【連載】化粧特許と知的財産権⑰ナノキャリア、化粧事業成長の足音鈍い(下)
2019.08.9
編集部
ナノキャリアは、ミセル化ナノ粒子技術を化粧品開発にも応用した。ミセル化ナノ粒子は、薬物が真皮や血管を通過せず表皮層に蓄積する性質を持ち、特に、化粧品に必要な機能であることが判明した。そこで同社は、2010年10月に、皮膚に良いとされるヒノキチオール、ビタミンC導体、ビタミンE等の原料をミセルに内包して配合した美容液「エクラフチュール」開発し、販売した。また、「エクラフチュール」を市場等で評価するため2012年7月にコーセーの子会社アルビオンに評価を依頼、共同研究を始めた。
「エクラフチュール」の開発は、主要成分を皮膚に浸透させるための開発を推進し、ナノキャリアがミセル化ナノ粒子を用いた化粧原料を供給しアルビオンが化粧品を生産。2013年10月にアルビオンが販売した。
同社は、こうした「エクラフチュール」の開発、製造、販売を踏まえて、化粧事業に本格的に取り組むため2015年1月に化粧品専門の事業部を社内に組織。また、2016年3月にアルビオンとこれまでの成果をさらなる商品開発に繋げることを目的として共同開発契約を継続することで合意、新たな契約を締結した。この新たな契約に伴い、ナノキャリアは、アルビオンから、契約一時金収入を得ている。
2016年3月にアルビオンと共同開発契約締結以降、現在までにアルビオンとの主な共同開発製品としてスカルプトータルケア製品「デプス」をインターネット販売及びカウンセリング販売を行っている。
ここへきて大手百貨店や化粧品専門店の他、全国の美容室へ取扱い店舗を拡大するとともに、インターネット販売においてはECサイト、SNSやメールマガジン等を活用したオムニチャネル化を推進している。また、2018年10月に「エクラフチュールd」を販売。同製品には、ナノキャリアが開発した肌細胞への吸着に着目した化粧品用ミセル化ナノ粒子「ナノセスタEX」を用いた原材料を供給している。
最近では、化粧品開発における皮膚浸透性の研究を基に、皮膚科領域における医薬品開発の可能性を見いだしており、今後、皮膚科領域での医薬品にも応用展開を目指す方針。
同社の2019年3月期業績の中で化粧品事業は、売上高4億9600万円、営業損失-18億となっており成長の足音は鈍い。