【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目⑧ナノ粒子、ホソカワ粉体研、ナノ粒子開発し化粧品へ応用(下)
2020.03.4
編集部
ホソカワミクロン株式会社(大阪府牧方市)の研究開発子会社「株式会社ホソカワ粉体技術研究所」(大阪府牧方市)は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)製剤技術を応用して皮膚浸透性に優れ、高い美肌成分であるビタミン誘導体等を封入した「PLGAナノ・コンポジット粒子」技術を開発した。
PLGAは、乳酸とグリコール酸がランダムに共重合したポリマー。疎水性と非晶質のポリ乳酸と親水性で決勝性が高く有機溶媒に不溶なポリグリコール酸の性質を相補した特性を持ち医薬品等の。原料として使われてきた。
体内に取り込まれたPLGAは、水共存下でエステル接合部位が加水分解するため、もともと体内に存在する乳酸とグリコール酸に戻り、さらにTCA回路(好気的代謝に関する最も重要な生化学反応回路)で水と二酸化炭素に分解されて体外へ排出されることから安心安全な材料といえる。
同社が作成するPLGAナノ粒子は、平均粒子径が160ナノメートルの球形微粒子。有用成分を内包し加水分解を制御することで内包成分の粒子を外部に徐放する。リボソームやエマルジョン等のDDS基材と異なり個体粒子であるため固形製剤化が可能。
一方、PLGAナノ粒子の実用化にあたって同社は、熱や水分の影響を受けやすくナノ粒子特有の好付着性、高凝集性、艇ハンドリング性などの短所補える新しい製剤粒子設計が必要になったことから、水溶性の糖アルコールや乳頭などの中にPLGA ナノ粒子を分散・担持させた機械的複合化技術を開発して課題を解決。経口投与型の核酸医薬DDSと位置付けて医薬品DDSの実用化に繋げた。
ナノ・コンポジット粒子の技術を化粧品分野に応用し皮膚浸透性に優れ、高い美肌成分であるビタミン誘導体等を封入したPLGA(生体分解・適合性の乳酸・グリコール酸共重合体)ナノ粒子 を主成分とする、「化粧品用PLGAナノ・コンポジット粒子」の製法を確立し、特許出願した。また、 PLGAナノ・コンポジット粒子の皮膚浸透性とビタミンC浸透率は、共同研究先の広島県立大学において、ヒト摘出皮膚片を用いた器官培養試験で定量評価しエビデンスが明らかにされている。
また、独自の瞬間気相生成法により開発に成功した紫外線吸収ナノ材料群(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の単組成ナノ粒子、及びそれらを複合化した多組成ナノ粒子等)などを化粧品用高機能材料として応用するなどしてナノ・コンポジット粒子を使った高美肌機能性の化粧品を商品化し市場投入している。
現在、ホソカワ粉体技術研究所や子会社「ホソカワミクロン化粧品株式会社」(大阪府牧方市)が中心になって、PLGAナノ・コンポジット粒子をキーマテリアルとした化粧品のバリエーションを拡大するなどして化粧品、毛髪品等の開発・拡販に拍車をかけている。