化粧品・化粧原料各社、ハラール取得とイスラム進出に”二の足”(下)

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2014.06.20

編集部

アジアのイスラム圏で化粧品市場として高い成長率を示しているのがインドネシア、マレーシア、シンガポールの3ヵ国。インドネシアは、2億900万人のイスラム人口を擁し、世界最大のハラール化粧品市場となっている。

ジェトロ調査によるとインドネシアの化粧品市場は、2012年で約3000億円市場を形成し、年率10%の伸びで推移。また、マレーシアの市場規模は、1800億円、シンガポール1100億円の市場を形成し、両国とも年率約8%の成長で伸びていると推計している。

高い経済成長率に伴う中間所得層が化粧品市場を牽引しているもので、ユニリバー、P&G、ロレアルなど世界有数の化粧品、トイレタリー企業が相次いで参入。マレーシアに進出した資生堂や花王、インドネシア進出のマンダムなど国内化粧品メーカーと激しい市場争奪戦を展開している。

資生堂は、2012年にハラール認証をマレーシアイスラム開発局から取得し、ベトナム工場で生産したスキンケア化粧品28品を「ZA」(ジーエイ)のブランドで試験販売。同社では「現在、試験販売を継続中。様子を見ながら本格販売に踏み切るか今後、検討する考え」という。また、花王は、2007年12月にベトナム政府機関からハラール認証を取得し、2008年からマレーシア・クアラルンプールのスーパーなどで「ビオレ洗顔フォーム」を販売している。

これまでハラール認証を取得した化粧品や原料メーカーは、資生堂、花王に加えてロイヤルコスメティック(東京都港区)がEXクリームで認証を取得(2011年3月)。また、化粧原料メーカーの株式会社キミカ(中央区)は、2013年11月に海藻から抽出したアルギン酸でハラール認証を取得している。

最近では、東大発ベンチャーのユーグレナが2014年2月に微細藻類ミドリムシとクロレラのハラール認証を日本ムスリム協会から取得した。

同社は、ミドリムシを原料とした化粧品やサプリメントの商品化を図っているが、ハラール認証は食材として取得したもの。同社は、2018年までの中期経営目標としてアジアを中心にミドリムシ食品の販売目標を300億円にすることを掲げる。今年春からバングラデシュでミドリムシを使用した食品の販売を始めた。イスラム圏では、ミドリムシとクロレラをより身近な食材とするため現地の食文化などを調査しながら普及を目指す。

現時点で、ハラール認証の取得は、食品が中心。総体的に化粧品領域でのハラール認証取得によるイスラム圏進出は、ごく少数だ。

当新聞社が行った化粧原料メーカー、商社の事業展開についての取材でもハラール認証を申請中が1社、準備中が2社と答えた以外全く考えていないとする企業が多かった。

ハラール認証について多くの企業認識は「認証制度そのものは知っている。しかし、認証を取得してイスラム市場に進出するのは時期尚早」とする声が大勢を占める。

なぜ時期尚早なのか。「一部の国で化粧品市場が活性化しているが多くのイスラム圏は、政情不安で、所得格差が大きく化粧品市場として安定性に欠ける」との声が聞かれる。そこにイスラム圏化粧品市場が手つかずに近い状態で潜在する構図が見える。

当面、国内化粧品、原料各社は、欧米やインド、中国、ブラジル、ロシアなどBRICs4ヵ国などに活路を見出してグローバル化を加速する動きにある。しかし、一方で、日本への観光客誘致や東京オリンピックを見据えたイスラム圏女性への販売対応も必要不可欠になってくる。内外にわたって将来を見据えた新たな視点で、ハラール認証とイスラム圏を化粧品ビジネスとして捉え、顧客として囲い込んで行く戦略が一段と求められる。

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