【連載】化粧品・美容各社の業績と企業買収⑨化粧品・美容各社の業績と企業買収 ~花王、社長直属のM&A組織設置、化学分野の企業買収優先~(下)

2019.11.1

特集

編集部

花王は、2002年から2017年までの15年間で、化粧品関連の主な企業買収が国内・海外合わせて累計4件に上る(表参照)。
同社が化粧品関連の企業買収を手掛けたのは、2002年9月に米高級ヘアケアメーカーのジョン・フリーダ社を540億円で買収したのが最初、続いて2005年7月に英高級化粧品メーカーのモルトン・ブラウン社を349億円で買収した。ジョン・フリーダ社の買収は、世界のヘアケア市場でシエアを拡大すること。また、モルトン・ブラウン社の買収は、米国、英国等のデパートで販売されている高級ブランドの育成と世界各国の一流ホテルにモルトン・ブラウン製品を室内アメニティ(環境に優しいの意味)として供給拡大を図るのが狙い。

花王は、ここへきてモルトン・ブラウンのアジア展開強化を打ち出した。日本で、ホテルのアメニティ事業に参入するとともに韓国や香港、東南アジアの旅行免税事業を数年で拡大し、2020年には中国への越境EC(電子商取引)事業も始める。25年までに同ブランドのアジア全体の売上高を2018年の約5倍に高める方針。

同社の企業買収で特筆されるのは、カネボウ化粧品の買収(2005年12月)。カネボウの株式取得、特許権の譲渡を含む買収額は、総額4000億円に上るなど化粧品業界のみならず、産業界や経済界を驚愕に陥入れた。
同社は、2017年5月に企業との資本提携やM&Aなどを進めるため、社長直轄の専任組織「M&Aチーム」を新設した。同社が保有している化学技術などとの連携を重視したM&A実施に向け検討作業や統合交渉などを進める。M&Aを成長の投資枠として年間1500億~2000億円を投資資金として設定した。
同社は1兆5000億円規模の連結売上高を2030年めどに2兆5000億円に引き上げ、営業利益率17%を超える高収益の国際的な消費財企業とする計画を打ち出している。このためには、技術開発など自社の資産を活用しただけの成長では不足と判断し、M&Aを重視する戦略だ。
しかし、成長戦略の柱の1つに位置づけるM&A(合併・買収)について同社は「化学品や業務品などの分野が中心になる」として界面活性剤などケミカル分野でのM&Aを強化する方針。

これまでは、米ジョンフリーダ、英モルトン・ブラウン、カネボウ化粧品、オリベヘアケアなどビューティー分野のブランド企業を買収してきた。だが、十分な成果を発揮していないことから、新たなどビューティー分野のブランド買収を手控え、既存ブランドの統合効果の最大化を優先させるほか規模は大きくないものの、花王の技術を強化できるM&Aを進める考え。

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