躍した経営転換点

Anaïs Destrehem氏

私がこの道に入ったのは、母の提案がきっかけです。母はヘアスタイリストで、「一緒に美容スペースを開こう」と声をかけてくれました。そのため、私は2008年にLens(ランス)にあるSIADEPにて、CAP(職業適性証)エステティックの取得に取り組みました。

その後、母とともに美容スペースを開設しました。母はヘア部門を担当し、私はビューティケア部門を担当しました。この施設はLe Loft Beauté(ル・ロフト・ボーテ)という名称で、所在地はPas-de-Calais(パ・ド・カレー)県のSaint-Michel-sur-Ternoise(サン=ミッシェル=シュル=テルヌワーズ)にあります。

当時、施設は1階部分のみで80平方メートルの広さがありました。2階も所有していましたが、そちらは活用していませんでした。ビューティケア部門では、私は従来型のトリートメントサービスの提供を選びました。開業にあたり、1名の研修生を雇用しました。ビューティケアのスペースには、UVトリートメントルーム、ケアルーム、ネイルスペースがありました。

しかし、すべてが順調だったわけではありません。私は最低賃金しか受け取れず、母とともに苦しい時期を経験しました。特に印象に残っているのは、大晦日の日、母と一緒に年末決算をしていたときのことです。私は泣いていました。手元にはほとんど何も残らず、資金残高はゼロ、あっても2,000ユーロが精一杯でした。

この仕事で生計を立てていくのは非常に困難でした。正直に言えば、当時の私は経営者として未熟で、設備投資や新しい技術・製品の導入に注力しすぎていました。そして、私は飽きっぽく、自信を持てずに迷い続けていたのです。

マイクロブレーディングとの出会い

2016年、私は「Congrès International Esthétique & Spa(国際ビューティ&スパ会議)」にて、マイクロブレーディングという技術に出会いました。パリのEmalyでDavid Brow Artのもと、3日間にわたってマイクロブレーディングの基礎技術を学びました。

当時、この施術を提供している専門家はまだ少なかったため、私のサロンでもすぐに人気を得ることができました。この技術の導入によって、多くの新規顧客を獲得することができたのです。

それからというもの、私の施術時間はマイクロブレーディングに特化され、スケジュールは常に埋まるようになりました。業績も好転し始めたのです。

美容サロン経営の危機と再起を支えた学びと投資

しかし私は、間もなくマンネリを感じるようになりました。とくに、自分が技術を完全に理解しきれていないという実感があったからです。売上が伸びたことで、RSI(社会保障組合)からの大きな追徴金が発生しました。

ちょうどその頃、私は離婚を経験し、11か月の息子と二人きりの生活が始まりました。数か月のうちに家賃を支払えなくなり、住まいを退去せざるを得なくなりました。そして、祖母が所有していたものの、長年空き家となっていた老朽化した家で生活を始めました。

私はその間もサロンで働き続けていましたが、非常に困難な状況でした。

…しかし、それが再起のきっかけに!

「なぜ、うまくいっているはずのサロンを経営する母親が、こんな状況に陥るのだろう?」――私は自問し、孤立した中で深く考える時間を過ごしました。諦めるか、あるいはサロンの経営を見直し、より強く事業を成長させるか。そう考えた私は、「Esthéticiennes Performantes(パフォーマンス志向の美容専門職養成講座)」の研修に参加し、収益性の向上と管理方法を学びました。

その同時期、2019年には、PhiAcademyのChems Latrecheからマイクロブレーディングの上級トレーニングを受けることを決意しました。それによって、これまで自分が学んできたもの以上に多様な施術方法があることを知ったのです。

私は、美容専門職として自ら投資し、継続的に学び続けることが重要だと考えています。

この新たな学びの成果は、顧客の反応においても明確に表れました。国際的に評価されるアカデミーで研修を受けたことが、顧客に対して私の専門性の高さを伝える要素となりました。

再び売上を伸ばすことができ、さらに新しい技術を学ぶための資金的な余裕も得られたのです。

パウダーブロウとアイライン技術の研修

その後も私はPhiAcademyでの学びを続け、パウダータイプのアイラインやアイライン全般の技術を習得しました。同時に、眉技術のブラッシュアップも継続しました。

私は、永久メイクの分野で専門性を高め、確固たる評価を得たいと考えていました。なぜなら、それがサロンにとって大きな成果をもたらしていたからです。

そして、私は常に学び続けている姿勢を顧客に示すことで、信頼と専門性を確立していきました。そうして、厳しい状況から抜け出すことができたのです。

フェミニンなファインラインタトゥーで新市場を開拓

そして、コロナ禍が到来しました。サロンは強制的に休業。私はこの予期せぬ出来事を「損失」とは考えず、自らのスキルを補完するための機会と捉えました。

オンライン研修やコーチングを見つけ、積極的に学びを深めました。ネイル、フェイシャル、製品知識、永久メイク、経営、SNS運用など、多方面にわたり学習を重ねました。

再開後、サロンには多くの顧客が戻ってきてくれました。

第2回目のロックダウン時には、サロンの拡張工事を行い、再スタートへの準備を整えました。事業の成長にともない、スタッフの採用も必要となりました。当時、私のもとでは、2名の正社員と1名のBTS(高等専門課程)の研修生が働いていました。

私は常に施術室にこもり、永久メイクの施術に専念していたため、スタッフからは顔を見せない存在になっていました。それでも私は、学び続けること、成長し続けることへの情熱に満ちていたのです。

海外での永久メイク研修

さらなる技術向上を目指して、私は海外での研修を探し始めました。これまでに、キエフ、ベオグラード、ドバイ、ロンドン、パリ、ブリュッセルで研修を受けてきました。

また、「メガコース」と呼ばれる集中型の研修にも参加しました。これは、1日3名のモデルに対して5日間連続で施術を行うという形式です。

この集中研修では、眉、唇、アイラインの施術を実践形式で行い、研修は専門トレーニングセンターで実施されました。目的は、できるだけ多くの施術をこなすことで技術を磨くことです。この形式は非常に自分に合っていると感じました。

綿密な組織体制のもとで

海外に出向いて研修を受けるためには、サロンの運営を任せられる体制が必要です。私は、現在もそうですが、スタッフにサロン運営を任せられる環境にあります。

もちろん、海外での研修には費用がかかります。交通費、宿泊費、研修費などを自費で負担する必要があります。しかし、私はそれらを「自己投資」として捉えています。自らの未来のために犠牲を払う価値があると考えているからです。

とくに永久メイクに関しては、こうした投資は必要不可欠です。私たちは、顧客の顔という非常に重要な部分に責任を負っているのですから、常に最高の技術を追求し、適切な研修を受ける義務があると考えています。

繊細なアイライン技術からタトゥーの世界へ

ある日、私はそれまで習得していたアイラインの技術を、顔ではなく身体に応用してみたいという衝動に駆られました。そして翌日には、「ファインラインタトゥー」の技術に取り組み始めたのです。この技術は完全に独学で習得しましたが、導入と同時に需要が急増しました。

売上は一気に伸び、現在では、繊細でフェミニンなタトゥーを求めるお客様が後を絶ちません。この技術との出会いが、私の人生を大きく変えました。将来の展望を持てるようになり、旅行にも出かけられるようになったのです。

スピーカー・審査員として活躍する美容専門家の現在地

新たな情熱――人に教えること

ファインラインタトゥーを始めて2年後、複数の方から「教えてほしい」と声をかけられるようになりました。私は自身のプログラムを構築し、研修講師としての登録番号を取得。ついにトレーナーとしての活動を開始しました。

それは私にとって新たな情熱の発見でした。自身の技術を伝えること、他の美容専門職の方々が事業を発展させたり、新しい挑戦を始めたりする手助けをすること。そして、急増するニーズに応えていくこと――これらに喜びを感じています。さらに、私は自身のオンライン研修プログラムも開発しました。

永久メイクのコンテストへの挑戦

その間、私はコンテストという新たな分野にも出会いました。最初に参加したのは、Inovel主催の「Trophées du Maquillage Permanent(永久メイクトロフィー)」です。この大会では、唇の永久メイクとパウダーブロウ部門で、それぞれ1位と2位に入賞しました。

翌年も、アイライン(パウダータイプ)と唇の部門で同様の成績を収めました。さらに、「France Concours Esthétique(フランス美容コンテスト)」でも優勝し、2023年の「最優秀永久メイクアーティスト」に選ばれました。

他にも、「Bw Champ」「Luxury Championship」「FCE 2023」「Elite FCE 2023」「Wulop England」など、さまざまな大会で受賞しました。

しかし、私にとって最も意義深く、誇らしかったのは、Elena Grozavu氏とVadim Lungu氏が主催する「Wulop France 2024」でした。この大会では、ヘアストローク部門で1位、パウダーアイライン部門で2位を獲得し、総合グランプリを受賞しました。

その結果、フランス代表チームの一員として、トルコで開催された世界大会の決勝にも出場する機会を得ました。世界約60か国との競い合いでした。

これらの受賞歴を通じて、私の知名度は大きく高まりました。現在では、「Wulop」やアテネで開催される「Global Beauty Art」などの大会に、審査員として招かれるようにもなっています。

スピーカーとして、技術のデモンストレーションも実施

私は現在、スピーカーとしても活動しており、「Délicate Tattoo(デリケートタトゥー)」という自分の技術を紹介するため、さまざまな大会に足を運んでいます。

参加者から審査員へ

あるとき、ロンドンで開催されたFrance Concours Esthétique(フランス美容コンテスト)にて、審査員を務めてほしいと依頼されました。これは私にとって、初めての海外での審査員経験でもありました。

審査員の役割は決して簡単ではありません。施術の仕上がりが思わしくない場合でも、その人を責めたくはないという気持ちが生まれます。ですから、私はできる限り公正に評価するために、参加者に対して具体的なアドバイスを伝えるようにしています。

多くの審査員はそこまで踏み込みませんが、私は改善点を明確に伝えることが、技術向上のために不可欠だと考えています。なるべく公平に、そして成長を促す立場でありたいと思っています。

Le Loft Beautéの成長

私のサロンであるLe Loft Beautéの成長は、これまで受けてきた多くの研修の積み重ねによるものです。2020年には、上階のスペースを回収して改装工事を行いました。そして現在、さらに拡張工事を進めており、サロン全体を活用して研修用スペースを新設しています。

現在は、研修スペース、ネイルスペース、4つの施術ルームを備えた体制となっています。取り扱っているブランドは、ボディケアにBaïja(バイジャ)、フェイシャルケアにJadéa(ジャデア)、ネイルにはIndigo(インディゴ)とThe Gel Bottle(ザ・ジェル・ボトル)を採用しています。

私は新たにスタッフを雇用し、永久メイク部門を強化しました。現在、4名のスタッフが在籍しており、そのうち1名は永久メイクの研修を受けた技術者、2名は伝統的な施術のスペシャリスト、もう1名はネイルプロテーゼ専門の技術者です。

研修分野では、アイライナー、パウダーアイブロウ、ボディタトゥーの技術指導を行っています。集客については、サロンのお客様向けにはFacebookを活用し、研修希望者向けにはInstagramの発信を強化しようと努めています。

研修活動は、周囲からの「教えてほしい」という声がきっかけで始めたものでしたが、今では私の仕事の大きな柱となっています。

美容の仕事がもたらす現在の豊かさ

現在、私の仕事は非常に安定した生活をもたらしてくれています。パウダーブロウは1回250ユーロ、パウダーアイライナーは290ユーロで提供しており、タトゥーは施術時間に応じて1時間あたり100〜150ユーロで価格設定しています。

私は今もなお、自らのスキルサロンの未来投資し続けています。それが将来的に確実に成果を生むことを、私はこれまでの経験から知っているのです。

美容従事者へのメッセージ

私たちの職業は、なんと美しく、情熱的なのでしょう!可能性に満ちた仕事です。ですから、何より大切なのは「勇気を持つこと」です。研修を受け、最高の技術を求めてください。そして、得意分野を見つけて専門性を高め、コンテストにも積極的に参加してください。あなたには、その力があります。

「私は所詮、町の一美容職人にすぎない」――私自身もかつてはそう思っていました。でも、他人が成功していくのをただ見ているだけでは、あなた自身は前に進めません。「自分にはできない」と思うのではなく、「できる」と信じてください。必要なのは、最初の一歩を踏み出すことだけです。

母はいつも私にこう言っていました。「人は、自分が望んだ人生しか生きられないのよ」と。だからこそ、自分に問いかけてみてください。「私はどんな人生を送りたいのか?」と。その答えを実現する手段は、すでにあなたの手の中にあります。あとは行動あるのみです。さあ、一歩を踏み出し、自分の人生を築いていきましょう!


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