【連載】台頭する創薬・再生医療ベンチャー【8】 ヘリオス、iPS細胞応用の加齢黄斑変性症治療の実用化目指す

2013.12.19

特集

編集部

株式会社ヘリオス(東京都中央区、社長鍵本忠尚氏)は、理科学研究所が保有するiPS細胞の特許使用許諾権を得て2011年2月に法人化した創薬ベンチャー。2013年9月に旧社名日本網膜研究所から現社名に変更した。

現在、同社が総意を挙げて取り組んでいるのがiPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の網膜色素上皮細胞移植による加齢黄斑変性症の新たな治療法開発。加齢黄斑変性症は、光を受容する網膜の部位「黄斑部」が加齢に伴って異常な血管「脈絡膜新生血管」が生じ色素上皮や感覚網膜を傷つけ視力機能を低下させる病気だ。

同社が取り組む加齢黄斑変性症の治療法開発は、iPS細胞から網膜の外側にある1層の細胞「RPE細胞」を作製し、iPS細胞から分化誘導した網膜細胞を「黄斑部」に移植することで、網膜の機能を回復させるもの。視細胞、網膜再生薬、検査法などを2015年から2016年目途に実用化し、加齢黄斑変性症の新たな治療法として世界で第1号の承認申請を目指す。

加齢黄斑変性症の治療法開発に続いて他領域の再生医療にiPS細胞の可能性を見出す研究開発に取り組む。12月に樹状細胞ワクチンを開発するテラ(ジャスダック上場)と共同開発することで、提携したのもその一環。同社が有するiPS細胞を臨床応用するための技術・ノウハウとテラが有するがんワクチン免疫細胞療法に関する技術・ノウハウを融合することで、iPS細胞を用いたがん免疫細胞療法の応用開発や新たな創薬開発に繋げる。

開発に伴う資金調達も活発だ。同社は、加齢黄斑変性症治療法の新薬開発から製造・販売まで一貫体制を確立するため、今年3月に総額30億円にのぼる第3者割当増資(表)を行い、大日本住友製薬、二コンなど5社とヘリオス投資事業有限責任組合(ド―ガンインベストメンツが無限責任組合員)が2億9700万円の増資を引き受けた。増資の背景には、東証マザーズ市場などのベンチャー向け新興市場に上場して株式を公開し、資金を調達して実用化に必要な技術開発やプラント建設などの設備投資に振り向けよう、との狙いがある。ただし、株式公開時期について同社は、「公開の準備に入っているが公開時期について現段階では未定」としている。

現在、加齢黄斑変性症の世界市場は、約2兆円規模にのぼると推計されるが、同社のiPS細胞を応用した加齢黄斑変性症治療法の実用化と株式公開の動向について内外からの関心は極めて高い。

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