【連載】化粧品が起こすイノベーション・この技術に注目㉕制汗剤開発(上)~発汗成分多様化・バラエティ化~

2020.06.15

特集

編集部

汗の発汗を抑制し、わきの下に塗布すると毛細血管が収縮して汗の分泌が抑制される制汗剤の開発・製品化が活発化している。
発汗量を減少させる薬剤「制汗剤」は、20世紀初頭に米国で塩化アルミニウムが用いられたことに始まる。しかし、塩化アルミニウムは、使用感が悪く皮膚刺激があることや衣服を劣化させるため改良が検討され、1947年に、部分中和したワキ汗制汗成分「塩化アルミニウム水和物」(クロルヒドロキシアルミニウム=ACH)が開発された。
ACHは塩化アルミニウムに比べて中和する必要がなく皮膚刺激性も弱いという優れた性質をもつため、現在に至るまで制汗剤に配合される発汗成分の主流となっている。

ACHは、水溶液を皮膚に塗布するといったん乾燥してACHが析出するが、発汗して水分を吸収するとゲル化して汗腺を閉塞するため、発汗量を抑制する指摘もある。
制汗効果の測定方法は
①発汗の水滴を着色できるデンプン-ヨウ素反応などの視覚的方法
②発汗に伴う皮膚状態の変化である水分損失や皮膚水分を機器的に測定する方法
③わきの下での発汗重量を測定する方法の三つに分類される。

米国においては、制汗剤は大衆薬(OTC)に分類されるため、米国食品医薬局(FDA)のガイドラインに従って制汗効果を評価する必要があり、厳密な条件下で測定し、対象者の50%以上が制汗効果20%以上を示さなければ表示できないことになっている。また、米国では、制汗剤を配合した製品の制汗率はおおむね30〜50%であると報告されている。
ACHの開発以降、改良が重ねられ、より刺激を低減させた乳酸やプロピレングリコールとの複合体などが開発されている。

日本では、ACHのほかにパラフェノールスルホン酸亜鉛が制汗成分として認められている。これは、ゲル化による閉塞作用がなく収れん効果のみで、使用感は良好だが、制汗効果は弱い。
製品としては、スプレー、スティック、ローション、ロールオンなどがある。内容物は、制汗成分、清涼感を与える成分、体臭をおさえる成分などを溶解または分散させたもの。
スティック状の制汗剤「制汗スティック」の処方は、アルコールに発汗をおさえる成分を溶解させ、これにステアリン酸ソーダなどの石けんで固めたもの。さっぱりとした使用性があり.アルコールが揮発するため、揮発しないように容器の工夫がなされている。
制汗、防臭を目的としたスプレータイプの製品「制汗防臭スプレー」は、塗布後、短時間で乾燥するように液化石油ガスで内容成分を噴出できるように設計されている.短時間に簡単に塗布でき、比較的乾燥が速いという長所がある半面、適用部位以外にも内容物が付着しやすいという欠点がある。内容成分は粉体、油溶性成分などの有効性成分を配合することができる。
制汗、防臭を目的としたローションタイプの「制汗ローション」や容器の頭部に回転するボールがついた「ロールオン制汗剤」などが製品化され、市場をにぎわしている。

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