「化粧品原料メーカー、商社の事業展開に迫る」【17】 三菱商事、化粧原料事業をビタミンC60バイオリサーチで推進(上)

2014.05.28

特集

編集部

世界で化粧品の原料に活用される次世代材料フラーレン(炭素原子)の事業化にいち早く先鞭を付けたのは、三菱商事である。同社は、フラーレン・カーボンナノチューブの特異な性質に着目し、フラーレンの量産により安価で高品質の素材を市場に安定供給し、合わせて有望な用途開発を積極的に手がけることで、自ら市場創出を図ってきた。

三菱商事がフラーレン事業参入の契機になったのは、1998年にフラーレンの日本における物質特許が成立したのを踏まえ、1999年にカーボンナノチューブ関連の燃焼法で高い技術力を持つMER社および大学の技術移転・管理会社RCT社などと共同で米国に「フラーレン・インターナショナル・コーポレーション」(FIC、ニューヨーク)を設立したことに始まる。

FICは、フラーレン物質特許を含むナノカーボン関連の知的財産の保有、管理、ライセンスを主目的に設立したもので、21世紀の根幹技術と目されるナノテクノロジー戦略の中心に据えた。

2001年12月には、三菱化学と共同出資して「フロンティアカーボン」(現在は三菱商事と昭和電工が株主)を設立。フラーレンの量産化による市場への安定供給体制の確立を図った。また、フラーレンの生産体制の確立に続いてフラーレンの有望な市場の1つとしてライフサイエンス分野にターゲットを当て、2003年7月に100%出資の子会社「ビタミンC60バイオリサーチ株式会社」(東京都中央区)を設立。現在、ビタミンC60バイオリサーチがフラーレンの生体機能の一つ抗酸化作用に着目して化粧機能性を持たせた化粧成分の開発、販売に力を入れて取り組んでいる。

フラーレンは、全く水に溶解しないため、そのまま化粧品に配合することはできない。そこでビタミンC60バイオリサーチは、フラーレンを水溶性高分子で包み込み安定的に水に分散する水溶性フラーレンの製造技術を開発し、化粧品への配合を実現した。

同社が開発した水溶性フラーレンの製造技術は、水溶性高分子ポリビニルピロリドン(PVP)を用いて通常、水に溶けないフラーレンを安定的に水に分散させる方法。また、同製法を用いて作製されるPVP・フラーレン複合体は、優れた抗酸化力を有する特徴を持つ。

同社は、2009年9月に「PVP・フラーレン複合体とその水溶液の製造方法」について特許を取得した。これまでフラーレンに係る成立特許件数は、国内9件、海外10件に達する。また、現在、申請中の特許は、国内4件、海外3件にのぼる。

分子代表的なフラーレンで、60個以上の炭素原子が強く結合して球状につながった分子構造を成すフラーレンC60(写真)は、サッカーボール型球状(直径0・7ナノ㍍)の中空構造をしている。

結晶構造は、フラーレン分子が立方体を単位格子としてできる空間格子の面心立法や形が6角柱を基本とした六方晶などの分子性結晶構造を成し、これが1次凝集体となる。この分子結晶がさらに2次凝集してフラーレン粉体を形成する。

フラーレンは、米科学者によって極めて特異な電気的特性や機械的特性、光学的特性などを示すことが実証され以来、現在では化粧品やスポーツ用品、太陽電池など広範囲な分野での用途開発、商品開発が進んでいる。

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