【連載】大手化粧品会社の研究(52)静岡県立大発ベンチャー、天然新素材科学研究所の会社研究 ~水溶性化粧品原料・エミーヌを開発・販売~(上)

2018.10.1

特集

編集部

天然新素材科学研究所株式会社(静岡県島田市、未公開)は、静岡県立大学が研究開発していたキチンとキトサンの有用性とキトサン誘導体の研究に関して技術移転を受け、2004年3月に事業化する目的で法人化した。
キチンは、エビ、カニなど多くの生物に含まれている天然の素材。普通の溶媒には溶けないため、ほとんど利用されていない。また、キチンをアルカリで処理するとアセチル基が除かれ、主としてD-グルコサミン単位からなるキトサンに変換される。1回のアルカリ処理により、D-グルコサミン単位の割合は70-95%程度まで上がり、酸の水溶液に溶けるようになる。一般的に酸性水溶液に溶けるものをキトサン、溶けないものをキチンと呼んでいる。

現在、同社の事業は、キチンとキトサンの有用性とその機能性に着目し、新しいタイプのキトサン誘導体を開発・製造している。
なかでも新しいタイプのキトサン誘導体としてキトサンから乳化剤(界面活性剤)の多機能性キトサン誘導体「エクセルキトサン」(乳化剤、保湿剤)を開発し、化粧品原料「エミーヌ」(原料名=データ図)としてシリーズ化(6Qシリーズ、OSFシリーズ)し、製造・販売している。
6Qシリーズは、ヘアリンス、ヘアトリートメント、パーマ剤等に配合する。また、OSFシリーズは、スキンケア全般、UVケア、入浴剤等に配合する。

「エミーヌシリーズ」は、高保水性・抗菌性を持つムコ多糖類の一種であるポリグルコサミンに、脂肪酸などを結合した両親媒性タイプの水溶性化粧品原料[特許 第4394483号]。
ポリグルコサミン自身が持つアミノ基によるイオン吸着効果、疎水基である脂肪酸によるアンカー効果の「ダブル効果」により、皮膚や毛髪にしっかりと留まり、洗っても落ちにくい「長時間滞留型うるおいベール」を実現した。また、多糖構造内に脂肪酸が直接結合しているため、皮膚や毛髪と優しくなじみ、しなやかなバリア皮膜を形成する。さらに、高分子皮膜形成による「ごわつき」や「つっぱり感」を抑えながらベタつかず、多孔性皮膜ならではの爽やかな触感を実感できる。

エミーヌの特徴として、高い保水性に加え、抗菌性、リゾチームなどの生体内酵素での生分解性にも優れる多機能性ムコ多糖「ポリグルコサミン(キトサン)」のアミノ基の一部に、各種脂肪酸(親油基)をバランスよく結合することにより、保湿・バリア性を保持する多孔性皮膜を形成する。また、オイルによる特有のベタつき感もないため、各種シリコーン成分の代替えとしても有効的に機能。また、キトサン自身の持つ抗菌性により、皮膚や頭皮の常在菌バランスを整え、ダメージを受けた角質をやさしく保護し、肌荒れ改善効果などが期待できる。さらに乳化機能をもつため、少量であれば各種油分(スクワラン、アルガンオイル、油溶性ビタミン類など)を使用せずに乳化も可能。

これまで化粧品メーカーに直接、販売してきた。今後、販売チャンネルの多様化の検討が必要な時期にきている。

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