かつては「女性のもの」とされてきた日傘が、いまZ世代男性の手に渡り始めている。日傘男子の急増は、単なるブームではなく、スキンケア意識、ジェンダー観、気候変動へのリスクといった複合的要因が絡み合った社会変化の象徴だ。「日傘男子」の急増は、男性の美意識と市場の常識を再定義しつつある。
「男性が日傘なんて」はもう古い
これまで長らく、日本では日傘といえば女性用アイテムという固定観念が強かった。しかし近年、特にZ世代の男性を中心に、「日傘を持つこと」が日常化し始めている。日傘はもはや恥ずかしいものではなく、“合理的な選択肢”となった。そして、男性にとって、紫外線は日焼けだけではなく肌老化やリスクとして捉えられている。メンズ美容市場の拡大とともに、「UV対策はスキンケアの一環」という認識が一般化。特に都市部では、日焼け止め・BBクリーム・パックなどを日常的に使用する若年男性が増加しており、日傘もその延長線上にある。
日傘は酷暑と命を守るための道具
2020年代以降、日本列島は猛暑が常態化。環境省が「日傘の使用を熱中症対策として推奨」したこともあり、日傘は暑さから身を守るための定番アイテムとなりつつある。特にZ世代は「地球温暖化は自分たちの問題」として気候変動に対して敏感であり、暑さ対策を「自己防衛」として行う傾向が強い。日傘はその象徴のひとつとして選ばれている。
拡大するメンズ日傘市場と企業の対応
こうした潮流を受けて、日傘メーカーも「ユニセックス」「男性向け」デザインの商品を続々投入。黒・グレー・ネイビーなどの落ち着いた色合いで、リュックに収まる軽量タイプやビジネススーツに馴染む折りたたみ傘が人気を集めている。さらに、アパレルブランドも「UVカット×ファッション性」を兼ね備えた商品を展開。アウトドア系ブランドでは熱中症対策とデザイン性を両立させたハットや傘も登場しており、男性消費者の選択肢は広がりつつある。実際に、傘・レイングッズメーカーの株式会社小川(本社:名古屋市中区、代表取締役社長:小川 恭令)は、まだ日傘が「美容を気にする女性のもの」とされていた2014年頃からメンズ向けの日傘を企画・販売していた。innovatorは2015年から晴雨兼用シリーズを展開、改良を重ね、2022年から2025年7月までの累計販売本数は11万本を突破。年々厳しくなる夏の暑さや、男性向け晴雨兼用傘の認知拡大もあり、2025年7月11日までの販売数は昨年比140%で推移している。
まとめ──“日傘男子”は市場を動かす新しい指標に
Z世代男性を中心に広がる日傘需要は、単なるライフスタイルの変化ではない。
美意識、健康意識、環境意識を背景としたこの動向は、消費価値の再編を促す明確なシグナルだ。「男性は日傘を使わない」という既存の市場前提はすでに崩れつつあり、機能性×ファッション性を兼ね備えた商品開発は今後さらに競争が激化する分野となるだろう。加えて、企業のブランディングやプロモーション戦略にも、ジェンダーに縛られない選択という新たな視点が求められている。
日傘男子はニッチではなく、時代の需要を映す鏡である。今後、男性向け紫外線対策市場は、ヘルスケア・アパレル・アウトドアなど多領域を巻き込みながら、成長軸としての存在感をさらに強めていくはずだ。