【連載】化粧品・美容各社の業績と企業買収⑮化粧品・美容各社等の業績と企業買収 ~J&JがシーズHDをT0Bで買収、メディカルコスメ・エステ等海外強化~

2019.11.21

特集

編集部

海外企業による国内のコスメ・エステ買収ケースとして米多国籍企業のジョンソン&ジョンソン株式会社(東京都千代田区、J&J )による株式会社シーズ・ホールディングス(東京都渋谷区、シーズHD)の買収劇が注目される。特に、国内の大手コスメ企業によるシーズHDが海外の有名ブランドを買収する中にあって製薬、医療機器、ヘルスケア関連商品等を取り扱う多国籍企業が日本のコスメ・エステ企業を株式公開買い付け(TOB)で買収(2019年4月)したことに国内の関係業界は一様に驚嘆の声を上げた。
TOBは1株当たり5900円、総額約1500億円に上る。このTOBに加えて、シーズHDの筆頭株主でシーズHDの資産管理会社株式会社CIC(東京都新宿区)から約800億円で株式取得した。TOBと株式取得合わせた買収額は、約2300億円に上り大型買収として注目を集めた。

J&J は1978年8月に日本法人設立し、日本進出を果たした。現在、日本国内で日本法人とヤンセンファーマ株式会社(東京都千代田区)の2社で構成し、一般用医薬品と医療用・衛生用品、スキンケア化粧品などを製造・販売している。また、2016年7月にシーズHDは、J&Jグループのシンガポール法人で傘下のスイス企業「シラク社」から出資を受けるなど資本業務提携を結んでいる。
資本業務提携は、J&Jのシンガポール法人に対し、シーズHDの化粧品ブランド「ドクターシーラボ」などのライセンスを供与し、海外での同社ブランドの認知度や収益性を高める。また、シーズHDに対するシラク社からの出資は、第三者割り当てにより、新株予約権を1万4500株割り当てるほかシーズHDの資産管理会社CICが保有の株822万9400株(発行済み株式総数の17.44%)をシラク社に売却した。

そうした資本業務提携などを踏まえて2019年4月にJ&Jは、TOB買収に打って出たもの。J&JによるシーズHDのTOB買収は、化粧品のラインアップを充実させるなど日本での化粧品事業をテコ入れするとともに、中国などで人気が高い日本製化粧品をアジア地域などで拡販し成長を図る。同時に、J&Jが構築した世界のネット網を生かしてメディカルコスメやメディカルエステ等の事業を海外で強化するのが狙い。

J&Jに買収されたシーズHDは、2015年12月にスキンケアケア化粧品や健康食品を手掛けるドクターシーラボをシーズホ―ルディングスに商号変更。同時に、経営管理を除く事業をドクターシーラボ分割株式会社準備株式会社に会社分割。シーズHDの持ち株移行により高機能成分を配合した商品を展開する「ドクターシーラボ」とドラックストアを中心にメディカルコスメを提供する「ラボラボ」、エイジングケアに特化した「ジェノマー」の3ブランドを傘下に置いて皮膚の専門家の医学的視点に基づいて開発されたメディカルコスメ化粧品のメーカーとしてメディカルコスメ市場のシェアは約4割強を誇っていた。事業は化粧品事業を主体に健康食品事業やエステサロン「シ―ズラボ」(2016年1月に40億円で買収)や脱毛サロンのセドナエンタープライズを40億円で買収し「脱毛ラボ」も展開していた。
J&JがシーズHDを買収した前のシーズHDの2018年7月期売上高は430億円、営業利益は84億円だった。

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