うつむいていた子どもたちが明るい笑顔に!誰もが今日からできるボランティアがある!

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2010.08.10

編集部

この子はいたずらっこでね、この子は甘えん坊で…今までに手術をした子どもたちの写真を指さし、橋本氏は一人一人のことを説明してくれた。術前と術後では、子どもたちの表情が明らかに違う。術前にうつむいていた子が、術後にはカメラに向かって満面の笑み。この多くの笑顔こそが、ADRA JAPAN(アドラ・ジャパン)の偉大な足跡なのだ。

 今回は国際協力NGOであるADRA JAPANの事業部長、橋本笙子氏にお話をうかがった。―今回はネパールで行っておられる口唇口蓋裂医療チーム派遣事業についておうかがいしたいと思います。(橋本)―口唇口蓋裂は先天性の形態異常の一つです。唇や上あごの部分が裂けた状態で生まれてくるのです。この口唇口蓋裂は長年、ひどい差別の対象になってきました。ネパールには、1995年当時、口唇口蓋裂の手術ができる医師は1人しかいませんでした。15年経った今では、手術ができるネパール人医師が増えています。
 設備があって医師がいても、貧困問題がとても根強いネパールには、高額な治療費が払える国民は一握りしかいないため、治療が出来ないのが現状です。そこでADRA JAPANで医師や看護師を派遣して無料で治療にあたることになりました。

口コミで広がっている信頼の輪

―活動をはじめて15年、たいへんだったことは?
(橋本)―最初は手術を受けてもらうこと自体がたいへんでした。無料なんて嘘だろう、子どもを渡したら返してもらえない、臓器売買に利用されるんじゃないか。そんな不安がみんなの中にあって、なかなか信じてもらえませんでした。けれど今では手術を受けた人たちが、口唇口蓋裂の人たちにADRA JAPANで手術を受けておいでと勧めてくれています。身近な人が治療を受けて笑顔で帰ってくる。これが多くの人に集まってもらえるようになった理由だと思います。ネパールの識字率はとても低いので、どうしても普及には時間がかかりました。最初は現地スタッフが歩いて告知してまわるしかなかったんです。手術を受けるように説得できても、今度は村にいる祈祷師が「行ってはいけない。そんな子どもが生まれたのはおまえの前世が悪いせいだ」と言って手術に行くのを止めてしまう。けれどここ数年、祈祷師が自分の子を連れてくるというケースもありました。

何より嬉しいのは術後のみんなの笑顔

―この15年の活動の中で嬉しかったことは?
(橋本)―写真を見てもらえれば分かると思いますが、やはり手術が終わったあとのみんなの笑顔が最高に嬉しい。特に口唇口蓋裂の子を持った母親が一番喜んでくれるんです。母親はみんな、自分のせいで子どもが奇形になったと思っている部分があって。そうじゃないと慰められても、やはり自分を責めてしまいます。なので治療を受けた本人よりも親が喜んで、私たちが帰るときには泣きながら見送ってくれるんですよ。それと日本からの支援が治療だけに留まらないことが多々あって、例えば医療機器を修理する技術。技術者が日本から行って壊れた機材の修理をすることで、自然と現地の技術者に技術が伝わるんです。
―寄付はどこにつかわれているのでしょうか?
(橋本)―日本からのボランティアの人たちは自費で渡航しています。手術用の糸や器具などは、さまざまなメーカーから寄付されています。
 ……ここで広げられた資料には、リコーやライオンといった名の通った企業から、町の小さな医院までさまざまな名が並んでいた。多種多様な企業が協賛して活動を支えているのだ。収支報告は細かく記載されており、寄付の使途は一目瞭然だった。
(橋本)―手術の際の器具などの多くは寄贈して頂いていますが、薬品だけは現地のものでなければ、ネパールの人の体に合わないのです。みなさまからの寄付で消毒や抗生物質などといった手術に必要な薬品を購入しています。本当にみなさんの真心に支えられているんです。橋本氏はインタビューの間、終始「感謝」という言葉を口にしていた。何かできることはないかと思った方はぜひ、ADRA JAPANに問い合わせて募金箱を取り寄せてほしい。サロンのレジ横に置いて寄付を募るだけでも、充分にボランティア活動に参加できる。小さな気持ちが大きな活動を支えるのだ。

術前の子ども

術後の子ども

橋本笙子
Profile
会社員(システム・エンジニア)、短大講師、野外活動指導者の傍ら、ADRAの海外ボランティアに参加。1996年からADRAのスタッフとして広報を担当し、1999年からは団体の運営・事業全般に関わる。現在は事業部長として、全事業を統括している。2児の母。ジャパン・プラットフォーム(JPF)理事、日本UNHCR-NGOs評議会(J-FUN)共同議長などの任務もこなす。Marie Claire2009年3月号の「今、世界が注目する100人の女性-プラネット・ウーマン100」の1人に選ばれる。

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