【連載】化粧品・美容各社の業績と企業買収⑭化粧品・美容各社の業績と企業買収 ~キリン、医と食をつなぐ事業に賭ける、シナジー効果出せるか~(下)

2019.11.19

特集

編集部

ファンケルと資本業務提携したキリンホールディングスは、長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(KV2027)」を策定し、食から医にわたる領域で価値を創造して世界のCSV(Creating Shared Valueの頭文字。顧客や社会と共有できる価値の創造を意味)先進企業となることを目指す。

同社は、KV2027の実現に向けて、既存事業の「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)の中間領域にあたる医と食をつなぐ事業「ヘルスサイエンス事業」を本格的に立ち上げ育成していく。
そのための組織として2019年4月に事業創造部をヘルスサイエンス事業部に組織変更。また、医と食をつなぐ事業の中核に子会社で医薬品原料、アミノ酸、健康食品の製造・販売を手掛ける「協和発酵バイオ株式会社」(東京都千代田区)を中核に据えて一体的に事業を推進する体制を整えた。また、事業拡大に向けて、グループ会社である小岩井乳業株式会社(東京都中野区)の東京工場(埼玉県狭山市)内に乳酸菌を生産する工場を新設した。

同社は、30年以上にわたり免疫学の基盤研究を続け「プラズマ乳酸菌」や「KW乳酸菌」などのユニークな価値を持つ乳酸菌を発見している。
ヘルスサイエンス事業は、その免疫研究の成果を食品や飲料といった「食」の特徴を生かしたアプローチで事業展開する。
同社では「食は、安全で長期摂取が可能であり、薬と異なり複数成分で作用する。これらの特徴によって健康寿命の延伸という社会的課題を解決する一助となりたい」との方針。

すでにヘルスサイエンス事業部では、2017年秋からグループ横断で独自素材「プラズマ乳酸菌」を使用した食品や飲料を「イミューズ」のブランドで販売。また、「KW乳酸菌」を配合したサプリメント「ノアレ」の事業をヤクルトヘルスフーズ株式会社(大分県豊後高田市)から2019年3月に譲り受けてオンラインショップ中心に販売している。プラズマ乳酸菌は、ウイルス感染への守り、KW乳酸菌はアレルギー症状の緩和等に特徴がある。

こうしたグループ内で酒類や飲料を手掛ける「食領域」と医薬事業を扱う「医領域」の中間に位置する医と食をつなぐ事業のヘルスサイエンス事業の売上高は、2018年に55億円を達成。今後、免疫に関する基盤研究の成果を飲料や医療機関向けに事業化するなどして2021年に約2.7倍の150億円、2027年に4倍超となる230億円の売り上げを目指す方針。
将来は、国内での強化に加えて健康管理の意識が高い北米や東南アジアでの事業展開を視野に入れている。

ともあれ両社は、健康などヘルスサイエンスに関する考えが一致しており、生活習慣病、脳機能、リハビリ対策に加えて酵母・発酵技術を生かした化粧品等の共同開発に取り組む。しかし、共同開発のテーマを掲げているものの具体性に欠ける。現段階で、キリンが新化粧品の開発にどれだけ本気度をだしてシナジー効果を発揮するかは、未知数だ。

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