東京栄養士薬膳研の講演会、婦人科系不調の弁証論治施膳などを紹介

最新商品

2016.12.19

編集部

%e5%85%a8%e4%bd%93%e3%83%bb%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%83%9b東京栄養士薬膳研究会(代表・海老原英子氏)主催の会員向け特別講演会「中医学に見る女性の生理と病理~思春期から高齢期まで~」が17日、東京都内で開催され、講師として招かれた本草薬膳学院 院長の辰巳洋氏が婦人科系不調の「証」に対する具体的な方剤と中医薬膳などを紹介した。

中国では昔から「医之術難、医婦人猶難」「寧医十男子、莫医一婦人」と言われるように、婦人の病気は男子の10倍以上治療しにくいとされるため、「女性の一生において、健康を維持し、病気を予防・治療することはとても重要」(辰巳氏)と考えられている。

女性は、臓腑から見ると、「腎」「肝」「脾」と密接な関係がある。このうち腎は、卵巣・子宮などの器官が含まれ、これらの発育が順調なら正常な生殖能力を得られる。また、腎と関係がある髄は脳を充実させ、生理・おりもの・妊娠の調節に関わってくる。

%e8%be%b0%e5%b7%b3中医学では「女子以肝為先天」という言葉があり、肝も腎と並ぶ“先天の本”として大変重視している。肝は疏泄・蔵血の働きがあるため、気の巡りを促進して情緒・生殖機能を調節したり、血流と血量を調節。生理と妊娠にとても深く関わってくる。「現在、不妊症がとても多いが、仕事や家族のことでストレスが多いことが原因。両親から子供の出産を急かされたりして、ストレスはさらに増加している」(辰巳氏)。

“後天の本”と呼ばれる脾は、運化・統血をつかさどる。つまり、食べ物から水穀精微を作り、気血を生成する。また、生理の血量を保ち、生理を順調にさせる。おりもの、妊娠の準備、産後の母乳とも密接に関わってくる。

さらに「婦人以血為本、血旺則経調」という言葉の通り、女性は血を基本としているため、血が盛んであれば生理も順調に行われる。また、気機の巡りがよければ血流はよくなり、気血が調和することで生理が正常となる。

気血の運行通路である経絡の面から見ると、衝脈は血海を、任脈は胞胎をそれぞれつかさどり、これらの脈が旺盛であれば、生理も順調となる。

体質別に見ると、血虚・気虚・陽虚・気鬱などは生理不順に、血瘀体質は生理痛にそれぞれなりやすい。また、陽盛体質は生理の出血量が過多で、「スポーツが好きな女性に多い」(辰巳氏)という。

女性は寒邪、湿邪、熱邪に影響されやすい。寒邪は凝滞・収引性があるため気血の運行を失調させて、生理痛・生理不調・閉経などを招く。湿邪は重濁・粘着・下行性があるので、生理前後のむくみ・下痢などのリスクがある。熱邪は炎熱の性質があるため、血を消耗し血流が乱れることにより、生理不順・出血過多・不正出血などが生じる恐れがある。

このほか、七情(怒・憂・思・悲・驚・恐など)の失調、過度な性生活、飲食(過食・拒食・刺激物・生もの・冷たいもの)の影響にも言及。生理不順をはじめ、不妊症にまで至る恐れがあるとして注意を喚起した。

%e7%9c%8b%e6%9d%bf弁証論治施膳については、各婦人科系の不調ごとに紹介。生理不順(月経先期・月経後期・月経前後不定期・月経過多・月経過少)では、例えば虚寒証や血虚証の場合、方剤では温経湯や滋血湯を使用。薬膳では「まずは補益類の食材を選択」(辰巳氏)して、虚寒証は温里の食材、血虚証は養血の食材を加えると良い。具体的には、虚寒証の薬膳として「海老胡桃韮の大蒜煮」を、血虚証では「にんじん入りイカ飯」をそれぞれ紹介した。

生理痛では、気滞血瘀証の場合に方剤として膈下逐瘀湯を使用。薬膳では理気作用もある「かぶ」を使った「かぶ紅花スープ」を紹介。70歳を超える高齢になっても陰虚症状がなく、熱が目立つ実熱証(不正出血)の場合、方剤は清熱固経湯を選択し、薬膳では蓮根きゅうりサラダを挙げた。

このほか、若い女性に多い肝気鬱結証の乳房脹痛の場合、方剤は逍遥散を選び、薬膳では梅花茶を紹介。ミドルエイジの女性に多い肝腎陰虚証のタイプでは、方剤として一貫煎、薬膳として豚肉百合根の炒めものを挙げた。つわりについては、「改善するのになかなか良い方法がない」(辰巳氏)と前置きしつつも、脾胃虚弱証では方剤として香砂六君子湯、薬膳として紫蘇茶を紹介。「紫蘇は茎と葉を使うが、特に茎は止嘔効果が強い」(同氏)とした。

中医学の「臓躁」、いわゆる精神不安に対しては、方剤として甘麦大棗湯が有名だが、薬膳としては龍眼肉ポンチ(龍眼肉、干し葡萄、ライチ、大棗)を紹介。補血類の食材で構成されており、心脾両虚証に適応できる。

参考リンク
東京栄養士薬膳研究会

#

↑