千葉大学病院「季節の薬膳メニュー」が好評
2015.08.27
編集部
千葉大学医学部附属病院(千葉県千葉市)の展望レストラン「ヴァンセーヌ」が提供している季節に合わせた薬膳メニューが好評だ。
同メニューの監修を務める同院 和漢診療科長 並木隆雄氏によると、「レストランが開店する時間(10時)に診療が終わるように、診療予約をお願いする外来患者さんもいる」というほどの人気ぶりを呈している。
薬膳メニューは、並木氏の監修の下、同レストランのシェフである岡部栄氏が考案したもの。3カ月ごとにメニューを一新しており、春夏秋冬の季節に合わせた薬膳料理が味わえる。
「日ごろの食生活がきちんとしていないと、せっかく漢方薬を処方しても効果が出ない」(並木氏)ため、漢方薬の生薬を普段の料理に取り入れられないか模索してきた。「外来には冷え症を訴えて受診する患者が非常に多いが、その9割は冬なのに身体を冷やすアイスクリームなどを食べている」(同氏)といい、誤った食事のとり方をしているという。
そこで、“毎日食べているものが健康に直結する”という「医食同源」の考え方を推し進めていくため、院内のレストランに協力を打診。岡部氏が快諾し、2氏のコラボによる薬膳メニューの実現に至った。
「最初、話をもらったときは、難しく考えていなかった。並木先生から漢方生薬に関する資料をもらって勉強をしていくうちに、奥が深いものだと知った」(岡部氏)。その後、3カ月程度の試行錯誤を重ねて、2012年秋に薬膳セットメニューの提供を本格的にスタートさせた。
薬膳メニューのコンセプトは、漢方生薬を使いつつ、季節に合った食べ物を食べて健康増進につなげようというもので、「健康な人がより健康になるための食事。外来通院患者、面会人、付添い人、病院職員、医師、看護師などの健康人が対象」(並木氏)としており、病気を治す食事とは一線を画している。
8月末まで提供している薬膳セット「夏のモリモリ膳」(写真左)は、「だしとツナのご飯」「モロヘイヤたっぷりのつくね」「野菜の温かいスープ」「桃のヨーグルトと豆腐のムース」などで構成し、夏バテしない体力づくりを目指している。
「夏は食欲がなくなるので、だしとツナのご飯はさっぱりしたものにして、モロヘイヤ、鶏肉などタンパク質をたっぷり盛り込んだ」(岡部氏)。また、オフィスの冷房で冷めた身体を温める意味から、桃を使用し、暑さと寒さのバランスをとった。漢方的には、つくねの中に入れたサンザシで胃腸を整え、だし飯に入れたトチュウ葉で疲労回復などを狙っている。
9月から提供開始する秋メニュー(写真右)については、「さんまと生姜のそぼろご飯」「白きくらげと小松菜のサラダ」「秋の果物のコンポート」などを予定。「夏で弱った体力のところに、気候の変化でカゼなどの病気にかからないように体力づくりをする」(岡部氏)ことがテーマとなっている。
例えば、「さんまは不飽和脂肪酸などが豊富で、血液をサラサラにして動脈硬化などを防ぐ」(並木氏)。白きくらげや「秋の果物のコンポート」に盛り込まれている梨などは喉を潤し、乾燥から喉を守る。「秋の果物のコンポート」にはクコの実も加わっており、免疫力の向上を図った。
単品メニューの「木の子たっぷりの和風ハンバーグ」は、蓮根を入れて乾燥した身体を潤しつつ、サンザシも入れて消化吸収を促進。また「秋香るクリームシチュー」には、「眼精疲労に効く」(岡部氏)サーモンなどが入っている。
これだけ練られたメニューを作り続けるには、岡部氏の強いチャレンジ精神が必要だ。3カ月という短い期間ごとに新しいメニューを提供していくには、「シェフのアイデアがないと続かない」(並木氏)。岡部氏も新しいメニューを考案するため、様々なところを食べ歩きして研鑽を重ねているという。
漢方生薬は家庭ではなかなか入手しずらいもの。そこで「家庭でも手に入りやすいように検討を進めている」(並木氏)という。ヴァンセーヌでは、千葉県産の食材を積極的に採用しており、地産地消にも貢献している。今後も「薬膳は苦いとかおいしくないという思い込みを解消して、一人でも多くの人に薬膳の本当のおいしさを味わってもらいたい」(岡部氏)としている。
- 参考リンク
- 千葉大学病院