化粧品ECの現状と課題②化粧品ECの現状と課題 ~資生堂、EC売上比率を2020年に8%から15%に引き上げ~
2019.11.29
編集部
フェイスブックやインスタグラムをはじめとしたデジタルプラットフォームが拡大・多様化していく中で、デジタル上でも顧客と直接つながり統合的に価値を提供できる仕組みを作っていく中で具現化したのが「ワタシプラス」だ。
この「ワタシプラス」は、資生堂ジャパン株式会社(東京都港区)が開発・運営している美のソリューションを提供するプラットフォームで2012年4月に開設した。会員数は2019年3月末時点で約400万人に上るとみられる。
「ワタシプラス」は単なるECサイトではない。同社が発信する美容情報や店舗情報、商品カタログ情報などをデジタルに集約した場であり、そのなかの1つのコンテンツとしてEC機能がある。
同社のデジタルマーケティングの戦略は「リーチできない層を無くす」ことを骨子に、テレビなどのマス広告を中心としていた。しかし、スマホなどの広告出稿やオウンドメディア、SNSを立ち上げてマス広告とデジタル広告を合わせたKPIを作り、マスとデジタルの融合を図っている点に特徴がある。
同社は、ECサイについて「売る場所」でもありながら「製品を知ってもらう場」でもあり、ECサイト単独の売上にシフトするという考え方をとっていない。店頭販売も含め、マスとデジタルを融合してブランド認知を高める施策をとっている。
ところで同社は、連結売上高に占めるEC売上高比率を現在の8%から2020年に15%に引き上げる中期経営計画を明らかにした。国別のEC比率は中国事業で40%、「ワタシプラス」を展開する日本では10%弱を見込む。
同社の2018年12月期における連結売上高は、1兆948億2500万円。このうちEC売上高は、約9%を占める。自社で手掛けるECと外部企業が運営するEC売り上げの合計は、約860億円に上る見込み。
引き続き同社は、デジタル分野を強化するため、ビジネスプロセスの進化、ITプラットフォームの統合、データ・顧客情報等の一元管理システム「CRM」(Customer Relationship Management)をグローバルで構築し、数百万人の顧客データとダイレクトにつながるプログラムを作るため2020年までに累計270億円を投資する。また、社員のデジタルリテラシー向上を目的として2020年までに、延べ5000人を対象にネット教育「デジタルアカデミー」を受講させる計画。
これらの施策によってパーソナライゼーションを実現する事業モデルを構築、し、新しい事業実現に繋げていく方針。