便秘の原因として最も多いのはダイエット
2018.03.27
編集部
第4回Kampo Academiaプレスセミナー「便秘における漢方薬の再認識」が27日、都内で開催され、講師の横浜市立大学大学院 医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授の中島淳氏は便秘治療に使われる代表的な漢方薬を紹介する中で、「無理なダイエットは便秘を誘発する」と警告した。
慢性便秘は女性ホルモンに関係することから女性に多く、日本人の7~8人に1人が便秘というのが現状。排便の悩みは他人に相談しにくく、放置されやすく、その結果、自己流の便秘対策を行ってかえって症状を悪化させてしまうという悪循環が繰り返されている。
女性の便秘の原因はダイエットが圧倒的に多い。また、家庭や職場の都合から、「トイレに行かない女性が多い」(中島氏)のも現実。便意の我慢を繰り返していることが便秘を悪化させていると指摘した。このほか、「加齢により大腸の動きが弱くなり、便意に対して鈍感になる」(同氏)ことが高齢者らに多い便秘の特徴ともなっている。
便秘は日本では「秘め事」とされるため、「たかが便秘」として受診しない人も多い。便秘は「腸内環境が悪くなったり、生活の質を下げる」(中島氏)だけでなく、器質性便秘は大腸がんである可能性もあり、症候性便秘は橋本病の初期症状であったり、慢性便秘は認知症の先駆症状といわれることもあるという。
慢性便秘は、2017年にまとめられた「慢性便秘症診療ガイドライン」に沿って受診できる。従来の酸化マグネシウムなどを使う緩下剤、センナなどの刺激性下剤もあるが、これらは高マグネシウム血症や習慣性の下痢などを引き起こすリスクがあることから、漢方薬が見直されつつある。
漢方薬であれば、安心感が高く、作用が緩徐で、腹部膨満などの便秘周辺症状に対応可能。代表的な漢方薬として、オンデマンドの使用に適した「大黄甘草湯」、高齢者に良い「麻子仁丸」、作用がマイルドな「潤腸湯」、腹部膨満が伴う時の「桂枝加芍薬大黄湯」、作用の弱い「防風通聖散」、腹痛などを伴う時の「大建中湯」を挙げた。「これらを使い分ければ大抵の便秘は対応できる」(中島氏)。
日頃の便秘対策としては、便座に前かがみ35度に座ること。これにより、直腸肛門角が鈍化し、腹筋が収縮されやすくなり、スムーズな排便を促せる。また、トイレに行く習慣を毎日のスケジュールに組み込むことも大切。朝にトイレに行けなければ「自分のライフサイクルに合わせた“計画排便”もやむを得ない」(中島氏)として、トイレに行く習慣付けの重要性を強調した。
- 参考リンク
- 横浜市立大学附属病院 肝胆膵消化器病学