「育児中でもキレイでいたい」「スキンケアは時短したい」──そんな切実なニーズに応えるのが、ながら美容という生活発想。
忙しい毎日の中で、無理なく「続けられる」美容習慣とは?
時短・多機能・生活動線設計から見えてくる、新たなセルフケア市場の可能性に迫る。
「ながら美容」とは
仕事と育児の両立に励む人にとって、美容ケアは「洗面台の前」でするものではない。「生活の合間」に済ませるものだ。洗濯物を干しながらフェイスマスク、料理中のかかとパック、子どものケアをしながらのハンドオイル。ながら美容を、片手間でできる手抜きケアと捉えるべきではない。むしろ、忙しい中でも無理なく続けられる賢い方法だと考えよう。美容を習慣にするには、わざわざ時間を作るより、普段の生活の中で自然に終わらせる親和性が大切なのだ。
なぜ、「ながら美容」が再注目されているのか
コロナ禍以降、生活様式や働き方が大きく変化し、美容のあり方もアップデートされつつある。
忙しさや制約の中でも「続けられる美容」への関心が高まり、その背景にはいくつかの要因がある。その主な要因は次の3つだ。
① ライフスタイルの複雑化
家事、育児、仕事、介護などを同時にこなす女性が増える中、「数分で完了」「手を止めなくていい」ケアへのニーズが高まっている。
② 「手間より習慣」への意識転換
かつて美容は「手をかけるもの」だったが、今は「手のかからないもの」、つまり「生活の中に自然に溶け込むもの」が評価されている
③ SNSで共有される共感型ケア”「育児中でもシートマスクだけは欠かさない」
「子どもと寝落ちする前に5分間のマインドフルマッサージ」
そんなリアルな美習慣が今の子育て世代に共感され、シェアされている。
今、売れている「ながら美容」アイテムの条件
近年ヒットしている「ながら美容」アイテムには、共通する成功パターンがある。
それは、忙しい生活の中でも無理なく続けられ、かつ“使う楽しさ”や“効果実感”を両立できる設計だ。市場で特に支持を集めているアイテムを分析すると、次の3つの条件に集約される。
特徴 | キーワード | 例 |
作業と並行できる | ハンズフリー/貼るだけ | シートマスク、ヘアキャップ、かかとパック |
短時間で完了 | 1分ケア/スリープ中ケア | 朝用オールインワン、ナイトセラム |
五感に訴える | アロマ/癒し/ご褒美感 | 炭酸泡スプレー、保湿ミスト(フレグランス付き) |
美容業界に求められる生活動線発想のプロダクト設計
家事や育児、在宅ワークなど生活空間で過ごす時間が増える中、美容の価値基準は変わりつつある。
かつては「わざわざ時間を取って行うもの」だった美容が、今や「日常動作の延長で自然にできるもの」へとシフトしている。この変化に対応するためには、以下の3つの視点が今後のプロダクト開発に不可欠だ。
① 「ながら動作」前提のフォルム設計
- 片手でも開けやすい容器
- 塗布後すぐに触れてもベタつかないテクスチャー
② 生活空間に応じたプロダクト提案
- リビング向けスキンケア
- キッチンに置けるハンドクリーム
- 子どもと使える低刺激処方アイテム
③ 家族と共存する美容の視点
- 子どもと一緒に使える処方
- パートナーとシェアできるユニセックス設計
まとめ ― ながら美容が切り開く次世代セルフケア市場
ながら美容は、単なる時短ケアではなく、現代の複雑化した生活様式の中で「美しさを持続させるための生活戦略」へと進化している。家事・育児・仕事と同時進行できる設計、五感を満たすご褒美感、そして家族と共存できるやさしい処方。これらの条件を満たすプロダクトは、今後のセルフケア市場で確実に存在感を高めていくだろう。
美容業界にとって重要なのは、消費者の生活動線に寄り添い、「わざわざ」ではなく「ついで」で続けられる仕組みをいかに提供できるかである。ながら美容の発想こそが、忙しい現代人に寄り添う次世代セルフケアの起点となる。
この潮流を先取りし、日常の一瞬一瞬を価値に変えられるブランドこそが、次世代セルフケア市場の主役となる。