美容医療、Webサイト上でも術前術後の写真を原則禁止へ
2017.11.2
編集部
美容医療に対する広告規制が、来年からさらに厳しくなりそうだ。厚生労働省がこのほど開催した「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、論点となっていた術前術後の写真、いわゆるビフォー・アフター写真については、「(不当に患者などを)誘引するものとして原則禁止する」との意見が多数を占めた。これを受け、厚労省は早ければ今月中にも開催する同検討会に「省令・ガイドライン案」を示し、正式決定したい考えだ。
同検討会は、今年6月に成立した改正医療法の施行に伴う省令・ガイドラインの策定を進めていく上で、論点となっている広告禁止事項などについて議論してきた。広告禁止事項の中で焦点になっていたのは、「体験談、術前術後(ビフォー・アフター)の写真」の取扱いについてだ。
ビフォー・アフターについては、現行の医療広告ガイドラインにおいて「効果に関する事項は広告可能な事項とはされない」として広告が認められていない。一方、Webサイト上についても、医療機関ホームページ(HP)ガイドラインの中で「撮影条件や被写体の状態を変えるなどして撮影」したり、「あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正」したビフォー・アフター写真については「虚偽にわたるもの」として、すでに掲載が禁止されている。
ただ、Webサイト上においては、これに違反しても加工しているかどうかの立証が困難な上、現行制度では罰則のない行政指導にとどまり、これまで規制の効果を発揮してこなかった。しかし、改正医療法の施行により、Webサイト(メルマガなども含む)も医療法上の広告規制対象に含まれることになったため、違反した場合は、罰則が課されることになる。
厚労省としては、ビフォー・アフターは「治療効果に関するもので、患者などの医療の適切な選択にあたって特に影響が大きい」と判断。ただ、「個々の患者の状態などにより、その結果は当然異なものであるから、情報の有用性が限定的」として、誘引性があるものは原則、広告禁止事項として省令に規定してはどうかと、同検討会で議論を託した。
10月25日に開催された6回目の検討会では、事務局の厚労省側から「誘引性があるものは原則として禁止」する案1と、「虚偽・誇大なものを禁止」する案2の2案が提示された。案1は、患者の安全をより重視する観点から、ビフォー・アフターの表示に伴うデメリットを防止するという考え方。一方、案2は、ビフォー・アフター表示のメリットとデメリットを踏まえつつ、その調和を図るという考え方だ。
正しい医療情報を提供し、患者などの適切な医療の選択を妨げないという基本原則からすると、ビフォー・アフターは「患者が受ける医療の効果などについて具体的なイメージを把握できる」として、同検討会でもポジティブな側面を評価する声も挙がった。その例が歯科領域の機能回復、乳房再建術の結果。同検討会では、ビフォー・アフターを全面禁止とすると「一般の人からすると理解や想像ができなくなる」「情報提供の妨げになる」「比較情報について過剰な規制にならないよう配慮いただきたい」などの意見があった。
しかし、ビフォー・アフターは、個々の患者の状態などにより当然、その結果は異なるわけなので、情報の真の有用性は限定的で、患者の適切な医療の選択を阻害する恐れがあるとの考え方が多数を占めた。同検討会の構成員からは案1は妥当として、「省令に規定するなどの方法により規制すべき」「まるで誰もが同じ変化が得られるかのような誤解をして安易に美容等の医療に飛びつき、同じような結果が得られなかった、被害を受けたと訴える相談はいまだ後を絶たない現実を考えると、禁止事項にすることは必至」などといった意見書までが提出された。
ビフォー・アフター写真をWeb上に掲載することを原則禁止する案1に賛成する声が多数を占めたものの、厚労省は「(原則禁止は)まだ決まったことではない」としているが、早ければ11月にも開催する次回検討会で正式な了承を得たい考え。了承が得られれば、パブリックコメントを経て、来年からビフォー・アフターは禁止となる。
- 参考リンク
- 厚生労働省