化粧品各社、しわ改善成分を探索し化粧品開発
2017.04.27
編集部
化粧品各社の間で、顔のしわを改善する成分を探索し、その効能・効果を臨床試験で実証して化粧品として商品化する動きが活発化している。
ポーラオリビス傘下のポーラ化成工業株式会社(神奈川県横浜市)は、シワの原因となる酵素「好中球エラスターゼ」の働きを阻害する有効成分「ニールワン」を探索・発見し、2016年7月に国内初の「シワを改善する」医薬部外品として厚生労働者から承認を得た。さらに、このニールワンを配合した美容液(リンクルショット・メディカル・セラム)をポーラオリビス傘下の株式会社ポーラ(東京都品川区)が、2017年1月から全国の百貨店やポーラの専門店で販売を始めた。
ニールワンは、5400種類の成分をスクリーニングしてこの物質を抑制することで、しわを改善する4つのアミノ誘導体を合成した成分を開発してニールワンと名付けたもの。ニールワンは、肌に弾力を与えるコラーゲンやエラスチンなどを分解する「好中球エラスターゼ」と合体、シワができる働きを抑える。
同社は、ニールワンを有効成分として含有する美容液について、日本香粧品学会「抗シワ製品評価ガイドライン」に準じてシワ改善効果の検証を行い、効能・効果を実証している。
実証試験は、有効成分を含有しない製剤(プラセボ)を比較対照とした二重遮蔽無作為化試験を用いた。
目尻にシワを有する健常な日本女性68名を被験者に1日2回、左右の目尻に指定した製剤を12週間塗布。その結果、使用12週目における目視評価(図・レプリカ)などプラセボに対して統計学的に有意なシワ改善効果を示した。
花王株式会社(東京都中央区)は、30年以上前から皮膚の加齢変化についての研究を深化させてきた。シミの研究では、紫外線によるシミ(色素沈着)は、表皮から産生されるエンドセリン、表皮の「幹細胞増殖因子」(SCF)が大きく関与していることを解明。また、真皮中の弾力を担う「エラスチン」線維を分解してしまう皮膚エラスターゼを同定し、これが加齢・紫外線照射により増えることでシワが形成されることを発見した。また、しわの研究では、真皮中の弾力を担う「エラスチン」線維を分解してしまう皮膚エラスターゼを同定、これが加齢・紫外線照射により増えることでシワが形成されてしまうことを発見した。
これらの研究に立脚して、シミ・シワを改善する独自成分としてエンドセリンのはたらきを抑える「カモミラET(美白有効成分)」をはじめ、SCFのはたらきを抑える成分や皮膚エラスターゼのはたらきを抑える成分等を開発した。
株式会社資生堂(東京都中央区)は、肌のヒアルロン酸を引き出す特徴を持つしわ改善成分「純粋レチノール」(厚生労働省認可医薬部外品)配合の化粧クリームを商品化し、今年6月から販売する。
同社は、日本香粧品学会が策定した「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」にしたがい、目尻に浅いしわからやや深いしわが認められる健常な日本人女性(年齢37歳~54歳、平均年齢46歳)を対象にレチノール配合の化粧クリームの有効性試験を行った。「レチノール配合化粧クリーム」と「純粋レチノール無配合品」を9週間使用し、しわ改善効果を皮膚科専門医による判定および機器による解析を行って評価試験した。
レチノール配合品は、9週間使用後に目尻の線状の深いしわ、目周りのちりめん状のしわが顕著に改善(図1)。機器による解析から本製品は無配合品に比べてしわが減少し(図2)、しわ部分(緑色)の3次元画像からも顕著な減少が認められた(図3)。また、実効感についてもアンケートで検証した結果、本製品にしわの改善を実感することが認められた。
こうした3社に見られるしわ改善成分の探索と化粧品への応用開発は、同業他社も肌科学研究分野のさらなる発展・強化を図る動きにあり、今後、独自成分の創出による商品化の動きは、一段と活発化するのは必至の状況。