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老化の科学と美容医療 細胞から見るエイジングケアのアプローチ

老化のプロセスとは何か。その結果はどのように現れ、どのように対処できるのか。自宅でのケア、美容施設での施術、そして医療的なアプローチに至るまで、その答えをDr. Susana Gómez-Escalante氏が解説します。

Dr. Susana Gómez-Escalante氏

Dr. Susana Gómez-Escalante氏は、英国シェフィールド大学にて分子生物学およびバイオテクノロジーの博士号を取得し、さらにJaume I大学で医療・保健翻訳の修士号を取得しています。現在はmesoestetic Pharma GroupでMedical Marketing Managerを務め、科学コミュニケーションのプロジェクトを統括しています。

老化のプロセスとそのメカニズム

老化は多因子的かつ継続的なプロセスであり、細胞や組織における変化が徐々に蓄積されていきます。その結果、生物学的機能が低下し、代謝ストレスに対処する力が衰え、細胞修復のメカニズムに直接的な影響を併せます。

老化を加速させる主な要因とは?

老化には大きく分けて二つの種類があります。

  • 内因性老化:遺伝的に決定されるもの
  • 外因性老化:外部要因に関連し「エクスポゾーム」と総称される要素(紫外線、喫煙、睡眠不足、慢性的ストレスなど)

さらに注目すべき重要な要因は以下の通りです。

  • 性ホルモンの低下
  • テロメアの短縮(細胞の複製能力を制限)
  • 酸化ストレス(活性酸素と抗酸化物質のバランス崩壊によるもの)
  • ミトコンドリアDNAの変異

臨床的な老化のサインとしては、肌の明るさやハリの喪失、シミやシワの出現などが挙げられます。

顔の老化はどのように進行するのか

老化は顔のすべての構造に影響を及ぼします。骨格から皮膚に至るまで以下の変化が見られます。

  • 骨:眼窩の拡大、頬骨の平坦化、上顎骨の萎縮、鼻部および前頭部の後退
  • 筋肉:サルコペニア(加齢に伴う筋肉量の進行性かつ全般的な減少)、筋力や身体機能の低下。慢性疾患、長期の不活動、不十分な栄養摂取によってさらに悪化する場合もある。過緊張・低緊張、繰り返しの使用による変性も含まれる
  • 脂肪:脂肪組織コンパートメントの減少
  • 皮膚:菲薄化、弾力性の低下、シワの形成、血管の透見性増加
  • 真皮—表皮接合部:平坦化し、栄養交換が減少

結果として細胞機能は低下し、前述した老化のサインがより顕著に現れることになります。

光老化とエラストーシスへの対策

美容施設では、乳酸、グリコール酸、サリチル酸などの酸をベースとした表層ケミカルピーリングが提供されることがあります。これらの成分は細胞更新を促進し、肌の質感を改善し、明るさを与えます。さらに、エピジェネティックな調整原理に基づいて開発され、レチノールやエクソソームといった革新的成分を配合した先進的な外用製品を組み合わせることで、皮膚再生や輝きの効果を最適化することが可能です。

光老化とその影響

老化の最大80%を占める要因とされるのが光老化です。これは肌の黄ばみ、深い溝、そして太陽光線による弾性線維症(エラストーシス)として現れます。

エラストーシスとは?

紫外線は真皮のコラーゲンとエラスチン繊維を損傷します。体はこれを修復しようと試みますが、不完全かつ無秩序に再生されるため、次のような現象が引き起こされます。

  • 異常な弾性物質の蓄積
  • 真皮繊維の構造破壊
  • 機能的コラーゲンの減少

肌の質を目に見えて改善するための戦略

施術前
施術後

ピーリング・バイオスティミュレーション・フィラーを組み合わせた施術前(左)施術後(右)

美容施設で行われるエイジングケアの方法

鍵となるのは、さまざまな製品カテゴリーや技術を組み合わせ、全てのレベルに作用するシナジー戦略です。

  • 即時的な修正:ヒアルロン酸フィラーを用いたボリューム回復
  • 皮膚の更新:ピーリング施術。美容施設または医療機関で行われ、医療機関での施術は有効成分濃度が高く、より深部の症状に対応可能です。どの専門家に委ねるかは、症状の種類や重症度、期待する目標によって異なります。自宅用のマイルドな角質除去剤もあり、肌の質を大きく改善します。
  • 細胞刺激:外用または皮内投与のバイオスティミュラント成分。これらの効果はin vitro試験および臨床試験で実証されています。
  • 自宅ケア:キャビン施術や医療施術の効果を長期的に維持・強化するために不可欠です。

医療現場でのPATHアプローチと細胞再生戦略

mesoesteticが提唱するPATHアプローチは、肌質改善および最も一般的な悩み(シワ、シミ、たるみ、むくみ、クマなど)に対応するための臨床プロトコルを体系化したものです。

PATHアプローチの詳細

  • 深さ(Profondeur):解剖学的レベルを特定(表皮、真皮、皮下組織、筋肉、骨)
  • 作用(Action):目標を設定(再生、バイオスティミュレーション、ボリューム回復)
  • 時間(Temps):有効な頻度と施術回数を確立
  • 自宅ケア(Traitement à domicile):結果を強化し、アドヒアランスを高め、患者の満足度を向上させるために不可欠

また、治療の前には患者の解剖学的背景を考慮することも重要です。顔の形態や構造的特徴、そしてモチベーションの度合いを評価することで、適切な施術計画と高い満足度が得られます。

植物由来エクソソームに注目

私たちは、科学的に実証された細胞バイオスティミュレーションを推奨しています。これは皮内投与や外用による以下の有効成分を活用します。

  • ポリヌクレオチド
  • 植物由来エクソソーム
  • バイオミメティックペプチド(模倣ペプチド)

これらの成分は、皮内注入製剤と外用製品のいずれにも配合されています。

バイオミメティックペプチドは、TGF-βといった内因性分子を活性化し、細胞外マトリックスを刺激してコラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸を産生させます。重要なのは、コラーゲンの合成を促進するだけでなく、その構造を正しく形成させることです。

ポリヌクレオチドは、線維芽細胞の増殖を促進し、皮膚の再生と組織修復を加速させます。線維芽細胞は肌のハリや弾力を維持する主要な細胞であり、若々しい肌の基盤を支えています。

現在ヨーロッパで承認されているのは、外用での植物由来エクソソームのみです。これらは特定の適応に有用な重要因子を含みます。

細胞レベルの研究では、アロエベラ由来のエクソソームは毛髪再生を刺激し、ツボクサ由来のものはコラーゲン新生、抗酸化作用、抗炎症作用を促進することが示されています。これらは皮膚の若返りに不可欠なプロセスです。

その他、効果が実証された有効成分

一部の成分はミトコンドリアを直接ターゲットとし、細胞エネルギー産生を改善し、酸化ストレスを軽減することで、より健康的で弾力のある肌を実現します。

長期的な結果を得るためには、以下を含む再生型化粧品を推奨します。

  • レチノイド(レチノール、レチナール、バクチオール):細胞更新を加速
  • ビタミンC:コラーゲンを刺激し、肌色を均一化
  • シキミ酸:抗老化におけるエピジェネティック効果

そして当然ながら、肌タイプに合わせた広域スペクトルの毎日の光防御(UVB、UVA、赤外線、可視光線)が不可欠です。

臨床での顔のたるみ治療

顔のたるみは、支持組織となる脂肪の減少と移動が主な原因です。その結果、組織が下垂してしまいます。

これに対抗する手段として、ヒアルロン酸フィラーが適しています。一部の製剤にはコハク酸などの成分が含まれており、組織再生を促進しながらボリュームを回復させる効果があります。

長期的な肌改善を目指すための実践ポイント

専門家のアドバイス

施術にあたっては、必ず全体的な診断を行い、解剖学的特徴、ライフスタイル、そして顧客の期待を考慮してください。施術技術の組み合わせ、サロンでのケア、自宅での継続的ケアが、長期的な結果と高い満足度の基盤となります。

持続的な美しさを育むために

適切に選ばれた化粧品ケアと、美容施設や医療機関で行われる施術を数年にわたって組み合わせることで、肌の質と外見に確かな変化をもたらすことができます。重要なのは、細胞・組織・臨床レベルで効果が実証された有効成分を選択することです。

Inner Beauty Award 2025 ―受賞商品発表―

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ヌーヴェル国際版

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編集部(フランス)

Les Nouvelles Esthétiques編集部(パリ)…1952年にフランスで創刊されたLes Nouvelles Esthétiques社が発行する美容技術者や経営者向けの専門誌。本誌は、美容、健康、ウェルビーイングに関する情報を提供しており、世界20数か国にライセンスを供給するなど、国際的に展開する美容専門メディアとして広く認知されています。

  1. 老化の科学と美容医療 細胞から見るエイジングケアのアプローチ

  2. LED美容の科学―フォトバイオモジュレーションが導く肌再生のメカニズム

  3. 美しさの陰に潜む危険 マスカラやアイライナーが目に与える影響とは

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