【連載】台頭する創薬・再生医療ベンチャー【3】 リプロセル、アルツハイマー病モデル神経細胞実用化

2013.10.10

特集

編集部

iPS細胞(多能性幹細胞)作製技術を使い、iPS細胞事業と臨床検査事業の2事業を行う再生医療ベンチャー。2003年2月に法人を設立して以降、約10年でジャスダック市場に上場(2013年6月)した。

iPS細胞事業は、ヒトiPS、ES細胞(胚性幹細胞)の研究に必要な培養液・剥離液・凍結保存液・コーティング剤・抗体など各種研究試薬とヒトiPS細胞から心筋、神経、肝臓、アルツハイマー病神経細胞などの細胞製品を作製し、試薬、細胞製品ともに製薬企業向け主体に販売している。

細胞製品は、製薬企業において新薬候補化合物の薬効試験や毒性試験の実験材料として使用されている。また、細胞製品を利用して薬効試験や毒性試験を医療機関などから受託する臨床検査事業も行っている。

アルツハイマー病モデル神経細胞各種研究試薬の中で代表的な製品は、「リプロXF」。従来比3倍以上の高密度で大量にヒトiPS、ES細胞を培養できる。また、細胞製品では、アルツハイマー病モデル神経細胞(写真)がある。幹細胞技術と遺伝子改変技術を応用し、培地を用いて約2週間培養することで、分化した神経細胞が得られる。アルツハイマー病のご研究用神経細胞は、世界で初めて。同社の熟練した研究者が、ヒトiPS細胞を用いた実験操作を実演しながら説明し、疑問に答える無料培養講習会は、満員の盛況。

こうした各種研究試薬、細胞製品を国内に加えて海外でも米販売子会社を通じて販売。また、欧州でも代理店を通じて拡販するなど攻勢をかけている。

今期業績(2014年3月期)は、売上高4億7千万円、営業利益▼8800万円、利益▼6000万円を計画。

2015年3月期は、売り上げ、利益ともに大きく伸びる見通し。この要因として日米欧企業のコンソーシアムでiPS細胞から作製した細胞製品を薬に使えるか、評価する動きがあり、これを踏まえて製薬会社が常時、ルーチンで使い始めるようになると見られること。特に、動物実験に代わるものとして細胞製品が使用され今後、代替需要が急速に高まる公算が強い。また、製薬会社のニーズに応じて特定の疾患を持ったカスタマイズされた細胞製品を今後、市場に投入し、国内外で攻勢をかけることなどによる。日本発のiPS細胞事業に賭ける同社の成長・発展の行方が注目される。

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