大正製薬ミノキシジル配合の発毛剤開発で先鞭、今期142億円計画
2014.10.6
編集部
現在、発毛・育毛剤市場でトップの売上規模を誇るのは、大正製薬が開発・販売している発毛剤「リアップシリーズ」(商品名、第1類医薬品)。リアップは、650億円(2013年度、厚労省動態統計)にのぼる市場規模の中で、消費者から発毛を実感する高品質が受けて約30%のシェアを占める。MSD(旧萬有製薬)や花王などのライバル企業を引き離す状況にある。
同社が厚労省から発毛・育毛成分“ミノキシジル〟を配合したリアップの製造承認を取得したのは1999年2月。国内では初めて医療用としてではなく、大衆薬のダイレクトOTC薬として承認を受け1999年6月にミノキシジル1%配合の一般用医薬品「リアップ」(男性用)を国内市場に投入した。以降、2005年にミノキシジル1%配合の女性用発毛剤「リアップレディ」を投入。また、2008年には、ミノキシジル1%配合に3種の有効成分を加えた男性用発毛剤「リアッププラス」を販売。翌年の2009年には、ミノキシジル5%配合の「リアップX5」(写真)を市場投入するなど商品化の変遷を辿っている。
これらのリアップシリーズとしての売上高は、前期(2014年3月期)が前期比11.5%増の156億円。今期(2015年3月期)は、消費税の駆け込み反動で、142億円の売上を見込む。
リアップシリーズに配合されている “ミノキシジル〟は、米国ファルマシア・アップジョン社(現ファイザー社)が開発した発毛・育毛成分。当初、血管拡張を主作用とする経口の高血圧治療剤として開発された。しかし、高血圧治療剤が治療中の患者に適応したところ血管を拡張し、毛根の再生を促すなど多毛症が認められたことから、医療用の外用発毛剤として改めて開発したもの。
ミノキシジルの主な作用は、毛包の休止期から初期成長期へと移行を促進することで発毛を促す、毛包を成長させて毛髪を太い毛に成長させるなど。
ファルマシア・アップジョン社は、ミノキシジル配合の育毛剤をアメリカ国内で「ロゲイン」の商品名で、1996年4月から医者の処方箋なしに購入できる一般薬として販売した。
こうしたファルマシア・アップジョン社によるミノキシジル配合の育毛剤開発に対して米国メルク社は、男性ホルモンを原因とする前立腺肥大症治療の酵素ブロック剤を毛髪剤に応用して開発した「プロペシア」(商品名)を飲み薬として実用化。輸入販売の承認を受けて2005年10月からメルク子会社の「MSD」を通じて日本国内で販売した。
現在、国内で販売されている毛髪成分配合の毛髪剤は、アメリカの技術導入を起源として開発されたことを確認しておく必要がある。
大正製薬は、1985年にファルマシア・アップジョン社と日本におけるミノキシジルの開発・製造・販売の導入契約を結び、脱毛のメカニズム解明、ミノキシジルのメカニズムと有効性・安全性試験、臨床試験(有効性確認・エビデンス)を実施。1999年2月に製造承認を実現した。また、同時期に米マクニール社とミノキシジル製剤の製造・販売実施権(契約期間1985年から2032年)を結んだ。
グラフにミノキシジル配合の男性用毛髪剤「リアップX5」の発毛効果(臨床データ)を示す。
グラフは「リアップX5」を使用した被験者の1平方cm当たり40μ(マイクロ)㍍以上の太さの毛髪変化(増減数)をグラフに示したもの。使用開始4~24週間まで4週ごとに開始時同一部位における40μ以上の太さの変化を見た。その結果、4週間後で0.8本だった増加数が8週間で153本となり24週終了後では、256本に増加した。発毛効果を臨床データで裏付けた国内初の快挙となった。
1つの新薬開発まで100億円、10年の開発期間を要する中で同社は、ミノキシジル導入契約から開発、製造承認、市場投入まで実に、約14年の歳月がかかった。が、毛髪剤開発に果敢に挑戦し、市場で売れる商品として存在感を示すまでになったモデルケースとして注目に値する。
- 参考リンク
- 大正製薬株式会社